米チケットマスター、コンサート来場者のワクチン接種状況/検査結果を確認するための新たな取り組みを明かす
米チケットマスター、コンサート来場者のワクチン接種状況/検査結果を確認するための新たな取り組みを明かす

 製薬会社ファイザーが開発中の新型コロナウイルスのワクチンが、臨床試験で90%の有効率を示したという2020年11月9日の発表は、コンサート業界で働く人々に来年からのコンサート復活への期待を持たせた。その準備の一環として、米チケットマスターはスマートフォンを利用して来場者のワクチン接種状況を確認したり、コンサートまでの24時間から72時間以内にコロナウイルスの検査で陰性かどうかを確認するパンデミック後の来場者の安全性に関する体制に取り組んでいる。

 米チケットマスターの計画の詳細の多くはまだ制作段階だが、チケットマスター・デジタル・アプリ、CLEARヘルス・パスやIBMのデジタル・ヘルス・パスのような健康の情報を提供する第三者機関、LabcorpやCVSミニッツ・クリニックといった検査とワクチンを提供する供給会社といった3つの構成要素が必要となる。

 承認された場合、その仕組みは次のようになる。コンサートのチケット購入後、来場者はワクチン(約1年間新型コロナウイルスの感染を予防する効果がある)を接種していること、またはコンサートの24時間から72時間前に検査で陰性であることを証明する必要がある。検査の期間は各地域の保健当局によって管理される。金曜日の夜のコンサート参加者が48時間前にテストをする必要がある場合、そのほとんどはコンサートの前日に検査手続きを開始できる。それが24時間の時間枠だった場合、ほとんどの人はイベントの当日に検査所または診療所で検査を受けることになる。

 検査が完了すると、来場者は検査所にCLEARやIBMなどのヘルス・パス会社に結果を提供するよう指示する。検査が陰性だった場合、またはファンがワクチンを接種した場合、ヘルス・パス会社は参加者の新型コロナウイルスの状況をチケットマスターに照合し、その後チケットマスターはイベントに参加するために必要な資格を来場者に発行する。もし検査結果が陽性であったり、状況を確認するための検査を受けなかった場合、来場者はイベント参加を許可されない。解決すべき詳細はたくさんあるが、このプログラムの目標は、来場者がコンサートの前にワクチンを接種するか検査を行い、当日会場での検査を期待して訪れないようにすることだ。

 チケットマスターは、来場者の医療記録を保存したり入手したりすることはなく、特定の日のイベントに参加することが許可されているかどうかの照合のみを受け取る。また、州が異なれば、必要条件も異なる。ヘルス・パス企業の主な役割は、検査および医療機関からデータを収集し、医療保険の相互運用性と責任に関する法律(HIPAA)に準拠した安全で暗号化された方法でパートナー企業に状況の更新を配信することである。

 今のところ食品医薬品局は、ワクチン接種結果をリアルタイムで提供するために必要な複雑な技術を提供する第三者企業を承認していないが、チケットマスターのマーク・ヨヴィッチ社長は飛行機を利用した旅行、雇用認証、テーマパークへの入場に必要なデジタル・スクリーニング・サービスの需要を期待しており、新型コロナウイルス関連の新しいテクノロジー部門の成長を促進するために多くの資家や起業家が新たに興味を示すことを予想している。

 「すでに多くの第三者医療提供機関がワクチンの接種、検査、その他の審査や承認の方法など、審査を処理する準備をしています。これをデジタル・チケットを介して関連付けることで、イベント参加者の照合が可能になります」とヨヴィッチは米ビルボードに語った。「チケットマスターの目標は、会場とファンがイベントに再び参加するための複数の通過点に十分な柔軟性と選択肢を提供することです。また、政府機関の許可やクライアントの要望に基づいて、最善の解決方法を活用するために、アプリケーションのインターフェイスと最先端のデジタル・テクノロジーとの統合を構築するよう取り組んでいます」と続けた。

 チケットマスターの場合、2つの新しいテクノロジーがクライアントがプログラムを利用するのに役立つ。1つ目は、来場者の身元にリンクされたデジタル・チケットで、紙のチケットを排除することで譲渡や転売を制限することもできる。また、チケットマスターは新しいSmartEventシステムの展開も計画している。これは、イベントの主催者と来場者が社会的距離を管理したり、入場を遅らせたり、接触追跡の機会を提供するのに役立つ。安全基準の多くは地域の保健当局やイベントの主催者によって設定される。イベント主催者は、衛生設備、マスク着用義務、社会的距離など、独自の予防手順を設定することもできる。

 チケットマスターは、米国スポーツ・リーグの大部分やコンサート会場、ライブ・ネイションが所有する施設のチケットを発行しているため、同社の新型コロナウイルス対策計画の導入はライブ・エンターテインメント業界にとって重要な道しるべになるだろう。

 「ライブ・イベントが復活するために、テクノロジーと科学が統合手順の確立に大きな役割を果たすことで、ファンやアーティスト、従業員が安全に会場に戻ることができるようになります」と、新型コロナウイルス対策戦略についてエンターテイメントやライブ・イベント会社を支援するreBUILD20の共同創設者で社長のマリアンヌ・ハーマンは述べた。「チケット発券のプラットフォームとゲストの検査結果の照合を統合することは、ファンがライブ・イベントに行くことを再び想像するための重要な方法の1つです。ライブ・イベントに参加する経験はこれまでと全く異なるものになるでしょうが、一貫した実施と結びついた技術革新はスポーツやイベント業界を復活させるための枠組みを提供するでしょう」と説明した。