<ライブレポート>IDLES、愛と狂気とパンクに溢れた新たな伝説の1ページを作ったUSツアー最終公演 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

<ライブレポート>IDLES、愛と狂気とパンクに溢れた新たな伝説の1ページを作ったUSツアー最終公演

このエントリーをはてなブックマークに追加
Billboard JAPAN
<ライブレポート>IDLES、愛と狂気とパンクに溢れた新たな伝説の1ページを作ったUSツアー最終公演

<ライブレポート>IDLES、愛と狂気とパンクに溢れた新たな伝説の1ページを作ったUSツアー最終公演


 2018年にリリースしたセカンド・アルバム『Joy As An Act Of Resistance』が主要音楽メディアで絶賛され、現在、長期間のワールドツアーを行っている英ブリストル出身のパンクバンド、IDELSの全米ツアーの最終公演が、現地時間10月17日にニューヨークで行われた。ここではそのレポートをお届けする。
その他ライブ画像

 IDELSは、政治的な歌詞やステージでのメッセージ性の強さから、今や世界で絶大な人気を得ている。メンバーは、リードボーカルでリーダー的存在のジョー、いつも半裸リードギターのマーク、強面プロレスラー・武藤敬司似のベースのアダム、ナードで天才的なドラムテクを持つジョン、そしてイケメン担当でリズムギターのリーの5人組だ。会場はマンハッタンのミッドタウンにあるターミナル5。ここは、かつてLCDサウンドシステムが解散前の公演や、ザ・フレーミング・リップスがテーム・インパラを前座に従えオノ・ヨーコをゲストに迎えた公演など、数々の伝説的ライブが行われた老舗ヴェニューだ。

 IDLESのUS最終公演が発表されるや否やチケットは速攻ソールドアウト。追加公演も当日券も出ない超プレミアとなった。会場前には早くから最前列を狙う観客が列を成し、アメリカでは異例の前座のバンドから大入り。前座が終わりステージチェンジの時から、最前のバリケードが倒れそうなくらいの押し問答で、セキュリティの異例の人数の多さから、これから始まるカオスを容易に想像できる。観客の一人がゴリラのような雄叫びをあげると“We want IDELS”コールが始まり、会場全体が割れんばかりの完成である(ショウはまだ始まっていない)。

 メンバーが登場し、ドラムのジョンの静かなスティックに、ジョーのスモーキーボイスで妖しく呻くように歌唱するボーカリズムで、「Colossus」からライブは始まった。アンダーウェアのみのリードギターのマークは、ステージを右往左往し、ギターのヘッドを観客に向け煽りまくる。「Never Fight a Man With a Perm」では、リーのギターが始まると、観客のモッシュ&ダイブが始まり、ジョンのドラムの切り裂くような、攻撃的だが一寸の狂いもない非常に緻密なパワープレイが炸裂。そしてベースのアダムのリズム隊が混沌の渦の中で協和を保ちながら、そのまま「Heel / Heal」に突入し、会場の床が揺れる。

 ヒットチューンの「I'm Scum」では、ジョーがフロアの真ん中を開けろと指示。フロアが真っ二つに分かれウズウズしている観客にジョーは「まだ待て。待てよ。お互いを愛そうな。隣人を愛すんだ。そうだ。ヨシ! 今だ!」と叫ぶと、二つに割れた観客たちが一斉にぶつかり合う。そこへ、イケメン担当のリーがギターを持ったままその波へ突っ込みクラウドサーフし、マークはステージで転げ回る。

 暴力的でありながら怪しく観客の心を鷲掴みにするジョーは、この日、LGBTQの人を絶対的に支持するメッセージや観客にもそれを求めたり、イギリスとアメリカの健康保険についてやファシズム、移民問題に触れ、アメリカのトランプ政権についても異を唱えたりした。「お前らのことをかわいそうに思うよ。1秒でも早く状況が良くなることを祈る」、そして始終、“汝の隣人を愛せよ”的なメッセージを投げかける。それまで政治的なものに一切興味がない人でも、彼らのライブに行けば、それまでの価値観がガラリと変わり、ジョーを絶対的に支持するようになるパラダイムシフトを経験するだろう。ジョーは現代の革命家で指導者なのだ。

 その後、誕生日の観客をステージに上げて祝ったり、別の観客がステージに乱入したり、酒や水がぶっぱなされまくったりするのは当たり前で、靴やジャケットや何でも飛び交う。本気のぶつかり合い、何度もクラウドサーフしまくり人々。この日何人がけがしただろうか? それでも彼らは笑顔に満ち溢れている。

 アンコールは前座のPreoccupationsと一緒に「Rottweiler」をプレイ。Preoccupationsのドラマーがジョンの超絶プレイにスネアで応戦。両者による激しいドラムの打ち合いが繰り広げられるなか、ボーカルのジョーが1スティックで参戦。「ボーカルどうした?」と思っていると、リーが観客の一人をステージに上げ、自らのマイクを渡してボーカル交代し、そのリーは2度目のダイブ。それに続けてマークもギターを宙に思いっきり高くぶん投げ、ダッシュでダイブする。それまで始終、冷静沈着を見せていたリズム隊のベースのアダムもPreoccupationsのベーシストとアンプ前で激しいセッションを繰り広げた。言わずもがなフロアは巨大洗濯機の渦どころか、カオスという言葉だけでは足らないほどの大カオスとなった。ジョーは何度もNYの観客に感謝の意を唱え、ステージを降りた。その後メンバーもステージからはけると、会場にはマークの真っ二つにぶっ壊れたギターのノイズと観客の大歓声がこだまし続ける。誰もが笑顔で何かと成し遂げた表情をしている。それまでの世界の不安や焦躁が消え去り、そこだけが愛に満ち溢れた別世界の空間となっていた。1時間半のステージはまさに彼らの革命をまざまざと見せつけられた。


Text & photos by ERINA UEMURA

◎2019年10月17日公演 セットリスト
1. Colossus
2. Never Fight a Man With a Perm
3. Heel / Heal
4. I'm Scum
5. 1049 Gotho
6. Divide and Conquer
7. Mother
8. Faith in the City
9. Love Song
10. Date Night
11. Television
12. Samaritans
13. Benzocaine
14. Cry to Me (Solomon Burke cover)
15. Danny Nedelko
16. Rottweiler (with Preoccupations)


トップにもどる billboard記事一覧

続きを読む


おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事
あわせて読みたい あわせて読みたい