『へヴィー・イズ・ザ・ヘッド』ストームジー(Album Review) 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

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『へヴィー・イズ・ザ・ヘッド』ストームジー(Album Review)

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『へヴィー・イズ・ザ・ヘッド』ストームジー(Album Review)

『へヴィー・イズ・ザ・ヘッド』ストームジー(Album Review)


 1993年生まれ(現26歳)、英ロンドン・クロイドン出身。グライムの代表格として名を轟かせ、音楽活動のみならず、未成年犯罪についての言及や学生の奨学金支援、ボリス・ジョンソン首相を批判するなど政治にも精通するアナリスト的役割(?)も果たしている、ストームジー。ここ最近では、野外ロック・フェス【グラストンベリー・フェスティバル】に英国出身の黒人ソロ・アーティストとして初のヘッドライナーを務めたことや、TIME誌の表紙を飾ったことも話題となった。

 2017年にリリースしたデビュー・アルバム『ギャング・サインズ・アンド・プレイヤー』は、本国イギリス、アイルランド・チャートでNo.1をマークし、同年のUK年間アルバム・チャートで10位にランクインする大ヒットを記録。アルバムからは、「Big for Your Boots」(6位)と「Blinded by Your Grace, Pt. 2」(7位)がUKチャートでTOP10入りし、イギリス最大級の音楽アワード【ブリット・アワード2018】で<最優秀ブリティッシュ・アルバム>を受賞した。

 音楽評論家も絶賛する名盤『ギャング・サインズ・アンド・プレイヤー』から、約2年を経てリリースされたストームジーの2ndアルバム『へヴィー・イズ・ザ・ヘッド』。デビュー作がこれだけ高く評価されただけに、さぞプレッシャーも大きかったと思われる。昨今はSNSでダイレクトに批評されるからなおさらだ。しかしながら、アルバムからの1stシングル「Vossi Bop」は、公開初週に1千万回を超えるストリーミングを記録し、自身初のUKチャート1位を獲得。アワード効果もあったと思うが、セールス的には大成功をおさめている。このテのサウンドがイギリスでウケたというのは意外だったが、それ故にストームジーの人気を物語る。

 チャック・ノリスの名前を拝借して大いにディスってみたり、「政府も警察もまじでクソ」というフレーズが登場したりと、キワどい表現で政治的見解を示した「Vossi Bop」。歌詞の一部にちなんだ、コニャック・ブランデー、クルボアジェのパッケージをモチーフにしたカバー・アートも遊びゴコロがあって◎。早8,000万再生に届くミュージック・ビデオもそうだが、歌っていることは卑猥でも、アメリカのお下劣なラッパーとはひと味違うスタイリッシュさが伺える。

 2曲連続のTOP10入り(最高4位)を果たした2ndシングル「Crown」は、サム・スミスのデビュー作『イン・ザ・ロンリー・アワー』(2014年)で注目を浴びた同ロンドンのプロデューサー/ソングライター=ジミー・ネイプスによるプロデュース曲。ホラー・コア系を彷彿させるヒップホップ・サウンドに、差別や腐敗社会、欲深い人間模様等の重たいリリックが乗っかる解釈の難しい曲で、“アーメン”やら“イエス・キリスト(ジーザス)”といった宗教的なキーワードも登場することから、カニエ・ウェストの後釜的要素も若干感じられた。数年後は彼も……(?)。

 カニエ流という意味では、イースト・ロンドン出身の女性R&Bシンガー、ティアナ・メジャーナインをフィーチャーした「Rainfall」も、姉妹ゴスペル・デュオ=メアリー・メアリーの大ヒット・ナンバー「Shackles (Praise You)」(1999年)をサンプリングした“っぽい”仕上がりになっている。ゴスペルというよりは、ミレニアム頃のR&Bトラックという感じか。トラック自体はノスタルジックで聴きやすいが、詞を読み取るとストームジー自身かなり“こじらせてる”ことが分かる。

 ネタ曲では、R&Bユニットのビッグ・ブロヴァズが2003年にリリースした「Baby Boy」をネタ使いした「Rachael’s Little Brother」と、女性R&Bシンガーのキーシャ・ホワイトによる「Someday」を一部使用した「Superheroes」がある。いずれも同郷ロンドンのアーティストで、先輩方への敬慕も感じられた。敬慕といえば、グライムを確立させたレジェンド=ワイリーへのオマージュ・ソング「Wiley Flow」もそうだ。表現の仕方はかなり独特だが、お気に入りと思われる「Bad 'Em Up」と「Nightbus Dubplate」を上手いタイミングで使っているあたり、相当聴き込んだことは間違いなさそう。この曲には、売れっ子プロデューサーのイルマインドもクレジットされている。

 同ロンドン出身のラッパー、ヘディ・ワンをフィーチャーした「Audacity」は、トラップというよりはドリル・ミュージックに近いスタイルで、映像も映画のワンシーンに登場しそうな(割と)ハードコアな内容になっている。歌詞は、自身の経験を基に業界で生き抜くミュージシャンの苦悩を描いているようにも、聞こえなくもない。フランク・デュークスとTマイナスをプロデューサーに迎えた「Handsome」や、金、ドラッグ、セックス絡みのラッパーらしいリリックを放つ「Bronze」あたりも、ドス黒い。

 一方、イエバがボーカルを務めるインタールードの「Don’t Forget to Breathe」~今年2月に開催された【第61回グラミー賞】で、<最優秀R&Bアルバム賞>と<最優秀R&Bパフォーマンス賞>を受賞した女性シンガー、H.E.R.(ハー)とのコラボレーション「One Second」といったR&B寄りのトラックもある。イエバの透き通ったボーカルから、H.E.R.のソウルフルなフックに移行するこの2曲の流れは(個人的に)最高。レトロなソウル・ミュージックを再現した「Lessons」もいい曲。

 エド・シーランとアフリカ出身のラッパー、バーナ・ボイをフィーチャーした「Own It」は、3曲目のシングルとして先行リリースされ、UKチャートでは2位まで上昇し、R&Bチャート3曲目のNo.1獲得を果たしている。エド・シーランの色が濃く出たからか、前2曲とはまったくテイストの違うライト感覚のダンス・ポップに仕上がった。イギリスはじめ、ヨーロッパ方面でヒットしているのも納得。エド・シーランとは、彼が今夏リリースした『No.6 コラボレーションズ・プロジェクト』収録の「Take Me Back to London」で共演したり、前述の【ブリット・アワード】で「Shape of You」をコラボレーションしたりと親交も深いようで、アーティストとしても(相当)リスペクトしているとのこと。敬意を示してなのか、ミュージック・ビデオでは中央の赤い王座をエドに託している。

 アデルやクレイグ・デイヴィッド等の作品で知られる音楽プロデューサー、フレイジャー・T.スミスが手掛ける「Big Michael」や、今年「Taste (Make It Shake)」でブレイクしたマンチェスター出身の若手ラッパー、エイチが参加した「Pop Boy」等、2000年代初期のヒップホップを彷彿させるナンバーもあり、バラエティにも富んでいる。評価とレビューを集積するウェブサイトのメタクリティックでは85点とかなり高く、その他のメディア・サイトでも高評価を得ている。2作連続の<最優秀ブリティッシュ・アルバム>受賞も期待できるかもしれない。

Text: 本家 一成


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