西本智実 指揮 シュテファン大聖堂でのモーツァルト「レクイエム」K.626追悼演奏会 <公演レポート> 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

西本智実 指揮 シュテファン大聖堂でのモーツァルト「レクイエム」K.626追悼演奏会 <公演レポート>

このエントリーをはてなブックマークに追加
Billboard JAPAN
西本智実 指揮 シュテファン大聖堂でのモーツァルト「レクイエム」K.626追悼演奏会 <公演レポート>

西本智実 指揮 シュテファン大聖堂でのモーツァルト「レクイエム」K.626追悼演奏会 <公演レポート>


 全米、ヨーロッパ、ユーラシア、アジアの世界30ヵ国、そしてヴァチカン国際音楽祭からはイルミナートフィルとともに7年連続招聘され、サンピエトロ大聖堂から世界へメッセージを発信、世界を舞台に活躍する指揮者、西本智実。

 その西本が先ごろシュテファン大聖堂でモーツァルトの命日に行われた【モーツァルト命日追悼記念演奏会】を指揮、現地からのレポートが届いた。

 帰国後の12月には国内で、小柳ゆきとの共演(12/23東京文化会館)、クラシック・映画の名曲を堪能できる“聖夜に贈るロマンティックコンサート”(12/24紀尾井ホール)、また来年には藤井フミヤとのシンフォニック・コンサート(2020年1/25~3/8)が各地で予定されている。

 1791年12月5日ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトは、35歳の若さで亡くなった。命日にあたる2019年12月5日、葬儀の行われたウィーン・シュテファン大聖堂で、西本智実指揮モーツァルト追悼合唱団、シュテファン大聖堂オーケストラ及び現地のソリスト陣によるモーツァルト「レクイエム」K.626が演奏された。追悼演奏会は夜中の零時から始まり、モーツァルトが亡くなった時刻0:55に終演するという心憎い演出である。

 この日のウィーンの気温は1度。夜は零下にまで冷え込み、シュテファン広場には肌を突き刺すような風が吹きすさんでいた。しかし、大聖堂内に一歩入ると深夜にもかかわらずこの夜の演奏を楽しみに大勢の客が集まっており、この巨大な空間が温かい雰囲気に包まれているのに驚いた。大聖堂の中はクリスマスの飾りつけがされており、その質素な華やぎは、ウィーンの人々からこの大聖堂が『ウィーンの魂』と呼ばれるに相応しい品格を感じさせる。

 午前零時、黒い衣装に身を包んだモーツァルト追悼合唱団の皆さん150名と現地男声合唱団コーラス・ヴィエンネンシスのメンバーが厳かに入場し、中央祭壇前にしつらえられた舞台に並んだ姿は壮観だった。因みにコーラス・ヴィエンネンシスは元ウィーン少年合唱団の団員で構成されているという伝統ある団体である。合唱団の前には4人の独唱者と大聖堂オーケストラのメンバーが並ぶ。そして指揮の西本智実氏が颯爽と登場。

 第1曲目の「イントロイトゥス」、2曲目の「キリエ」と続いて、1時間近くかけて音楽の壮大なドラマが展開していく。西本氏の的確なテンポに導かれて、合唱団の柔らかな響きがゴシック様式の天井に響き渡る。この夜の独唱者は、コルネリア・ホラク(ソプラノ)、ヘルミネ・ハーゼルベック(メゾソプラノ)、ゲルノット・ハインリッヒ(テノール)、ヴォルフガング・バンクル(バス)と当地で活躍する宗教曲のベテラン音楽家たちが揃い、レクイエムを格調高く歌い上げた。コンサートホールとはまったく違う残響の長い教会という特別な場においても、数多くの国際的な大舞台を経験してきたマエストロ・西本の手腕が光る。レクイエムの最後の音の響きの余韻が、大聖堂の巨大な空間に吸い込まれて静寂が戻って来た時、満席の会場が静かな感動に満たされているのが伝わってきた。

 演奏終了後、モーツァルトの葬儀で実際に使用されたという2つの鈴を鳴らしながら、演奏者全員が聖職者と共に行ったプロセシオンと呼ばれる聖行列はとても印象的なものだった。その鈴の音は、じつに澄み切った美しい音色で、彼の生きていた時代にタイムスリップしたかのような気持ちにさせてくれた。このウィーンのシュテファン大聖堂ならではの歴史の重みを感じさせる荘厳な儀式は、モーツァルトの「レクイエム」の音楽と共に、この夜参列した人々の心に深く残ったに違いない。

 今年は、日本―オーストリア友好150周年にあたる。この記念の年にウィーン・シュテファン大聖堂での追悼演奏会が成功裏に終えられたことは素晴らしい文化の交流でもあったと思う。このモーツァルトの大曲を、長い時間をかけて準備をされてきたであろう合唱団の皆さんと指導者の方々、それを見事にまとめられ、モーツァルトの追悼演奏会を成功に導かれたマエストロ・西本に心から拍手を送りたい。

 なお、追悼演奏会の収益金は、シュテファン大聖堂修復費用とパイプオルガン設置費用へ全額寄付された。公演レポート:野村三郎(ウィーン在住・音楽社会学者)



◎公演情報
【billboard classics 20th Anniversary小柳ゆき×西本智実 Premium Christmas Concert 2019】
2019年12月23日(月)
東京・東京文化会館 大ホール

【聖夜に贈るロマンテックコンサート~クラシック・映画音楽 愛憎名曲コンサート~】
2019年12月24日(火)
紀尾井ホール

【billboard classics PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2020 藤井フミヤ meets 西本智実】
2020年1月25日(土)千葉・松戸・森のホール21大ホール
2020年2月05日(水)東京・東京芸術劇場 コンサートホール
2020年2月09 日(日)大阪・フェスティバルホール
2020年2月13 日(木)東京・Bunkamuraオーチャードホール
2020年3月03日(火)東京・東京芸術劇場 コンサートホール
2020年3月04日(水)東京・東京芸術劇場 コンサートホール
2020年3月08日(日)兵庫・兵庫県立芸術文化センター 大ホール


トップにもどる billboard記事一覧

続きを読む


おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事
あわせて読みたい あわせて読みたい