<ライブレポート>Saucy Dog、ライブバンドとしての進化を見せた初のZeppTokyoワンマン
<ライブレポート>Saucy Dog、ライブバンドとしての進化を見せた初のZeppTokyoワンマン

 Saucy Dogが、最新ミニアルバム『ブルーピリオド』を引っ提げた全国ツアー【いつだって今日がはじまりツアー】を開催した。

 初の東阪野音ワンマンや先輩バンドを招いたツーマンライブなど、数々の大舞台を経験し、一回りも二回りも成長してきた2019年のSaucy Dog。11月28日に行われたツアーファイナル=自身初となるZepp Tokyoワンマン公演は、そんなサウシーの進化をつぶさに感じられる内容となった。

 ライブは今年6月にリリースした「雀ノ欠伸」からスタート。今のバンドの勢いを体現するようなアグレッシブな演奏で、超満員のオーディエンスを迎え撃つ。元々取柄であったタフなアンサンブルは、全国12か所を回り切った影響もあってか、より強固にパワーアップ。「ナイトクロージング」「真昼の月」といったアップテンポのナンバーから、「Humming」「届かない」など『ブルーピリオド』収録のゆったりとしたナンバーまで、それぞれの曲が持つ世界観をていねいに表現していく。後のMCで石原慎也(Vo./Gt.)は「このツアーを通して、改めてメンバーがすごく好きだなって思いました」と語っていたが、メンバー間の結束が深まったことが、演奏にも如実に表れていたように思う。

 せとゆいか(Dr.)がキーボードに、秋澤和貴(Ba.)がギターに、石原がアコースティックギターに持ち替えたアコースティック・コーナーでは、『ブルーピリオド』のCD版にのみ収録されている「煙草とコーヒー」を披露。同曲でボーカルを務めるせとは「まさかこの曲をZeppでやるとは思わなかった」と照れ笑いをしながら、持ち前の柔らかな歌声で会場を優しく包み込んだ。

 そして、この日の個人的ハイライトとなったのが終盤戦。「みんなの手を引っ張っていけるような曲!」と足早に演奏された「ゴーストバスター」から「Tough」、「バンドワゴンに乗って」と疾走感のある曲が続くと、ステージから発せられるパワーに呼応するように、フロアの温度はぐんぐんと高まっていく。バンドのアンサンブルが丈夫になり、曲のメッセージが明確かつダイレクトに伝わるようになったことで、会場全体の一体感は加速度的に増幅。今までのSaucy Dogのライブでは感じたことがなかった“ロックバンドの興奮”が生まれたワンシーンだった。

 「こうやってZeppTokyoが埋まるくらいになれたのは、間違いなく今来てくれているあなたが応募してくれたおかげ。こうやって一人一人が時間を共有してくれて、たった2時間かもしれないけど、あなたの人生の一部になれた。僕らの音楽があなたの一部になっているということは、逆にあなたの一部も僕らの人生の一部になっているということ。そうやって考えると、自分たち繋がってるなって思える気がします」(石原)とこの日集まったオーディエンスに感謝の気持ちを伝え、本編ラストはサウシーなりのエールが詰まった「スタンド・バイ・ミー」をプレイ。これまでのツアーの道のりを思わせるエモーショナルな一曲で、本編は幕を閉じた。

 アンコールでは、「コンタクトケース」「いつか」とバンドの真骨頂であるバラードを連投。その後MCを入れるはずが、石原が勢い余って3曲目に突入するハプニングもありつつ、ラストは「グッバイ」でこの日のライブを締めくくった。「一つのライブをみんなで作るっていうのが僕たちのモットーなんですけど、それが最近芽吹き初めてきてるんじゃないかと思ってます」そんな石原の言葉を体現するように、曲が終わるころには2階席の一番後ろまでたくさんの手が上がっていた。今回のツアーを通してライブバンドとして一皮むけたサウシーなら、これから会場のキャパが大きくなっても、“届かない”なんて心配はいらないだろう。

 なおSaucy Dogは、来年3月より初のホールツアーを予定している。この日のMCではストリーミング・サービスで全曲配信スタートしたことに加え、武道館やアリーナの話題も出てきたが、今後多くの人にサウシーの楽曲が届くに連れ、ライブはどんな進化を遂げていくのか、これからにワクワクしたくなるような一夜だった。

◎公演情報
【Saucy Dog ブルーピリオド Release tour
「いつだって今日がはじまりツアー」】
2019年11月28日(木)
東京・Zepp Tokyo
<セットリスト>
01. 雀ノ欠伸
02. ナイトクロージング
03. 真昼の月
04. 曇りのち
05. Humming
06. Wake
07. メトロノウム
08. 月に住む君
09. 届かない
10. 煙草とコーヒー
11. 世界の果て
12. 煙
13. ゴーストバスター
14. Tough
15. バンドワゴンに乗って
16. スタンド・バイ・ミー
En1. コンタクトケース
En2. いつか
En3. グッバイ

Photo:白石達也
Text:Mika Fuchii