和楽器バンド“いつの日か、一緒に声を出して歌いたい“、新アルバム完全再現でツアー完遂
和楽器バンド“いつの日か、一緒に声を出して歌いたい“、新アルバム完全再現でツアー完遂

 詩吟、和楽器とロックバンドを融合させた新感覚ロックエンタテインメントバンド・和楽器バンド、約2年半ぶりとなるオリジナルアルバム『TOKYO SINGING』を引っ提げ、自身初となる東名阪アリーナツアー【和楽器バンド Japan Tour 2020 ~TOKYO SINGING~】のツアーファイナルが11月28日、愛知県・日本ガイシホールにて行われた。入場口では検温や消毒など、感染予防に対する万全な対策を行い、また公演中もマスク着用やタオル回し・歓声の禁止など、新しいライブの楽しみ方を呼びかける中での開催となった。

 同ツアーはタイトルにもある通り、セットリストは最新アルバム『TOKYO SINGING』の曲順通り、ライブの世界観もアルバムコンセプトを見事に表現するステージングで魅せる、アルバム完全再現ライブだ。Overture~TOKYO SINGING~が流れ出すと共に東京の街並みがスクリーンに映し出される。アルバムのビジュアルに描かれた東京の街並みがスクリーンに現れると、静まり返った会場を一気にアルバムの世界へと引き込んでいく。アルバム『TOKYO SINGING』のロゴが現れると共に1曲目「Calling」のイントロが始まり紗幕が落ちると、和楽器バンドのメンバー8人が姿を現し “君に届けたい想いが 届けたい言葉が 届けたい歌がここにあるんだ” とストレートな言葉が力強い音とともに心にまっすぐ届いてくる。

 本来であれば大きな歓声が響き渡る場面だが、その気持ちをグッと押さえ、会場に集まった4,000人のそれぞれの想いを拍手とペンライトに乗せ、声に出さない思いだけで繋がる無歓声のツアーファイナルが幕を開けた。

 ボーカル鈴華ゆう子が、「和楽器バンド JAPAN TOUR 2020 TOKYO SINGING 名古屋ファイナル!みんな、ペンライトと手拍子で思いっきり盛り上げていくぞ。 みんな、声は出さなくても伝わってるから!ついて来い!!」 と力強叫ぶと、ハードなロックナンバー「Ignite」がスタート。ステージから吹き上げる炎とレーザーで魅せる激しいステージングと、和と洋を見事に融合させてぶつけ合う7つの楽器と歌声が会場のボルテージを一気にあげていく。

 続く「reload dead」を終わると、会場からは鳴りやまない拍手の中、鈴華が「名古屋の皆さんこんばんは。和楽器バンドです。今日は皆さん、いろいろな思いの中ここにお集まりいただき有難うございます。もうツアーファイナルということで、今回は3か所4公演しかないツアーとなりましたが、皆さんに支えていただけて、こうしてファイナルを迎えることができました。今日までにコロナウィルスが増えていて、皆さんの中にもいろんな迷いや選択があったと思います。来ないと選択した方、そして、行ってルールを守って一緒に作ると選択してくださった方、それぞれの選択はすべて正解だと私は思っています。今日の注意点は変わらずですが、マスクはずっとしたままで、そして大声は控えて、お手元ではペンライトとクラップで盛り上げていただければと思います。皆さんのひとりひとりの心がけで成り立って行くと思いますので、よろしくお願いします。」と、この状況下で会場に足を運んでくれた方々への感謝と同時に改めて新しいライブの楽しみ方を伝えた。

 アルバム『TOKYO SINGING』の“完全再現ライブ”と宣言した通り、アルバム収録曲を曲順のまま怒涛のパフォーマンスが続く。「生きとしいける花」が終わると、黒流の和太鼓からNHKみんなのうたでもオンエア中の「月下美人」の世界へと誘っていく。満月と月下美人の花がスクリーンに映しだされると、尺八と箏の美しい旋律に合わせ和傘を広げ優美に舞い歌う鈴華の伸びやかな歌声が会場に響き渡る。後半に向け、洋楽器の厚みが加わり和楽器バンドにしか表現できない音の世界が広がっていく。

 和楽器バンドのCDは、もともとステージに配置された楽器の場所からそれぞれの音が聞こえるように作られており、まさに耳から聞こえていた音が、頭の中で想像していたその情景が、そのまま目の前に表現されていくステージはただただ圧巻。グラミー賞受賞アーティストAmy Leeとのコラボ楽曲「Sakura Rising」を終えると、町屋のギターと神永大輔の尺八によるイントロから、激しく転調を繰り返しながら8人それぞれのパートで超絶技巧を魅せていく中毒性のあるロックナンバー「ゲルニカ」へと怒涛のパフォーマンスを繰り広げていく。

 MCでは「ツアーで曲順通りにやることはもうないと思うから、1曲ずつ噛み締めて歌おうと思って。アルバム曲はそれこそずっとやっていない曲もあって…」という流れから、鈴華が「蛍火」をアカペラで歌いだすと他のメンバーが合わせて披露する一場面も。そして、セッションコーナーへ。神永大輔(尺八)、黒流(和太鼓)、いぶくろ聖志(箏)の3人で聴かせる「生きかけた夢のあとがき」、山葵のドラムに合わせて鈴華が剣舞を舞う「塵旋風」、さらに、町屋(ギター)が能面を付けギターを掻き鳴らす「焔」では、町屋に加え、亜沙(ベース)、山葵(ドラム)の3人の洋楽器に蜷川べにが津軽三味線をロックに弾き弾く、ライブならではのパフォーマンスが続く。

 鈴華が再びステージに現れると「声を出さなくても、もっともっと騒げるよね。腕を一緒に振りまくって、嫌なこと全部ここにおいてけ!8人揃ってまずはこの曲」と「Tokyo Sensation」「オリガミイズム」と明るい曲を立て続けに披露、一緒に手を振り会場中が一つになっていった。和楽器バンドのライブでは恒例となっているドラム和太鼓バトルでは、声を出して盛り上がれない代わりに特製のハリセンが全員に配布され、また続く「日輪」では撮影OKでのパフォーマンスを実施。声が出せない制限された状況下でもライブを楽しめるようにと至る所に工夫と配慮を凝らした演出も。

 「Eclipse」の演奏が終わると、鈴華が「アルバムの曲順通りでお届けしてきたので、もうラストが近づいていることも皆さん気付いているかと思います。“TOKYO SINGING“ 今年、和楽器バンドの活動がどうなるのかという中で出来上がった1枚のアルバム、今しか本当に作ることができなかったアルバムだと思います。皆さんの記憶の中に、ずっと残るようなそんな作品、そして、そんな今日という日でありますように…。今年できるかわからなかったツアーの最終日が、ここ名古屋で行われることになったのもまた運命、そのように思っています。」とこの日に掛けた思いを語り、続けて「“いつの日か、一緒に声を出して歌いたい” そんな思いで出来上がった曲で、アルバムを締めくくりました。今日は皆さん、声を出すことはできないけれども、どうかその拳の中に思いを詰め込んで、一緒に拳を天に突き上げて。今日は私たち、8人が代わりに歌いますから。思い切り響かせて、お届けしたいと思います。ラスト、聞いてください。この曲!“Singin’ for...”!!」と本編ラストの1曲「Singin’ for...」へ。天へと突き上げられた4,000人の拳とメンバー8人の声と共に、和楽器バンドのメンバー、ファン、スタッフ…この日、日本ガイシホールに集まったすべての人の想いがひとつとなった瞬間だった。

 映像と音を駆使し、1曲目の「Calling」から最後の「Singin’ for...」まで、まるで一本の映画を見ているかのようにアルバムの世界を存分に味わえる空間が広がっていた。自粛期間中に書き上げ完成したアルバム「TOKYO SINGING」に込められたメッセージは、キャパシティの50%以下でソーシャルディスタンスが守られた歓声のない会場で表現されることで、更にそのメッセージがストレートに胸に突き刺さる今回のライブ。 アンコール含め全20曲、彼らにとって初めてのアルバム完全再現ライブは幕を下ろした。

 どんなに困難な状況でも彼らの音楽を楽しみにしてくれている人がいる限り発信をし続けていく、アルバムにも込められたメッセージと共に未来への約束を繋げていくことが、エンタテインメントを止めない和楽器バンドの姿勢。コロナ禍でもエンターテイメントを追求する和楽器バンドの姿勢を来年も貫く意気込みとして、2021年1月3日(日)、4日(月)に日本武道館での「和楽器バンド大新年会2021」の開催も予定している。ライブこそが真骨頂といえる和楽器バンド、彼らが今年の夏に第一歩を踏み出した横浜アリーナでのライブ【真夏の大新年会 2020 横浜アリーナ~天球の架け橋~】が収録されたLIVE DVD&Blu-rayが12月9日(水)に発売される。ぜひ、一度彼らのライブを観てほしい。

◎【和楽器バンド JAPAN TOUR 2020 TOKYO SINGING】セットリスト
M00. Overture ~TOKYO SINGING~
M01. Calling
M02. Ignite
M03. reload dead
M04. 生きとしいける花
M05. 月下美人
M06. Sakura Rising from Amy Lee of EVANESCENCE
M07. ゲルニカ
M08. 刹那
M09. 生きかけた夢のあとがき
M10. 塵旋風
M11. 焔
M12. Tokyo Sensation
M13. オリガミイズム
M14. 宛名のない手紙
M15. ドラム和太鼓バトル~響映轟弾・改~
M16. 日輪
M17. Eclipse
M18. Singin’ for…
<Encore>
EN01. ロキ
EN02. 千本桜

photos by Ryo Negawa & Risa Okami