『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』サウンドトラック(Album Review)
『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』サウンドトラック(Album Review)

 日本でも大ヒットした映画『スーサイド・スクワッド』の人気キャラクター、マーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインを主人公にした『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』が全米で2020年2月7日に公開された。日本では3月20日から上映がはじまる。

 『スーサイド・スクワッド』本編のサントラからは、トゥエンティ・ワン・パイロッツの「ヒーサンズ」が米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”で2位、リル・ウェイン、ウィズ・カリファ、イマジン・ドラゴンズ、タイ・ダラー・サイン、ロジックの豪華コラボによる「サッカー・フォー・ペイン」が同チャート15位のヒットを記録。その他にも、スクリレックスやケラーニ、パニック・アット・ザ・ディスコ等、ジャンルの枠を超えた人気アーティストが参加し、話題をさらった。

 映画公開の同日にリリースされた本サウンドトラックにも、豪華面々が集結している。ブラックマスク役のユアン・マクレガーが公言した「フェミニスト」というコンセプトを基に、厳選されたアーティストは女性陣が中心。華麗なファッションを好むハーレイ・クインのイメージに直結した、自らも個性的なビジュアルでパフォーマンスする彼女たちの生み出した楽曲陣は強烈。

 オープニングを飾る「ボス・ビッチ」は、昨年11月にリリースした2ndアルバム『ホット・ピンク』(米R&Bチャート3位)が好調のフィーメール・ラッパー/シンガーのドージャ・キャットによる痛快なパーティー・チューン。浮浪児が満載の映画をまんま表現したような世界観は、彼女だからこそアプローチできたといえよう。カラフルなヘアスタイルで魅了する、ベイビー・ゴスがボーカルを務めたエレ・ポップ「ソー・シック」も、ハーレイをイメージさせるキュートな曲。

 3曲目の「ダイヤモンズ」は、次期ブレイク必須と絶賛されているフィーメール・ラッパーのミーガン・ジー・スタリオンと、フィフス・ハーモニーのメンバーでソロとしても活躍中のノーマニによるコラボ曲。先行シングルとして前月にリリースされ、同日には映画のシーンを織り交ぜたミュージック・ビデオも公開されている。

 「ダイヤモンズ」にちなみ、ノーマニのパートには映画『紳士は金髪がお好き』(1953年)から大ヒットしたマリリン・モンローの「ダイヤモンズ・アー・ア・ガールズ・ベスト・フレンド」がサンプリング・ソースとして使われている。ノーマニの妖艶なボーカルと、ミーガンのドスを効かせたラップが相性抜群で、強烈な衣装を纏って敵をなぎ倒していくビデオのパフォーマンスも、ハーレイ・クインっぽさが出ていてよかった。

 クエイヴォ(ミーゴス)のガールフレンドとしても知られるサウィーティーと、奇矯なファッション&ヘアスタイルがウケている、ラッパー/シンガーのギャルクサラによるコラボレーション「スウェイ・ウィズ・ミー」も、映画のシーンを起用したミュージック・ビデオが公開されている。ハーレイ顔負けのビジュアルで強盗を働く両者は、ミーガン&ノーマニ以上のド迫力。なお、同曲にも1953年にリリースされたラテンのスタンダード・ナンバー「キエン・セラ」がサンプリングされていて、ヴィンテージ感を醸している。

 モデルとしても活躍しているシャーロット・ローレンスによる「ジョークス・オン・ユー」は、前4曲のようなエキセントリックさはないものの、薄暗さや歪みをイメージさせる本編『スーサイド・スクワッド』っぽさを醸し出した感じが、群を抜いて良い。シャーロットのミステリアスな声質も、曲調にぴったりハマっている。エメラルド・ブルーの髪と、レトロなワンピースを振り乱して踊るMVのパフォーマンスも、良い意味で奇をてらいダイレクトに響いた。

 UKの新星、“エモガール”と称したメイジー・ピータースが歌うドリーミーなポップ・ソング「スマイル」、米ミシガン州出身の女性シンガーソングライター=CYNによるグランジ風の「ロンリー・ガン」、ソロ曲とは一線を画すホールジーによるパンク・ロック「エクスペリメント・オン・ミー」など、キャラクターやサウンドの形態も様々。「エクスペリメント・オン・ミー」は、英ロック・バンド=ブリング・ミー・ザ・ホライズンのオリヴァー・サイクスもソングライターとして参加し、彼等の大ファンだったホールジーはその喜びも交え、ツイッターで同曲をプロモーションしている。

 「エクスペリメント・オン・ミー」もそうだが、ミーガンやサウィーティー以上の気迫を放つジュシー・フルートの「デンジャー」や、米イリノイ州出身の女性シンガーソングライター=K・フレイの「バッド・メモリー」など、ロックとヒップホップをミックスしたいわゆるミクスチャー寄りの楽曲も多い。ソフィー・タッカーがエキサイティングにパフォーマンスしたハウス・トラック「フィーリング・グッド」や、フィフス・ハーモニーのローレン・ジャウリギーが圧倒的な歌唱力で凌駕する「インヴィジブル・チェーンズ」なんかも、ロックの要素が含まれている。

 ブラックキャナリーを演じるジャーニー・スモレット=ベルによるジェームス・ブラウンの「イッツ・ア・マンズ・マンズ・マンズ・ワールド」や、大ブレイク中のサマー・ウォーカーが歌うバリー・ホワイトの「アイム・ゴナ・ラヴ・ユー・ジャスト・ア・リトル・モア・ベイビー」といったカバー曲もあり、ジャンルや世代を超えて楽しめる内容になっている同サントラ盤。女性の強さや主張をテーマとした本作ならではのラインナップは、ハーレイ・クイン・フォロワーも納得だろう。

 国内盤は3月4日にリリースされる。

Text: 本家 一成