『トランスレーション』ブラック・アイド・ピーズ(Album Review) 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

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『トランスレーション』ブラック・アイド・ピーズ(Album Review)

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『トランスレーション』ブラック・アイド・ピーズ(Album Review)

『トランスレーション』ブラック・アイド・ピーズ(Album Review)


 一般的には、ファーギーが参加した『エレファンク』(2003年)~『ザ・ビギニング』(2010年)までの4作が、彼等の全盛期とされているため、ファーギー不在の前後の作品は、あまりフィーチャーされない。しかし、デビュー作『ビハインド・ザ・フロント』(1998年)と2ndアルバム『ブリッジング・ザ・ギャップ』(2000年)は、ヒップホップ・ファンから高い評価を得ているし、2018年にリリースした前作『マスターズ・オブ・ザ・サン VOL.1』も、それら2枚に原点回帰した、良いアルバムと絶賛されている。

 EDM満載のモンスター・ヒット『The E.N.D.』(2009年)もあれば、純粋なヒップホップ・アルバム『マスターズ・オブ・ザ・サン Vol. 1』もある。作品、ゲスト、時代毎にカラーを自在に変える、カメレオンみたいなスタイルが、ブラック・アイド・ピーズの魅力で、人気の理由。本作『トランスレーション』も、フタを開ければレゲトン、ラテン、ダンスホールといった夏らしいダンス・トラックに特化した、もはや“ヒップホップ・アルバム”とは程遠い内容だった。

 およそ2年ぶりとなる新作『トランスレーション』は、<エピック・レコード>移籍後初、通算8枚目のスタジオ・アルバム。ファーギーの代役として追加されたフィリピン出身の女性シンガー=J.レイ・ソウル含め、レゲトン、ラテン、ヒップホップ・シーンの人気アーティスト等がこぞって参加している。

 そのJ.レイ・ソウルと、プエルトリコ出身の人気シンガー=オズナによるコラボレーション「ママシータ」は、マドンナの「ラ・イスラ・ボニータ」(1986年)をサンプリングしたラテン色強めのレゲトン。ファーギーほどのパンチはないものの、J.レイ・ソウルのボーカルも十二分に強調されている。同曲は、米ビルボードのラテン・ソング・チャートで3位を記録し、イタリアでは2位、イスラエルでは3位と各TOP3入りを果たした。個性的なダンサーと彩るミュージック・ビデオも、公開2か月で1億再生を突破している。J.レイ・ソウルのボーカルをメインとした「トンタ・ラヴ」も、同路線のレゲトン。

 そのマドンナが昨年リリースした「メデジン」でパートナーを務めた、コロンビア出身のラテン・シンガー=マルーマは、3曲目のシングルとしてリリースしたばかりの「フィール・ザ・ビート」にフィーチャーされている。リサ・リサ&カルト・ジャムの「キャン・ユー・フィール・ザ・ビート」(1985年)をネタ使いしたダンス・トラックで、ネオンカラーのお洒落なMVも好評を博し、公開3日で1千万再生を記録した。80年代の曲をサンプリングした曲は、故リック・ジェームスの大ネタ「スーパー・フリーク」(1981年)を使った「ヴィダ・ロカ」と、グロリア・エステファンがメンバーに在籍していたラテン・ユニット=マイアミ・サウンド・マシーンの「コンガ」(1985年)をサンプリングした、エル・アルファとの「ノー・マニャーナ」の計4曲がある。

 「ヴィダ・ロカ」は、“ラテン・アーバン”のパイオニアと謳われるニッキー・ジャムと、売れっ子ラッパーのタイガという異色のコラボレーション。「スーパー・フリーク」が使われたM.C.ハマーの大ヒット曲「U・キャント・タッチ・ジス」(1990年)のフレーズも一部使用されている。ネタ曲では、米ミシガン出身の7人組ファンク・バンド=リップルのクラシック・ナンバー「アイ・ドント・ノウ・ホワット・イット・イズ、バット・イット・シュアー・イズ・ファンキー」(1973年)と、ダンス・エレクトロ・デュオ=ラ・ブーシュのデビュー曲「スウィート・ドリームズ」(1994年)の2曲が使われた、フレンチ・モンタナとの「マブティ」も面白い。

 昨年10月に発表した1stシングル「リトモ」は、米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”で、通算16週連続のNo.1をマークした「デスパシート」(2017年)や、同チャート1位を獲得したカーディ・Bの「アイ・ライク・イット」(2018年)にフィーチャーされた、J. バルヴィンとのコラボレーション。彼の特色を活かした夏らしいトロピカルなナンバーで、新しい幕開けを華やかに彩った。同曲は、ウィル・スミス主演の映画『バッドボーイズ フォー・ライフ』のサントラにも収録され、Hot 100で最高位26位を獲得。2011年の「ドント・ストップ・ザ・パーティー」(86位)以来、おそよ8年ぶりに同チャートでのランクインを果たした。日本盤ボーナス・トラックには、ウィル・スミスの愛息ジェイデン・スミスとのコラボ・バージョンと、スティーヴ・アオキによるリミックスも収録される。

 4曲目の「ガール・ライク・ミー」 は、今年2月に開催された【第54回スーパーボウル】のハーフタイム・ショーで、ジェニファー・ロペスと圧巻のパフォーマンスを披露した、ラテン・ボーカルの代表格=シャキーラのボーカルをフィーチャーした、ラテン・エレクトロ。官能的なお尻ダンスが目に浮かぶ、シングル・カットも期待できそうな逸品だ。女性アーティストをフィーチャーした楽曲では、シャキーラにも匹敵する美しさを誇るベッキー・Gとの「ドゥーロ・ハード」もキュート。

 その他、コロンビアの4人組ラテン・ユニット=ピソ21を抜擢したゴリゴリのレゲトン「トド・ブエノ」や、バッド・バニーや故ジュース・ワールド、ポスト・マローンまで幅広く手掛けるラテン/ヒップホップのプロデューサー、タリク'ロシアン'ジョンストンとの共作曲「アイ・ウォーク・アップ」、DJスネイクが参加したエレクトロ・ダンスホール「アクション」~最終曲「ニュース・トゥデイ」まで、フロアを揺るがすダンス・トラックが途切れず続く。かつてのミックステープのような、そんな感じの仕上がり。

 このアルバムを初めて聴いた時は、どう捉えていいものか少々困惑したが、「何も考えずに陽気に踊れる」という意味では十分にたのしめるし、荒みがちなご時世だからこそ需要はある。自粛生活も、こんな陽気なアルバムと過ごせばたのしめる…カモ?

Text: 本家 一成


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