配信とフィジカルのバランスがいい?! Official髭男dismの巧さ
配信とフィジカルのバランスがいい?! Official髭男dismの巧さ

 米津玄師のニュー・アルバムとストリーミング解禁の騒ぎも少し落ち着いたHot 100。もちろん米津は相変わらず勢いがあるが、実はOfficial髭男dismの追撃も見逃せない。トップ10を見てみると「HELLO」「I LOVE…」「Pretender」の3曲、50位以内だと9曲もランクインされている。米津玄師がトップ50だと9曲ランクインのタイなので、ヒゲダンも負けず劣らず凄いということがわかるだろう。

 今週5位を記録したヒゲダンの「HELLO」は、同名のEPのタイトル・チューン(【表1】)。この曲自体は7月24日に先行配信され、8月5日には4曲入りのEPがフィジカル、配信ともにリリースされている。このEPには「HELLO」の前に配信された「パラボラ」と「Laughter」も収められていると同時に、廃盤となっているインディーズ時代の楽曲「夏模様の」も含まれており、新旧のファンにしっかりとアピールできる内容となっている。

 「HELLO」のチャートの動きも安定しており、8/3付の初登場は25位と地味だったが、次週8/10付で14位と上昇し、フィジカルの発売とYouTubeでのMV公開タイミングである8/17付で一気に4位へと急上昇した。彼らはもはや配信でもフィジカルでも一定の動きが読めるので、いかにこれらのアイテムを駆使してヒットを生み出すのかがポイントとなる。「HELLO」に関しても、配信によってある程度の結果を出した段階で、フィジカルで畳み掛けるような戦略をとっている。この後はおそらくフィジカルは下降するだろうが、レンタル等の指標であるルックアップ(PCによるCD読取数)とストリーミング再生数、動画再生数を伸ばすことでロングヒットを狙うはず。もちろんそこにはメディアの露出を始めとする話題性も関わってくるだろうが、配信だけでなくフィジカルでもリリースしたことで、あらゆるリスニングスタイルのユーザーにアピールしているのだ。

 ここ最近のヒットは、フィジカル派とストリーミング派に二分されてしまった印象があるが、ヒゲダンはどちらもバランス良く活用し、ビッグヒットとロングヒットを生み出している。まさに無敵のコンテンツを持つアーティストといえるだろう。Text:栗本斉

◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。