『BE』BTS(Album Review) 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

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『BE』BTS(Album Review)

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 世界中に多くのファンを獲得し、日本でも高い人気を誇るBTS。2020年は、米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”で「Dynamite」が自身初、そして韓国人アーティストとして初の1位を獲得し、その人気・知名度をさらに高めた。今や「世界で最も知られているK-POPグループ」といっても過言ではないだろう。

 本作『BE』 は、その大ヒット曲「Dynamite」含む5作目のスタジオ・アルバム。米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”で初登場1位を記録した前作『MAP OF THE SOUL : 7』から約9か月と短いスパンで完成させたワケだが、その間には新型コロナウイルスが全世界で猛威を振るい、ライブをはじめとした表舞台での活動が滞ってしまった。本作には、コロナ禍を経て制作した過程や想い、希望、ファンへ向けたメッセージ等が詰め込まれている。

 その核となるのが、アルバムのオープニングを飾る「Life Goes On」。冒頭から「ある日、世界は何の予告もなしに止まった」とはじまり、「何も起こらなかったように元の日々が戻ってくる」と、感染症によるパンデミック~来たる日への兆しについて歌われている。トラックは軽快なアップ・チューン「Dynamite」とは対照の、オルタナティブ・ヒップホップにも通ずるアコースティック・メロウで、ファルセットやスロー・ラップなど曲調で使い分けたボーカル・ワークも繊細且つ手が込んでいる。

 ジョングクが監督を務めたミュージック・ビデオにも、ロックダウン中の様子ともとれるメンバーの日常や、観客の居ないステージで歌うモノクロのシーンなど、こういった時世を受けての想いが画かれている。同ビデオは、公開から1週間を待たずして1億3,000万再生を突破し、1億ビューを超えたMVを通算27タイトルに更新した。ビデオの再生回数やSpotifyのストリーミング数、iTunesのダウンロード数も軒並み好調で、「Dynamite」に続く2曲目の首位獲得も期待できそうだ。

 続く「Fly To My Room」も、タイトルが示す通り外出自粛期間での経験を基に作られた「部屋の中での楽しみ方」を歌った曲。一見ネガティブなようで、新しい視点で表現した“部屋の中の旅”が前向きに綴られている。歌詞の世界観にフィットしたチルアウト・ミュージックも完成度高く、気怠いダウンビートに思わず身を委ねたくなる。3曲目の「Blue & Grey」は、前2曲をさらにスロウ・ダウンさせたドリーミー&メロウで、サビで聴かせるファルセットにはマックスウェルを彷彿させる黒さも感じられた。タイトルのブルー&グレーは「不安定な感情」を意味しているそうで、たしかにサウンド&ボーカルいずれにもそういった雰囲気がある。この曲も、陰の要素を含みつつトータルでみれば前向きな内容が綴られている。

 4曲目の「Skit」には、ジョングクのバースデーで前述の「Dynamite」が1位を獲得した9月1日の様子が収録されている。笑い声が絶えず、メンバーの仲睦まじい様子が目に浮かぶようで、こういう演出もBTSならではというか、ファンを第一にして制作した過程が伺える。この「Skit」を間に挟み、前半のアンニュイな雰囲気から一転、後半はアップ・チューンが続く。

 BTSは流行にも敏感で、「Telepathy」では今年のトレンドともいえるニュー・ディスコに挑戦した。「Dynamite」とはまた違う、80年代の東海岸モノにも通じるタイトなディスコ・ファンクで、ファンに会えない切実な想いと、その大切さをストレートに表現した歌詞、エフェクト効果も具合良くサウンドに溶け込んでいる。6曲目の「Dis-ease」は、ラップをメインとしたヒップホップ・トラック。ファンキーなビート、飛び交うスクラッチ、高速ラップとかつてのゴールデン・エイジを焼き直したような充実ぶりで、世代を超えてたのしめる内容となっている。

 ディスコやオールドスクールは彼らの世代には馴染みのない音楽だが、どのジャンルもどの時代の音も上手く取り入れ、自身等のサウンドにアレンジしてしまう才能と勉強熱心な姿勢には感服する。一方、7曲目の「Stay」は2010年代初期~中期に回帰したEDMで、本作の中では彼らの世代に直結したある意味「最もK-POPらしい」曲といえる。「Telepathy」同様ARMYに向けたメッセージ・ソングで、ラストの「Dynamite」にボルテージを高めて繋ぐ架け橋的役割も果たした。

 その「Dynamite」は、ライブのエンディングをイメージして欲しいという理由からアルバムの最終曲にしたのだそう。たしかに、映像がなくとも歓声飛び交うフィナーレの様子、MVで演出したパステル・カラーの花火が目に浮かぶようで、楽曲のクオリティはもちろん、構成においてもすばらしい作品だと実感することができる。ビルボード・チャートは非常にシビアで、知名度のあるトップスターでも1位を獲るのは難しい。「Dynamite」が通算3週のNo.1をマークしたのも、楽曲そのものが多くのリスナーに響いた証といえる。

 そのソング・チャート“Hot 100”では、リミックスのゲストとして参加したジェイソン・デルーロ&ジョーシュ685の「Savage Love (Laxed – Siren Beat)」も、「Dynamite」が首位を獲得した翌10月に首位を獲得した。アルバム・チャート“Billboard 200”では、前述の『MAP OF THE SOUL : 7』の他、『LOVE YOURSELF 轉 'Tear'』(2018年)、『LOVE YOURSELF 結 'Answer'』(2018年)、『MAP OF THE SOUL : PERSONA』(2019年)の4作が1位を獲得していて、本作『BE』が5作目の快挙を達成する可能性も極めて高いと報じられている。

 11月25日には、2021年1月に開催予定の【第63回グラミー賞】で「Dynamite」が<最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス賞>にノミネートされたと発表されたばかり。ノミネートだけでも十分すばらしい功績だが、受賞となれば2021年もBTSの躍進はとどまるどころか勢いを増していくだろう。

Text: 本家 一成


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