タイアップだけではヒットしない?! Eve「廻廻奇譚」の重要な要素とは
タイアップだけではヒットしない?! Eve「廻廻奇譚」の重要な要素とは

 2020年11月30日付のHot 100では、14位にランクインしたEveの「廻廻奇譚」に注目してみたい(【表1】)。この曲は10月3日に先行配信が行われ、10/12付の初登場では64位だったが、翌週10/19付では28位と急上昇。その後は多少の上下を推移しながら、8週目にしてようやくベスト20にまで上ってきた。

 今作で特筆したいのは、10月からスタートしたTVアニメ『呪術廻戦』の主題歌に抜擢されていることだ。原作が「少年ジャンプ」で連載されていた人気漫画ということもあり、放映前から大きな話題となっていたが、アニメの映像をふんだんに使ったオープニングがYouTubeで公開されたことでツイッター上でもバズっている。こういったアニメの話題性と連動するかのように、「廻廻奇譚」のツイッターのポイントも激しい動きが見られるのも特徴だ。また、そういったネット上の話題性に呼応するかのように、ストリーミング再生数とMVの動画再生数もじわじわと上昇し、今週のランキングに結び付いたといえる。

 ただ、アニメタイアップなどの単なる話題性だけだと、上昇するのも早いが、落ち込むのもあっという間だ。しかしこの曲に関しては、おそらくそのようなことはないだろう。というのも、ダウンロードだけを見てみると、10/12付で初登場11位でスタートし、8週に渡って10位前後と安定した位置をキープし続けているからだ。これはしっかりと固定ファンが付いている証拠でもある。もともとEveはニコニコ動画をホームに歌い手として活動を始め、ボカロPとしても活躍していた。そのため、配信との親和性は非常に高い。ツイッターのトレンドに振り回されているとそれだけで一喜一憂させられるだろうが、安定したリスナーを抱えているのであれば急降下することはない。また、今後のアニメの浸透具合によっては、さらに上位に食い込み、ロングヒットとなる可能性もあるだろう。

 ロングヒットを作るにはタイアップは要素として大きいが、アーティストがしっかりとヒットするための基盤を持っていることも重要だ。そのことを、「廻廻奇譚」のチャートアクションから読み取ることができる。Text:栗本斉

◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。