<インタビュー>『スター・ウォーズ』J・J・エイブラムス監督 「悲しむべきストーリーではない」
<インタビュー>『スター・ウォーズ』J・J・エイブラムス監督 「悲しむべきストーリーではない」

 スター・ウォーズ最新作となるエピソード9『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』が12月20日に日米同時公開される。1977年に『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』が全米公開されてから42年。同作はその完結編となる。今回は、エピソード7『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』でも監督を務めたJ・J・エイブラムスにインタビューを敢行。今までのスター・ウォーズのシリーズに責任を持ちながらも、あくまで自分たちで制作していったことが伝わる内容となっている。そして、作品に関わった多くの人たちへの敬意も忘れないところも印象的であった。また、別の記事では、フィン役のジョン・ボイエガとポー・ダメロン役のオスカー・アイザックの2人へのインタビューも公開している。

ーーコリン・トレボロウが監督から降板したことにより、今回監督を務めることになりました。原案としてデレク・コノリーもコリン・トレボロウもクレジットされていましたが、J・J・エイブラムスさんが監督に決定した時、脚本の何%ぐらいが出来ていて、そこから作品を作るにあたり、どこをポイントにしましたか。

J・J・エイブラムス:彼らは何稿も書いていました。でも、我々は白紙からスタートしました。

ーーその際、原案はベースとして残したのでしょうか。

J・J:オフィシャル・ライターをサポートするのが全米脚本家組合の方針なので。僕も脚本家ですし、組合の方には名前をちゃんと残してサポートしたいと思っています。

ーー先ほどの会見(12月18に東京で行われたプレス・カンファレンス)でクリス・テリオ(脚本)が「結末を見つけた瞬間があった」と仰っていました。J・J・エイブラムスさんにとってもそういう瞬間がありましたか。42年にわたる物語を終わらせるのはすごく難しいことと思いますし、会見でも繰り返し“責任”という言葉を口にしていました。

J・J:チャレンジでもあったのですが、チャンスでもありました。それだけ大きなチャレンジだったからこそ、やりがいがあるというふうに感じていまして。発見・ひらめきの瞬間はいくつかありました。脚本を書いていると息をのむ瞬間があって、そのときはまるで映画館にいるときのようにそのシーンが見えるんです。

ーー重責を感じたり、「これからもう1回ストーリーを変えようかな」と考えたりしましたか。

J・J:キャラクターに関してもファンに対しても責任はいっぱいあります。ジョージ・ルーカスが作り上げた精神・ストーリーテリングに対する責任もありましたし、キャリー・フィッシャーに対する責任もありました。でも、もっといいアイデアが生まれれば色々組み込んで試してみました。

ーー会見でも、「終わるのは寂しい」という言葉がキャストのみなさんからたくさん出ていましたし、ファンのみなさんもそう感じていると思います。そういうみなさんに対して、どのようなポジティブな声をかけたいですか。

J・J:悲しむべきストーリーではないと思います。とにかく楽しいですし、ロマンスがあったり、面白いところがあったり、エキサイティングなところがあったりしますので、すごく感動できます。悲しい部分があったとしてもバランスが取れているので、本当に楽しめるアドベンチャー映画だと思います。

ーーエピソード7『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』ではJ・J・エイブラムスさんが、エピソード8『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』ではライアン・ジョンソンが監督を務めました。自身が監督を務めた作品の続編をライアン・ジョンソンが務めたことになりますが、それにあたりライアンには何か声を掛けましたか。

J・J:「君のやり方でやって」と言いました。なぜなら、子守されたり人形みたいに操られたりしたら、絶対誰も監督をやりたくなくなりますので。ライアンの場合、彼の才能を認めて、そして彼に価値を見出して雇っているわけですから。私はフランクに自分の意見を言ったりはしましたけど、かといって「どうするべきだ」とか「~をしろ」といったことは一切言いませんでした。彼には奨励を与えただけです。

ーー生みの親であるジョージ・ルーカスに関しては、どれくらい意識しましたか。

J・J:一番最初に彼に会って、どういう意見を持っているか聞きました。しかし、ストーリーや筋に関して彼は一切何も言いませんでした。彼が作り上げたものを僕が継続できることは素晴らしいことだと思いますし、最初に彼と話し合いをしましたが、その後は自分たちで作りました。

ーー完成した作品をジョージ・ルーカスは見たのでしょうか。

J・J:公開前に必ず見る人ですが、どういう感想を持っているのかはまだ聞いてないです。

ーー先ほど少しキャリー・フィッシャーのお話が出ましたが、2016年に出版した回顧録『The Princess Diarist』で「2度も私に我慢してくれてありがとう」とおっしゃっていました。そのようなキャリー・フィッシャーの人柄に関して、「2度も私に我慢してくれて」にフォーカスできるエピソードはありますか。

J・J:一緒に仕事をしたのはスター・ウォーズが初めてでした。何を指してそのようなことを言っていたのかは分からないのですが、ものすごく面白い人でしたし、ものすごくユーモアのセンスを持っていましたので、撮影中に彼女がいないのはすごく寂しい経験でした。結構自分に厳しい人でもあったので、テイク中に撮影を止めて「あー!」となって自分の頭をたたいたりしていました。『フォースの覚醒』も今回も、娘のビリー・ラード(コニックス中尉役)もいたので、本当にキャリーが生きていたら、きっとこれは認めてくれるだろうというような作品にはしたつもりです。

ーーエピソード4『新たなる希望』以降、撮影の技術や映画館そのものに関しても、大きく進化していると思います。今回の作品の映像や音響の注目ポイントはありますか。

J・J:今回の作品は、ILM(Industrial Light & Magic)の最高の仕事だと私は思っています。最新技術もそうですし、古い技術も使っています。パペットを使う技術もすごく今は新しくなっていまして。マズ・カナタというキャラクターは『フォースの覚醒』の時は全部CGだったのですが、今回はちゃんと現場にいたんです。とにかく、音響・ビジュアル・カメラ・ミキシングにおいて新しい技術は色々あるのですが、それは観客には見えないところです。だけど、何か感じ取ってもらえると思います。

ーー今回からの新キャラクター、D-O(ディオ)は何をヒントに作りましたか。

J・J:色々なデザインを試しましたが、アヒルに基づいています。ただ、D-OのDは“duck”の“D”ではありません。D-Oという名前は最初から決まっていました。丸い車輪の上にDが乗っているイメージから来ています。

ーーJ・J・エイブラムスさんはかつてインタビューで、ジョージ・ルーカスがスター・ウォーズのシリーズで成し遂げた凄いことの1つとして、一緒にいたメインキャラクターたちを一度引き離して、また一緒にしたことだとおっしゃっていました。“シリーズもの”の映画だからこそ体験できる素晴らしい瞬間は他に何があると思いますか。

J・J:ストーリーが非常に豊かで、響くもので、現代にも通じるものだからこそ、多くのファンを持っていたり自分自身もすごい情熱を持っていたりするんです。例えば、クリストファー・ノーランは『バットマン』シリーズを作りましたが、彼は『バットマン』が大好きでして。そういった意味で、彼の好奇心や情熱が注ぎこまれた、そしてキャラクターへの愛がたくさん溢れていた作品だと思います。僕も大好きな『スター・ウォーズ』という砂場で遊べるというのはもちろんチャレンジでもあるのですが、世界を作り上げられる遊びができてとても素敵なことだと思います。

ーー例えばリチャード・リンクレイター監督は、いつも愛を肯定する映画を作るということを裏テーマにしているとおっしゃっていました。色々な種類の映画を作っているJ・J・エイブラムスさんにも自分の信条や裏にあるテーマはあるのでしょうか。

J・J:プロジェクトが私に何をすべきか語ってくるんです。あと、テーマかどうか分からないですけど、何かしらラブストーリーが含まれているのが好きです。それはプラトニックなものかもしれないですけど、やっぱりハートのあるちょっとユーモアの含まれたドラマティックなものが好きです。でも、テーマはあまり考えないでやっています。