宇多田ヒカル【PINK BLOOD EXHIBITION】レポート&谷川英司監督インタビュー 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

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宇多田ヒカル【PINK BLOOD EXHIBITION】レポート&谷川英司監督インタビュー

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宇多田ヒカル【PINK BLOOD EXHIBITION】レポート&谷川英司監督インタビュー

宇多田ヒカル【PINK BLOOD EXHIBITION】レポート&谷川英司監督インタビュー


 宇多田ヒカルの新曲「PINK BLOOD」のミュージックビデオの世界観を体験できる展示会【PINK BLOOD EXHIBITION】が6月5日から18日まで開催されている。開催場所は今年9月を以て閉園を予定している「Ginza Sony Park」の地下2階のイベントスペース。展示されるのはMVに使用されている3点の衣装と、フォトグラファーTAKAY氏による最新のアーティスト写真の大判プリント、ミラーを使ったシーンを再現したフォトブース、そしてMVを大画面で鑑賞できる専用スペースだ。当記事ではこの展示会の様子のレポートと、監督へのメールインタビューを掲載する。

 まず最初に目に飛び込んでくるのが、宇多田ヒカルが上を見上げているモノクロの印象的なアートワークで使用しているブラックの衣装だ。この漆黒の衣装は、MVで人々が絡み合うシーンでも使用されており、着る者を締め付け、怪しく巻き付くような、重苦しいイメージをもたらしている。そんな独特の雰囲気漂うこの衣装。素材は特殊なゴムが用いられていて、劣化が早いため展示している今現在も表面が徐々に変化しているのだとか。まさに今この瞬間にしか見られない貴重な作品である。

 続いてそのすぐ近くに設置されているのが、キャンドルオブジェの舞台セット。そしてその中心に白の衣装がひっそりと佇んでいる。キャンドルが置かれている円形の構造物は、重さがなんと150kgもあるという。重厚なオブジェの圧倒的な存在感に対して、可憐な白の衣装は柔らかく気品にあふれ、神々しい。西洋の神話に登場する女神が着ていそうな神秘的な雰囲気を漂わせている。MVでもこの衣装は、映像に気高さや崇高さを与えている。

 そしてその少し奥に飾られているのが、MV冒頭の草花に埋もれたシーンで着ている衣装だ。生い茂った草木の中で、植物を身に纏うようにして立つこの衣装。どことなく森の妖精のようなイメージを想起する。生の花は枯れてしまうため展示されていなかったが、MV同様のファンタジックな世界観を存分に味わえた。

 今回の新曲「PINK BLOOD」は、自分自身と深く向き合うことがテーマになっていると言えるだろう。そしてそれを最もよく象徴しているのが、宇多田ヒカル本人が合わせ鏡の間に立ち、鏡の反射によって何人にも見えるシーンだ。

 会場にはそのシーンを再現できるフォトブースが用意されている。スタッフの案内に従い荷物を置いて鏡の間に立つと、写真を撮影してくれて宇多田ヒカルになりきれるのだ。出来上がった写真データはその場でスマホに転送してくれて、すぐにチェックが可能。筆者も試してみたが、予想以上に綺麗に撮れていて、まるでMVの世界に自分が入り込んだかのようだ。

 会場には他にも、『初恋』のジャケット写真も手掛けていたフォトグラファーTAKAY氏による最新のアーティスト写真も展示。今回のために元の写真を大きく引き伸ばし、クオリティを保ったまま大きなサイズで額装まで仕上げている。黒を基調とした会場全体に、こうした迫力ある写真や、美しい衣装が飾られているため、「PINK BLOOD」の世界に深く浸り込みたいという方は、ぜひこの機会に足を運んでもらいたい。

 最後に、このMVで表現したものについて、監督した谷川英司氏にメールで簡易的なインタビューを試みた。

――曲を聴いて最初に「現代に生まれる讃美歌」と感じたそうですが、今回のMVを制作するにあたって設定したコンセプトやテーマを教えてください。

谷川英司「成長記:とりわけ少女や女性(≒宇多田さん)が、アイデンティティと向き合い、時に自問し、時に葛藤し、時に割礼や通過儀礼のような痛みも伴いながら、新たなステージに向かおうとしている様、つまり成長の一歩を踏み出す今を切り取ろうとしています。 ただ正直に言うと、最初に聞かせて頂いた時に、映像とともにアイデアが溢れ出してしまい、菩提樹のように中心に佇む1人の女性(≒宇多田さん)が吐露する個人的な想いや自己肯定や慈愛のようなモノが波動に乗って、万物に共鳴・共感を生み、浄化されていくようなイメージが湧き上がっていました。」

――草花や肌のきめ細かな質感、馬の体の光沢感が印象的でした。それぞれのシーンでどのような点を意識して撮影されましたか。また、その際に用いた特殊な技術などがあれば教えてください。

谷川「カラヴァッジョ(Michelangelo Merisi da Caravaggio)の宗教画に見られる明暗法を意識し、暗部や余白の部分にこそ物語が浮かび上がるよう、セオリー通りではないライティングと、太く強く凛とし、時代を超越したような絵作りを心がけ、心の機微や本質を浮かび上がらせる事を目指しました。」

――月明かりのような真っ白なライトの下に立つ宇多田さんの表情や、所作が素晴らしかったです。監督から何か指示はあったのでしょうか。

谷川「『月』によって『時』を支配され、強制的に自己と向き合わされ、成長のプロセスを歩んでいく少女・女性、という考え方を共有させて頂いていたので、それを読み解いて表現して頂いたのだと思いますが、撮影中、具体的な細かな指示はしておらず、ただただ美しさに心酔していました。」

――全体的に曲やMVから自分を奮い立たせるパワーのようなものを感じました。このMVで監督ご自身は、観る人にどんなことを伝えたいですか。

谷川「新たなステージへ向かおうと成長を続ける人の、心の琴線に触れる事がこのMVからもできれば、と祈っています。」

Interview&Text:荻原梓 / Photo:Yuma Totsuka

◎イベント情報
【宇多田ヒカル「PINK BLOOD」EXHIBITION】
2021年6月5日(土)~6月18日(金)
11:00~19:00
Ginza Sony Park
チケット:無料 ※事前予約制
https://youtu.be/U_Ry2dM0B34


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