<ライブレポート>どうにか生きることを、“あなた”を肯定――back number配信ライブ 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

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<ライブレポート>どうにか生きることを、“あなた”を肯定――back number配信ライブ

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<ライブレポート>どうにか生きることを、“あなた”を肯定――back number配信ライブ

<ライブレポート>どうにか生きることを、“あなた”を肯定――back number配信ライブ


 back numberが10月25日、配信ライブ【back number live film 2020 “ASH”】を開催した。同公演は、back numberにとって2度目の配信ライブ。9月22日に行われた1度目の配信ライブは、ファンクラブ限定のアコースティックライブだったため、公に開かれた形での配信ライブはこれが初めてだ。

 始まりは、会場設営の早回し映像と過去のライブ映像を用いたムービー。その後画面が切り替わり、清水 依与吏(Vo/Gt)、小島 和也(Ba/Cho)、栗原 寿(Dr)、サポートメンバーのいるステージが映ると、「SISTER」から演奏が始まった。2曲目は「瞬き」。<幸せとは>と唄う清水の声が広い会場へ伸びていき、そこにコーラス、バンドサウンドが重なっていく。この日の会場は幕張メッセ。普段ならば観客でいっぱいになるアリーナ部分には照明装置が敷き詰められていた。

 事前コメントにもあったように、また、この日メンバーの口からも語られたように、「このご時世だからしかたなく」というテンションではなく、「きちんと特別な一つにしたい」という想いで今回の配信ライブに臨んだback number。アリーナを埋める照明装置や、ステージ周辺の上空に登場したLEDパネル、レーザーなどによる光の演出、そして演奏に向かうメンバーの姿を、360°のカメラワークが捉えた。

 そんななか、曲のテイストや歌詞の内容に因んだ演出が続く。「僕は君の事が好きだけど君は僕を別に好きじゃないみたい」では時折レトロな色味の映像エフェクトがかかり、「わたがし」では、フィルム映画風に画角が狭まる。「MOTTO」では、バンドサウンドの生身の質感を際立たせるように、照明が激しく明滅。「あかるいよるに」では、魔法の呪文を唱えたあと、会場中の照明が星のように輝き、「ハッピーエンド」では無数の青色の光線がアリーナから空へ放たれた。「HAPPY BIRTHDAY」では、蝋燭の火のような、オレンジ色のゆらめく光越しにメンバーの姿が映される場面も。「花束」のみ全編モノクロだった件については、解釈が大きく分かれそうだ。

 MCによると、ライブ当日を迎えるまで、監督の番場秀一や演出スタッフと協議を重ねてきたとのこと。清水は、「結局俺らはただバンドマンなので、愛を持って形にしてくれるプロフェッショナルズに託して、俺たちはここでガシャガシャやっているだけですけど。チーム・back numberが大事にしてきた曲たちが、大事にしてもらっている曲たちが、温度下がらずにそのまま届いているといいな、なんて思ってます」と語っていた。

 約1時間半のライブで、バンドは計16曲を演奏。今年10月12日に配信リリースされたばかりの最新曲「エメラルド」、8月18日にYouTubeでサプライズ公開されたものの現状リリース予定のない「水平線」は、共にライブ初披露だった。なかでも「エメラルド」は、レーザーをはじめとした照明がビビッドカラーに統一されていたり、映像エフェクトのかけ方が大胆だったりと、他の曲とは違った雰囲気がの演出が施されている。視覚面でもバンドの新機軸を強く打ち出そうという意思が読み取れた。それにしても、サビのボーカル、ラストの吠えるような部分はどのように発声しているのだろうか。意図的に声を裏返らせつつ喉を鳴らす、というコントロールが非常に難しそうなことをやっている気がする。

 ライブなのに観客が目の前にいないという状況に、メンバーは最初、若干緊張している様子だったが、表情はどんどん解れ、中盤では、「前回はアコースティックだったから全然違くて。バンドだと、やっぱり自分たちが出してる音も違うから」(小島)、「超ライブだね!」(清水)と、大きな音を思いきり鳴らせる喜びを分かち合っていた。いきいきとしたサウンドは“画面越しの最前列”で観ている私たちにもしっかり伝わってきている。人気曲「高嶺の花子さん」の演奏後には、「やっぱり画面越しで観ている人も『ヤッバい、「高嶺の花子さん」じゃん!』みたいな感じで、ノリノリになっていたりするのかな?」(栗原)、「4、5人……」(清水)と謙遜しまくりなやりとりがあったが、いや、きっと4、5人どころではなかっただろう。

 このように、メンバーが意気込んだ通り、従来のライブの下位互換的なものには留まらない、大充実のライブとなった。一方、この日の感想を3人が話す終盤のMCでは、「次はできれば同じ空間で」という願望が共通して語られており、“観客の不在”はバンドにとって無視できない要素だということも伝わってきた。「高嶺の花子さん」のサビで、LEDに過去のライブでの客席の様子が映され、まるでメンバーが観客に囲まれているような構図になっていたこと。会場一体となってのシンガロングが定番の「スーパースターになったら」がこの日は演奏されなかったこと。その意味を考えざるを得ない。

 「少なくとも俺たちの音楽は、誰に悪口を言われても、誰に否定されても、あなたの幸せを絶対に願っているので。そういう曲たちだと思うので。これからも安心して聴いてほしいなと思っています。少しでも追い風を吹かせられるものだと願ってます」と、自分たちの音楽の在り方を言葉にした際、「ちょっとでも前を向けるように」と言いかけて「前じゃなくてもいいか」と言い直していた清水。ラストが「青い春」、「大不正解」だった点からは、その発言に通ずるメッセージを感じた。

<また踊りながら 必死で生きているんだ 理想の未来なんて/用意されていない でもその中で願ってるのさ/ああ光を 光を>(「青い春」)

<僕等は完全無欠じゃ無い/原型を愛せる訳でも無い>(「大不正解」)

 剥き出しのバンドサウンドがさっと鳴り止み、ライブが終わったあとに訪れる、心がざわつくような余韻、寂しさ。この日のライブはそれさえも肯定するような――混乱し、戸惑いながらも、どうにか生きることを肯定するものとして存在していたように思う。メンバー曰く、配信ライブは、どこを向けばいいか分からない感覚があり、その感覚は、初めてアリーナでライブをやった頃に近いとのこと。しかし、アリーナでのライブは、回数を重ねることで「だんだん一対一感が出てきた」そうだ。だからあのときみたいに、ここからまた一つずつ、少しずつ始めていければいい。何もかもが大きく変わり、誰もが揺らいでいるこの世界で、それでも彼が「うん、いいですね」と頷いたのはそういった想いからではないだろうか。

 「今日はありがとうございました。これからもよろしくお願いします」。ライブの終わりを報せるその挨拶は、日々のお守りにしたくなる言葉だった。まるで彼らの音楽みたいに。


Text by 蜂須賀ちなみ
Photos by 佐藤祐介

◎【back number live film 2020 “ASH”】セットリスト
1.SISTER
2.瞬き
3.僕は君の事が好きだけど君は僕を別に好きじゃないみたい
4.黒い猫の歌
5.わたがし
6.君がドアを閉めた後
7.MOTTO
8.エメラルド
9.あかるいよるに
10.高嶺の花子さん
11.ハッピーエンド
12.HAPPY BIRTHDAY
13.花束
14.水平線
15.青い春
16.大不正解

◎公演情報
【back number live film 2020 “ASH"】
2020年10月27日(火)23:59まで視聴可能
視聴チケット:3,500円(税込)
※2020年10月27日(火)22:00まで購入可
※別途、配信メディアごとに異なる手数料がかかります。


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