『カーム』ファイヴ・セカンズ・オブ・サマー(Album Review) 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

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『カーム』ファイヴ・セカンズ・オブ・サマー(Album Review)

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『カーム』ファイヴ・セカンズ・オブ・サマー(Album Review)

『カーム』ファイヴ・セカンズ・オブ・サマー(Album Review)


 前作『ヤングブラッド』(2018年)からは、タイトル曲が米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”で最高7位をマークし、アルバムも2014年のデビュー・アルバム『ファイヴ・セカンズ・オブ・サマー』、2015年の2ndアルバム『サウンズ・グッド・フィールズ・グッド』に続く3作連続のNo.1デビューという大成功をおさめた。本作『カーム』は、その『ヤングブラッド』から約2年ぶり、通算4作目となるスタジオ・アルバムで、リリースまでに5曲のシングルが輩出されている。

 1stシングルの「イージアー」は、ナイン・インチ・ネイルズの「クローサー」(1994年)をサンプリングしたニューウェイブ風のトラックで、チャーリー・プース、ワンリパブリックのライアン・テダー、アンドリュー・ワット、ルイス・ベルといった豪華面々が制作に参加している。ずっしりとしたトラック、都会的なサウンド、ルークの艶美でタフなボーカル、すべてにおいて前作からの成長が伺える一曲で、蒼暗い洞窟でパフォーマンスするミュージック・ビデオからも、もう“ボーイズ・バンド”とは呼べない風格を漂わす。

 2曲目にシングル・カットされた「ティース」には、先述のライアン・テダー、アンドリュー・ワット&ルイス・ベルに加え、人気プロデューサーのアリ・タンポジがソングライターとして参加している。この曲は、Netflixドラマ『13の理由』のタイアップ・ソングとして起用されたこともあり、作品の世界観をイメージしたスリリングな楽曲に仕上がっている。インダストリアルやニュー・メタルといったサウンドも、ドラキュラを彷彿させる(?)不気味な歌詞にハマっているし、実験所から脱出を図ろうとするホラー・テイストのMVも、コンセプトに一致した。

 前月にリリースされた3rdシングル「ノー・シェイム」は、ハードな前2曲とは雰囲気の異なる、マイルドな味わいのミディアム・ロック。ネットの中傷を前向きにとらえた…と取れなくもないフレーズや、個人ではなくファンに向けたと思われる一節から、“アーティスト目線”でメッセージを綴った、そんな気がする。かつての人気オルタナ・バンドを彷彿させる、ヒョウ柄の壁に覆われた一室でのビデオ・パフォーマンスも、「外野の目なんて気にするか」っていう、アンチへのメッセージなんじゃないか…と。

 ロックを主とした3曲のシングルから一転、「オールド・ミー」はヒップホップのトラックを下敷きにした意欲作で、それもそのはず、プロデューサーにはラップ系のアーティストを多数手がけるドレー・ムーンがクレジットされている。過去の自分を振り返りやり直す術を見出す、男子っぽさが存分に詰まったファイト・ソング。ミュージック・ビデオで回想する4人の子供は、いうまでもなくメンバーの幼少期を再現しているのだろう。女性ファンの多い印象の5SOSだが、この4曲だけでも男子ウケは十分狙えると思う。

 発売直前にリリースされた「ワイルドフラワー」もいい曲。皮肉っぽさやネガティブな要素を取っ払ったポジティブな歌詞と、それに通ずるハッピーな雰囲気のエレクトロ・ポップが、アルバムの若干陰気な要素を消化してくれる。こういう曲もバランス良く配置されているから、彼等のアルバムは聴きやすい。プロデュースは、ショーン・メンデスの全米No.1アルバム3枚を手掛けた、カナダの音楽プロデューサー=ジェフ・ワーバートン。

 人気プロデューサーによるナンバーでは、ベニー・ブランコが担当した「ベスト・イヤーズ」と「ノット・イン・ザ・セイム・ウェイ」の2曲も出来高。前者は、制作の要となったライアン・テダーらしい旋律のポップ&メロウで、パートナーへの一途な想いを歌った歌詞含め、泣かせどころが満載。後者は、若干病的な表現で愛を伝える“こじらせ男子”の歌…というべきか。マルーン5っぽいサウンドは軽やかだが、歌ってることは結構重い。

 その他、母国オーストラリアのエアーズロックからインスパイアされたという、エキゾチックなパワー・ポップ「レッド・デザート」や、過去に失った恋を未練たっぷりに女々しく歌うアコースティック・メロウ「ラヴァー・オブ・マイン」、4人全員がソングライターとして制作した、切ないハートブレイク・ソング「シン・ホワイト・ライズ」、メンバーが入れ替わりコーラスに参加するシンセ・ポップ「ロンリー・ハート」、ビートルズをイメージして作ったという、自己評価について歌ったバラード曲「ハイ」など、質の高いサウンド・プロダクションに溢れている。「ヤングブラッド」にような大ヒット曲が生まれなくとも、十分有意義なアルバムを作れたのではないだろうか。

Text: 本家 一成


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