『TattleTales』6ix9ine(Album Review) 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

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『TattleTales』6ix9ine(Album Review)

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『TattleTales』6ix9ine(Album Review)

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 ファンにとってはまさに“待望の”というべくテカシ・シックスナインの新作『TattleTales』。というのも、デビュー作『ダミー・ボーイ』を発表した2018年11月に、発砲や恐喝等による容疑で逮捕され、今年の4月初旬に出所したばかり……だからだ。それも、新型コロナウイルスの影響で早期釈放されたというから、運がいいと言っていいものやら、微妙なところではある。

 翌5月には、自身のバースデーに合わせて早々に復帰シングル「Gooba」を発表。冒頭から耳を塞ぎたくなる強烈なシャウトを炸裂させ、衰えぬパワーを添えたカムバックを果たした。保釈にあたり、関与していたギャングの情報を警察に提供したことが散々に叩かれたワケだが、それを逆手にとって(というかムキになって?)同曲ではアンチをディスり返すという“らしい”リリックを披露。で、本作のタイトル『TattleTales』=告げ口屋に直結したワケだ。

 「Gooba」は、2020年5月23付米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”で初登場3位という華々しいデビューを飾ったが、その1か月後の6月27日付チャートでは2ndシングル「Trollz」が自身初のNo.1デビューを果たし、フィーチャリング・ゲストとして参加したニッキー・ミナージュと歓喜に沸いた。ストリーミング・サービスへの恨み節や、同日に発表した別アーティストへの非難など、皮肉をたっぷり交えての歓喜……ではあるが(ニッキーもとい)。

 「Trollz」は、歌詞にもそういった皮肉やヘイターたちへのディスり返し的ニュアンスが綴られている。リリックはさておき、両者のラップが映えるクールなトラックは「Gooba」以上の高クオリティ。ニッキー効果や複数のパッケージ販売が姑息だとの声もあがったが、熱心なファンがそれだけいるというのは凄いことで、戦略勝ちと言えなくもない。カラフルな色彩で目まぐるしく展開するミュージック・ビデオも、ドギついながらまた観たくなる中毒性があった。

 両親の意思を受け継いだ巧みなスペイン語で唸る3曲目のシングル「Yaya」は、2000年代中期のレゲトンを下敷きにしたトラックで、夏らしいカラフル&お下劣な仕上がりのMV含め、本人も「最高傑作」と公言していたが、この流れでヒットしなかったのが不思議ではある。ジャマイカ出身のレフトサイド(元レフトサイド&エスコ)とコラボした「Nini」も、ダンスホール色を強めたサマー・チューン。

 4thシングル「Punani」はコア・ファンからの受けが良さそうなバウンスっぽい曲で、米NYをスポーツカーで暴走するビデオも爽快ではあったが、こちらも前2曲のようなヒットには至らず、若干勇み足な感じがしないでもない。この曲をはじめ、本作は全体的に丁寧な作り込みがされていない印象を受ける。個人的には、シングル・カットするならアルバムのリリース日にMVを公開したミッドテンポのトラップ「Tutu」の方がよかった。Lil AKが参加したハードコア「Gata」も悪くないんだけど、デモに近いような雑さ加減が気になる。

 アルバムの一曲目に収録された「Locked Up Pt. 2」は、2000年代にヒットを連発したR&Bシンガーのエイコンを招いた意欲作。ブレイク・ヒット「Locked Up」(2004年)をまんま使いしたカバーに近い仕上がりで、2000年代を通過した世代にはイントロから懐かしさが蘇る。エイコンは、ブライアン・アダムスのNo.1ヒット「Heaven」(1985年)をサンプリングした「Leah」にも参加。マイルドなボーカル効果で、シックスナインのアルバムとは思えない(?)品の良さを醸してくれる。

 「Locked Up Pt. 2」では、前述のギャングに関わっているとされる因縁のトリッピー・レッドについて歌われているが、「Locked Up」をネタ使いしたのも、シックスナインが逮捕された際にトリッピーが同曲をバックにダンス動画を投稿したため=報復といったところ(かと思われる)。ボイスチェンジャーされた声で不気味に歌う「Locked Up Pt. 2」路線の「GTL」では 、その他にも暴露できるネタがあるようなことを仄めかしているし、一連の騒動はまだまだ収まりそうにない感じ。

 しかし、身の危険を及ぼす可能性のある相手をぶった切り、SNSなどの中傷にもビクともしないどころか、炎上を愉しんでいるかの姿勢には感服する。 これだけメンタルが強ければ安心……と言いたいところだが、これが不安を解消するための防御策だとすれば若干心配になる、というのは大きなお世話か?米マイアミの音楽プロデューサー/ラッパーのロニー・Jがプロデュースした最終曲「Ava」では、「誰も信用しない」って歌ってるしね。

Text: 本家 一成


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