【かわさきジャズ2019】井上銘×奥田弦、初共演でスリリングなセッション 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

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【かわさきジャズ2019】井上銘×奥田弦、初共演でスリリングなセッション

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【かわさきジャズ2019】井上銘×奥田弦、初共演でスリリングなセッション

【かわさきジャズ2019】井上銘×奥田弦、初共演でスリリングなセッション


 神奈川県川崎市で9月から11月にかけて開催された【かわさきジャズ2019】の一環で、11月14日、ラゾーナ川崎プラザソルにて【Versatile JAZZ 井上銘×奥田弦】が行われた。  

 奥田弦は18歳の現役高校生ピアニストで、現在オンエア中のEテレ番組『ムジカ・ピッコリーノ』第5シーズンに「レオ役」として出演中。川崎在住の井上銘は28歳、新世代の超絶技巧ギタリストだ。2人は今回が初共演だが、2011年の【ジャズ・ジャパン・アワード】のニュー・スター部門で、ともに『アルバム・オブ・ザ・イヤー』を受賞している。  

 前半1曲目は、サム・ジョーンズの「Del sasser」。軽やかなジャズのリズムに乗せて、ピアノが楽しそうにバッキングを刻み、ギターが静かにメロディを奏でる。2曲目は「All The Things You Are」。しっとりしたギターのメロディから始まり、すべり込むように静かにピアノの伴奏が入る。曲が進むにつれて次第に奥田が本領発揮。グリッサンドやオクターブでのトレモロなどを使い、パワフルな演奏を聴かせる。  

 3曲目は、佐山雅弘が遊び心で「Take Five」と「Take the A Train」を組み合わせて編曲した「TAKE 5 A train」。奥田は昨年の【かわさきジャズ】で佐山と共演する予定だったが、その2日前に惜しくも佐山が死去。悼む形で、国府弘子、三舩優子とともに3台ピアノの演奏をしたそうだ。曲は、ダイナミックなピアノのイントロから始まり、「Take Five」と「Take the A Train」のメロディが自由に遊ぶように流れていく。足で小刻みにリズムを取る奥田は、演奏を心底楽しんでいるよう。そんな奥田とは対照的に、井上は目をつぶって自分の音楽に深く入り込む。  

 4曲目は「Old Folks」。しっとりとしたギターのイントロからムーディに始まる。井上のギターを支えに、奥田が自由に駆けめぐるようにピアノを弾く。前半の最後は、奥田のオリジナル曲「Get Over」。アグレッシブでエネルギッシュなピアノとギターの丁々発止の演奏に緊張感が走る。  

 休憩をはさんで、後半は奥田のソロ「My Favorite Song」からスタート。軽やかな3拍子の曲が、奥田にかかるとダイナミックでドラマティックな曲に様変わり。聴衆も一気に引き込まれ、演奏が終わると同時に歓声があがった。「この静かな曲をこんなふうに弾いてみたいと思って弾いてみたけど、みなさんにお気に召していただけたらうれしい」と演奏直後の息の上がった状態で奥田が述べ、井上を呼ぶ。「エモーショナルな曲だった。演奏とトークにすごくギャップがある」と感想を述べた井上に対し、奥田は「ソロステージだと、自分の視界が逆三角形みたいになって視点が定まらなくて不安定。井上さんがきてくれたので自分の視点が落ち着いた」と、ユニークな感想をもらした。  

 2曲目は、井上のオリジナル曲「The Lost Queen」。哀愁の漂うギターのイントロにピアノのバッキングが加わり、やがてメロディへとつながる。目を閉じて自分の音楽の世界へと没頭する井上に寄り添いながら、自由にピアノを演奏する奥田。お互いの呼吸を合わせ、絶妙なタイミングで曲が終わった。  

 3曲目は「イパネマの娘」。ゆったりとしたボサノヴァの、少しけだるい感じのリズムに体を揺らしたくなる。4曲目は、即興セッションにチャレンジ。それまで座っていた井上が立ち上がり、シンプルなメロディを奏で始めると、そのメロディに合わせてすっとコードを弾き、流れるようなメロディで応えていく奥田。次第に幻想的な雰囲気になり、ギターの弦をこするような奏法で、どこか遠くへ去っていくように音が消えていく。  

 5曲目は、井上のソロでヘンリー・マンシーニの「To For the Road」を演奏。エフェクトをかけてきしみ感を出したギターサウンドから始まり、柔らかでメランコリックなメロディへと続いた。  

 最後は、バド・パウエルの「Un Poco Loco」。ギターでの演奏は珍しいそうだが、「ギターで弾いてみるといろいろ新しい発見がある」と井上。小気味いいバッキングから始まり、ビートがピリッと効いたスパイシーな演奏。それまでは、リズムに乗って体を動かしながら弾く奥田に対し、比較的静かにギターを弾いていた井上だが、この曲では渾身の力を込めて速いパッセージをパワフルに弾く。曲のクライマックスから終盤にかけて白熱した演奏に、会場からは熱い拍手が送られた。  

 奥田と井上が舞台袖に退場すると、すぐにアンコールをリクエストする拍手に変わる。ステージに戻った2人は、アンコール曲に「酒とバラの日々」を演奏。ギターの軽やかなメロディに柔らかくからむようなピアノでしっとりとした雰囲気の中、ライブは終了。2人は握手を交わし、肩を組みながら聴衆にあいさつし、笑顔で舞台袖へと消えていった。お互いをリスペクトしながら、技を競いあうスリリングな演奏を展開する一方、MCではやんちゃな弟とやさしく見守る兄、まるで年の離れた仲良し兄弟のようにほほえましい雰囲気でトークをする奥田と井上。演奏もトークもとても初共演とは思えない、息の合ったセッションだった。 Text:河本美和子(かわさきジャズ公認レポーター)


◎公演情報 かわさきジャズ2019 【Versatile JAZZ 井上銘×奥田弦】
2019年11月14日(木)
ラゾーナ川崎プラザソル
セットリスト 第1部
1.Del sasser
2.All The Things You Are
3.TAKE 5 A train
4.Old Folks
5.Get Over
第2部
1.My Favorite Song
2.The Lost Queen
3.イパネマの娘
4.即興
5.To For the Road
6.Un Poco Loco -Encore- 酒とバラの日々


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