ルックアップはユーザー層のバロメーター?! ヨルシカの新旧アルバムを比較
ルックアップはユーザー層のバロメーター?! ヨルシカの新旧アルバムを比較

 比較的ロングセールス曲が上位を占めているHot 100に比べると、Hot Albumsは入れ替わりが激しい。今週のトップ10を見ると、King & PrinceやTAK MATSUMOTOなど10作中9作品が初登場。長く上位にとどまるのはなかなか困難であることがよくわかる。そんななか、ヨルシカのサード・アルバム『盗作』が今週20位と健闘中だ(【表1】)。7月29日にリリースされた本作は、8/10付で初登場1位を獲得。その後、3位、5位、10位、16位と徐々に下降してきているが、それでも6週目にして20位以内にとどまっているのは見事だ。
 
 ヨルシカはソングライター、トラックメイカーのn-bunaと、ヴォーカルのsuisの2人組で、バンドを名乗っているがユニットといった方が感覚は近い。n-bunaはボカロ出身ということもあり、ファンもネット周辺の音楽シーンの近辺にコアな層があるといってもいいだろう。しかし、今回の『盗作』ではチャートの首位を獲得したことからもわかる通り、単にボカロやネットといった側面だけでは語れないほどの人気を得ているのは間違いない。

 そのことを裏付けるのが、ルックアップ(PCによるCD読取数)の推移が延びているという事実だ。リリース週から、2位、14位、12位、6位、5位、6位と上位をキープし続けている。ルックアップはレンタルの目安になるため、CDをレンタルするユーザーが多いことがよくわかる。言い換えれば、CDを買ったりダウンロードするのではなく、気軽にレンタルして楽しんでいるグレーユーザーが多くいるということなのだ。

 昨年4月にリリースされたファースト・アルバム『だから僕は音楽を辞めた』と比較すると、さらによくわかる(【表2】)。ルックアップの指標は2週目以降大幅に下降しており、レンタルではあまり響かなかったことが見えてくるだろう。この時はまだ、コアファン主体の売れ方だったのだと推測できる。

 ヨルシカは独自のスタイルを変えることなく今作を作り上げていることを考慮すると、彼らがメジャーシーンに迎合したわけではないことは明白だ。そして今作で、やっと世の中が彼らに追いついた。そのことがチャートからも読み取れるのである。Text:栗本斉

◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。