<コラム>ベベウ・ジルベルトが歩んできた「伝統と現代」 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

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<コラム>ベベウ・ジルベルトが歩んできた「伝統と現代」

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<コラム>ベベウ・ジルベルトが歩んできた「伝統と現代」

<コラム>ベベウ・ジルベルトが歩んできた「伝統と現代」

ブラジル音楽のサラブレッド

 オーガニックかつシルキーなサウンドに乗せて聞こえてくる、おだやかで憂いのある歌声。ベベウ・ジルベルトはボサノヴァを新しい切り口で表現するシンガー・ソングライターだ。彼女の名を知らしめた傑作『Tanto Tempo』(2000年)から早くも20年経とうとしているが、その瑞々しいイメージは変わらない。それどころか、彼女の歌はますます深みを増している。

 ベベウは御存知の通り、いわゆるサラブレッドである。父親はボサノヴァの神様と讃えられ、ブラジルのポピュラー音楽史における最重要人物のジョアン・ジルベルト。母もボサノヴァやサンバの歌い手として著名なミウシャだ。1966年にビッグスター2人の間に授かった娘は、父のギターを子守唄に育った。そんな環境にいれば、音楽の道に進むのは自然だろう。

 ニューヨーク生まれのベベウは10代になる前からその才能を現し、両親のレコーディングやステージで度々歌うこともあった。14歳でリオ・デ・ジャネイロに移り、ブラジル人としてのリズム感とアイデンティティーを身体に刻み込んだが、20代半ばで再びニューヨークへ移住。コスモポリタンならではのセンスと人脈を広げながら、音楽活動を行う。

 ソロ名義のかたわら、1996年にはエイズ・チャリティー企画の『Red Hot + Rio』に参加。テイ・トウワやデヴィッド・バーンのアルバムでも客演しているが、本格的にその声が世に広まるまでは、2000年まで待たなければならなかった。

ボサノヴァに吹きこんだ新たな生命 

 21世紀の幕開けに発表されたアルバム『Tanto Tempo』は、あらゆる意味でエポックメイキングな作品だ。というのも、半世紀前の父の世代が生み出し、すでにブラジルでは懐メロ扱いでしかなかったボサノヴァに新たな生命を吹き込んだからだ。ガット・ギターの爪弾きやパーカッションが刻むリズムなどの質感はそのままに、プログラミングで抑制されたサウンドを施し、たゆたうような世界観でリスナーを魅了した。

 早逝したエレクトロニカ・シーンの天才、スバや、今となってはインタラクティヴなパフォーマンスで世界的に名高いアモン・トビンなど、気鋭のブラジル人クリエイターを起用したのも斬新だったし、オリジナルからスタンダードまでを新鮮に歌いこなすベベウの歌声が見事だった。結果、米国ビルボードのワールド・アルバム・チャートで2位を記録し、世界中で100万枚以上のセールスを上げるヒット作となった。

「本格」と新鮮さが同居する21世紀へ

 ただ、この路線だと単に流行りモノで終わる可能性が高い。しかし2004年に発表した『Bebel Gilberto』で、そんな不安を払拭するかのごとく、本格派ヴォーカリストとしてのスタイルを築くことに成功する。カルリーニョス・ブラウン、ジョアン・ドナート、そして母親ミウシャの客演や、ムタンチスの名曲「Baby」をセレクトするなど話題性も高いが、なによりも落ち着いた歌声でていねいに歌うヴォーカリストとしての資質が前面に押し出されていた。その後、『Momento』(2007年)、『All In One』(2009年)、『Tudo』(2014年)と定期的に力作を発表するが、どれをとっても彼女のオーガニックな歌声を堪能できる作品ばかり。ずっと良質で新感覚のボサノヴァを歌い続けている。

 もちろんライブにおいてもベベウ・ジルベルトの魅力は変わらない。[ビルボードライブ]に登場するのは2008年以来12年ぶりとなり、しかも父であるジョアンの名盤『声とギター』へのトリビュートかと思ってしまうようなギターとのデュオ編成だ。成熟した彼女の歌がどのように響くのか。ぜひ間近で体感していただきたい。

Text:栗本 斉


◎公演情報
【ベベウ・ジルベルト】
<ビルボードライブ東京>
2020年1月27日(月)、1月28日(火)
1stステージ開場17:30/開演18:30
2ndステージ開場20:30/開演21:30
<ビルボードライブ大阪>
2020年1月30日(木)
1stステージ開場17:30/開演18:30
2ndステージ開場20:30/開演21:30


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