<コラム>マーク・アーモンド&トニー・ハドリー来日記念 ~2020年のUKニュー・ウェイヴ
<コラム>マーク・アーモンド&トニー・ハドリー来日記念 ~2020年のUKニュー・ウェイヴ

円熟味が加わった二人のライブ

 80年代に活躍したアーティストが昔のヒット曲を頼りに活動を続けているのは珍しいことではない。しかし、全盛期とはかけ離れた歌唱に何とも言えないやるせなさを覚え、自らの想い出が色褪せていくような寂しさを感じたことがある人も少なくないだろう。だが、ソフト・セルのマーク・アーモンドとスパンダー・バレエのトニー・ハドリーの名前を耳にして、ふたりもまた過去の栄光をひきずりながら活動を続けていると思ったら、それは大きな間違いだ。マークは約10年ぶり、トニーは約7年ぶりのビルボードライブでの公演が決定したが、再び日本でステージに立つことができる現役感がふたりには十分にある。共に80年代に所属したグループの音楽性が再評価され続ける中、当時の魅力と実力に円熟味が加わり、今がまさに旬だと言わんばかりのパフォーマンスを見せてくれるはずだ。

印象的だったソフト・セルのライブ

 まずマークは昨年9月にロンドンのO2アリーナで行なったソフト・セルのライヴが記憶に新しい。そのライヴのタイトルは「Say Hello, Wave Goodbye」。彼らが81年に発表したデビュー・アルバム『エロティック・キャバレー』のラストを飾る、グロリア・ジョーンズのカヴァー「汚れなき愛」(原題はTainted Love)と並ぶ、バンドの代表曲であり、ソフト・セルの活動終了を告げたそのライヴにもっともふさわしく、もちろんラストに歌われた。ソールドアウトとなった会場を埋め尽くした約2万人が大合唱し、スマホのライトを点けて掲げる感動的な光景を後にYouTubeで公開された映像で目にして、その場にいたかったと強く思ったが、今回のマークの来日決定で追体験できることになりそうだ。ソフト・セルの名曲はもちろん、マーク・アンド・ザ・マンバスやソロ時代まで、ナイン・インチ・ネイルズをはじめとする後進に今も影響を与え続ける彼の輝けるキャリアの代表曲をさらに妖艶になった歌声と共に振り返ることになるはず。

名曲「トゥルー」の現在進行形

 一方、トニー・ハドリーは2009年にスパンダー・バレエを再結成するものの、2017年に離脱。以降はソロとして活動しており、2018年には最新作となるアルバム『Talking to the Moon』をリリースし、全英トップ40圏内に送り込むヒットとなった。また、昨年10月にはロンドンの伝統あるヴェニュー、パラディアムでのライヴを成功させ、まさに脂が乗ったソロ活動を続けている。スパンダー・バレエはニュー・ロマンティックのムーヴメントに乗ってアイドル的な人気を得ていたが、全英3位のヒットとなった「チャント・No.1」をはじめ、そのサウンドはファンク~ソウルに根ざしたものであり、現在の耳で聴いてもそのグルーヴとポップネスは新鮮なままだ。そして、トニーの歌声もパワフルなまま、深いニュアンスも伴うようになった。名曲「True」は今の方がグッとくる。生で聴いた方はきっとそう思うはずだ。ライヴではスパンダー・バレエの楽曲を中心にソロ、カヴァーも聴かせる構成になるそうで、今のトニーがそれらの曲をどう歌い上げていくのかも楽しみでしかたがない。

 英国ニュー・ウェイヴ~ポップの黄金期を築き上げてきた2組が、2月に二週にわたってビルボードライブに登場するという、またとない機会。彼らのアーティストとしての本質に触れることができる夜になることだろう。

Text:油納将志

◎公演情報
【マーク・アーモンド】
2020年2月15日(土)
ビルボードライブ東京
1stステージ 開場15:30 開演16:30
2ndステージ 開場18:30 開演19:30

2020年2月17日(月)
ビルボードライブ大阪
1stステージ 開場17:30 開演18:30
2ndステージ 開場20:30 開演21:30

【トニー・ハドリー ex. スパンダー・バレエ
plays Greatest Hits and more】
2020年2月21日(金)
ビルボードライブ大阪
1stステージ 開場17:30 開演18:30
2ndステージ 開場20:30 開演21:30

2020年2月23日(日)
ビルボードライブ東京
1stステージ 開場15:30 開演16:30
2ndステージ 開場18:30 開演19:30