『Map of the Soul: 7』BTS(Album Review)
『Map of the Soul: 7』BTS(Album Review)

 オリジナル・アルバムとしては、2018年5月に発表した3rdアルバム『Love Yourself: Tear』から約2年ぶり、2019年4月にリリースしたミニ・アルバム『Map of the Soul: Persona』から約10か月ぶりとなるBTSの4thアルバム『Map of the Soul: 7』。タイトルに記された“7”は、2013年のデビューから経た期間“7年”を意味しているそうで、“7人”それぞれの思いや表現したいこと、成功までのプロセス等が詰まっている。

 前作『Map of the Soul: Persona』は、発売翌週の米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”で初登場1位を記録。2018年は『Love Yourself: Answer』、『Love Yourself: Tear』の2作が同チャートでNo.1デビューを果たし、3作目の快挙達成となった。本国の人気アーティストでも3作連続でアルバム・チャートを制すのは難しく、彼等の米国での人気を物語る。

 新作『Map of the Soul: 7』には、その『Map of the Soul: Persona』に収録されたいくつかのタイトルが引き継がれている。オープニングは変わらず、RMが韓国語と英語を交えたラップを炸裂させる「Intro: Persona」~ホールジーをゲストに迎えたダンス・ポップ「Boy with Luv」。「Boy with Luv」のミュージック・ビデオは、公開24時間で7,000万再生を突破し、現在までに7億回という凄まじいストリーミング数を記録している。本作においても、プロモーションとしての大きな役割を果たすだろう。

 ジョングクの繊細なボーカルとRMのラップが掛け合う、エド・シーラン作のブリティッシュ・ポップ「Make It Right」~ジョングクとジン、ジェイホープの3人で構成されたエレクトロ・メロウ「Jamais Vu」、前作のトリを飾ったロック・テイストの「Dionysus」で第一幕を閉じ、ラップとボーカル・パートを織り交ぜたSUGAによるインタールード「Shadow」で第二幕が開ける。

 インタールードから繋ぐ「Black Swan」は、前月に先行配信されたリード・トラック。トラヴィス・スコットをなぞったようなトラップ寄りのヒップホップを、難無くパフォーマンスできる彼等のボーカル・ワークには感服する。ソングライターには、ジャスティン・ビーバー等を手掛けるフィリピン系カナダ人のダン・オーガスト・リゴがクレジットされている。次曲「Filter」は、ジミンお得意のファルセットが光るラテン・ポップ。カミラ・カベロあたりを彷彿させるこの曲もまた、米国のヒットを意識したようなナンバーだ。

 ジョングクが色気を醸して歌うスロウ・ジャム「My Time」~トロイ・シヴァンとカナダ出身の女性シンガーソングライター=アリー・Xがタッグを組んだ、量感あるエレクトロ・メロウ「Louder Than Bombs」の2曲も傑作。ダンス・パフォーマンスが定評のBTSだが、アップのみならず、ミディアム~バラードも完成度高い。

 11曲目の「ON」は、1月初旬に公開されたにカムバック・マップでも大きな話題を呼んだ、本作の目玉曲。アルバムと同日に公開されたミュージック・ビデオは、3日で6千万視聴を突破し、1週間で1億回に達する勢いに迫っている。UCLAのマーチングバンドを従えフォーメーション・ダンスを披露する映像は、見事としか言いようがないし、サウンドもヒップホップとバロック・ポップを融合させたような、斬新な創りになっている。同曲のコンセプトは“アーティストとしての召命意識と心構え”だそうで、本作の核となるメッセージが込められている。ボーナス・トラックとして、シーアをフューチャーしたリミックス・バージョンも収録された。

 次曲「Ugh!」は、RM、 ジェイホープ、 SUGAの3人による男気溢れるハードコア・トラック。シャウトや攻撃的なラップからも想定できるように、誹謗中傷や心ないコメントに怒りをぶつけているようなフレーズが多々見受けられる。銃声音やアジアン・テイストなバック・トラック等、アレンジもユニークで、彼等の解放感あるフロウも良いアクセントになっている。ラップ・ライン「Ugh!」からボーカル・ラインの「00:00 (Zero O'Clock)」へ。他4人がクレジットされた同曲は、ノスタルジックな泣かせのメロウに仕上がっている。

 Vが単独で歌うレア曲「Inner Child」は、『Map of the Soul: Persona』にも参加したアーケーズ作によるエレクトロ・ポップ。そのVとジミンが組んだ「Friends」も、レゲエのテイストを含んだ旋律の美しいエレポップで、いずれも“良い意味で”K-POPらしさが際立った。後者には、ノルウェーの音楽プロデューサー=マーティン・シヨリーがソングライターとして参加している。ジンがボーカルを担当した「Moon」は、過去作「Best Of Me」(2017年)や「Magic Shop」(2018年)等も手掛けたDJスウィベルによるプロデュースで、こちらもK-POP特有の軽快なダンス・ポップが聞き心地良い。

 一方、エフェクトを巧みに操ったRMとSUGAによるヒップホップ・トラック「Respect」は、米国を意識したクールな仕上がりになっている。デビュー作『2 Cool 4 Skool』(2013年)に収録された「We are Bulletproof Pt.2」を継ぐ「We are Bulletproof : the Eternal」、ジェイホープが担当するスクラッチを効かせたダンスホール調のパーティー・チューン「Outro: Ego」も、相当カッコいい。

 リリース2日前の2月17日時点で、400万枚の予約数を突破した本作『Map of the Soul: 7』。この記録は、BTSのアルバム歴代最多受注数で、韓国や日本はもちろん、アメリカでのNo.1デビューもほぼ間違いないと報じられている。1月26日に開催された【第62回グラミー賞】では、韓国人グループとして初めてパフォーマンスを披露し、話題をさらったばかり。本作を筆頭に、2020年も彼等の活躍は飛躍を遂げるだろう。

Text: 本家 一成