<ライブレポート>和楽器バンド コロナ禍で揺らぐ有観客ライブのこれからに大きな足跡を残す 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

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<ライブレポート>和楽器バンド コロナ禍で揺らぐ有観客ライブのこれからに大きな足跡を残す

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<ライブレポート>和楽器バンド コロナ禍で揺らぐ有観客ライブのこれからに大きな足跡を残す

<ライブレポート>和楽器バンド コロナ禍で揺らぐ有観客ライブのこれからに大きな足跡を残す


 和楽器バンドが新型コロナウイルス感染拡大後としては初となるアリーナ規模での有観客ライブ【真夏の大新年会2020 天球の架け橋】を2020年8月15日、16日に横浜アリーナで開催した。本レポートは公演2日目の模様をお伝えする。

 開演時間の16時ぴったりに暗転すると、本来であれば、大好きなメンバーの名前を呼んだり、黄色い声が会場内に響いたりする場面が見られるはずだが、会場にいた観客全員がその気持ちをグッと抑えて、代わりに拍手やペンライトでライブの幕開けを出迎えた。野生動物や山や森、地球といった自然写真を背景に<鬼さんこちら>というコーラスが響き、幕が落ちると、スタンバイしていたメンバーたちが現れ、オープニング映像からそのまま「IZANA」へ。ステージ中央で神々しく歌う鈴華ゆう子(Vo.)が作詞・作曲したこの曲は、古事記を元に壮大なファンタジーの世界観が展開するが、自然災害など運命に抗えず起こる別れによって苦しんでいる人達を癒やすことを願って書かれたものでもある。新型コロナウイルスという未曾有の事態に世界が混沌に包まれているが、その状況に光を射す一曲だろう。

 和楽器バンドは、新年の挨拶とその年の意気込みをファンに直接伝える恒例のライブ【大新年会】をデビュー当時から行っていたのだが、今年は直前で中止が決定。会場の客席を半分にして開催された本公演は国内外で有料配信もされ、ファンは会場もしくは画面越しと、それぞれがライブ参戦方法と楽しみ方を選んだ。今回のセットリストは、中止決定前に決まっていた内容で、ステージ上のパフォーマーを最低限にするなど、ガイドラインに沿ったうえで最大限できる演出で繰り広げられた。

 海外進出第一弾シングル「Ignite」では、炎が勢いよく焚きつけられ、一気にヒートアップ。和太鼓やベースの鼓動を肺の辺りでドンドンと感じることができたのだが、これは久しく忘れていた感覚だ。いたるところで紫色や白色のペンライトが輝き、楽器移動が難しい黒流(和太鼓)と山葵(Dr.)、いぶくろ聖志(箏)以外の亜沙(Ba)や神永大輔(尺八)ら前方メンバーは、ステージの端まで、行けるところまで走り回った。

 ポップな「World domination」でペンライトを先導したり、<おりゃさ>のリズムに合わせてジャンプを煽ったりと、掛け声NG、シンガロングNGでありながら、ソーシャルディスタンスを取ったおかげか、観客は両隣・前後を気にせず思いっきり腕を振ることができたため、いつものライブと変わらずかなりの運動になったはずだ。実際、ライブ終了後に汗だくになっている観客を何人も見かけた。

 全体的な映像演出では、前述のような自然写真や、数百年前のものと思われるような日本の風景が多数使われており、終始、ザ・日本を感じるライブであったが、「シンクロニシティ」ではブルージーな町屋のギターと力強い蜷川べにの三味線がいいスパイスになっていた。ステイホーム期間中はほとんど動かなかったと話す町屋が、タガが外れたようにステップを踏む姿を目にして、思わず口元が緩んだ。

 黒流と山葵による和太鼓&ドラムの対決コーナーでは、ファンも嬉しい写真&動画撮影OKの時間が設けられ、アイドル並みのポーズやご自慢の筋肉を見せつけた。そして、ここからライブ終盤に突入。鈴華は扇子をペンライトに持ち変えて、オーディエンスを先導し、「雪影ぼうし」から「地球最後の告白を」、そして本編ラスト「情景エフェクター」へと流れる。鈴華はMCで、ライブ直前まで不安でいっぱいで、再び公演中止になる可能性が十分あることも覚悟していたと話していたが、<君がいるのならば ここで歌ってもいいかな>という歌詞が、まさにその気持ちを代弁しているかのようだった。筆者の席から観客の表情を観ることは難しかったが、ぴょこぴょこと上下に動く肩や後ろ姿だけでも、みな心の底から楽しんでいることが伝わってきた。きっと、ステージ上にいたメンバー達は、マスクでオーディエンスの顔半分が隠れてしまってはいるものの、喜びを十分に感じ取れたのではないだろうか。

 誰一人声を上げることなくマナーを守ってメンバーを見送りつつ、即時にクラップで再登場を待ち望む。いつしかアンコール待機中の定番となっていた「暁ノ糸」の大合唱が今回はリモート映像で再現された。映像は全国から集まった歌唱映像を繋げたものだ。そして「ありがとうございます!」と清々しくメンバーが再登場。鈴華は「昨日は90%くらい不安でステージに立っていましたが、たった一日で気持ちの変化がありました。たった昨日のことなのに、今日は全く違うステージで歌っているような気持ちにさせてくれたのは、皆さんでした。幕が下りた瞬間から皆さんから毅然とした意志が伝わってきて、これは今までのステージで感じた大歓声や拍手、ペンライトからは感じられない初めての経験でした。人間って声とか表情以外にも伝えられる力を持っているんですよ!」と従来のライブとは違う雰囲気のなかに発せられるエナジーがあったことを告白しつつ、「これからも『ライブをします』と発表していきます。ライブが急に中止になることもあるかと思いますが、やるという意思は常に発信していきたいと思っています。明日以降もよろしくお願いします!」と意思表示をした。

 そして、自粛中に書き上げ完成させたニュー・アルバム『TOKYO SINGING』から、配信がスタートしたばかりの新曲「Singin’ for...」をファンへプレゼント。山葵が作ったロックチューンは、出だしからアンセム感が炸裂する。アップビートに負けじと、オーディエンスも小刻みにペンライトを振り返し、<いつまでも歌うよ何度でも I’m singin’ for you and me>と先ほどの決意を再度伝えた。最後は「千本桜」で盛大に締めくくり、自粛後初のアリーナクラス有観客ライブとして有終の美を飾った。

 なお、本公演はコロナ禍で苦境に立つ日本の伝統芸能文化をサポートする“たる募金”プロジェクト第一弾として、廃業を発表した津軽三味線老舗メーカーである東京和楽器への支援寄付が行われ、会場に設置されたたる募金箱には2日間で約150万円、オンライン配信の課金システムでは約65万円が集まった。この支援はウェブサイトで引き続き受け付けている。


Text by Mariko Ikitake
Photos by KEIKO TANABE

◎【真夏の大新年会2020 天球の架け橋】セットリスト
※2020年8月16日(日)公演
1. IZANA
2. Ignite
3. Valkyrie-戦乙女-
4. いろは唄
5. セッション1(町屋・いぶくろ・蜷川)
6. World domination
7. 起死回生
8. オキノタユウ
9. セッション2(鈴華・町屋・黒流)
10. Break Out
11. シンクロニシティ
12. ワタシ・至上主義
13. 和太鼓ドラムバトル
14. 雪影ぼうし
15. 地球最後の告白を
16. 情景エフェクター
<ENCORE>
17. 暁ノ糸
18. Singin’ for...
19. 千本桜


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