SUPER★DRAGON、日比谷野外大音楽堂ワンマンライブで完全燃焼
SUPER★DRAGON、日比谷野外大音楽堂ワンマンライブで完全燃焼

平均年齢17歳。ネクストブレイク必至の呼び声も高い9人組ミクスチャーユニット・SUPER★DRAGONが、9月7日に日比谷野外大音楽堂でワンマンライブ『IDENTITY NINE』を開催した。8月14日にリリースされ、オリコンウィークリーチャートで2位を獲得した最新アルバム『3rd Identity』を引っ提げての本公演は、チケットが即日完売したため8月に大阪城音楽堂で追加公演も行われるなど、まさしく昇り龍のごとき勢いを見せる彼ら。“アイデンティティ”をテーマに、9人それぞれがコンセプトプロデュース&ソロMVを撮影した9曲+リード曲の完全新曲10曲を収めたアルバムに則って、9つの個性を次々に舞台上で具現化する趣向の凝らされた濃厚なステージを展開。終演時に古川毅が告げた通り、3000人のオーディエンスと共に最高の夏の思い出を作ってみせた。

馬の鳴き声と蹄の音が響きわたり、名画『夕陽のガンマン』を思わせるBGMに乗って、マントに銃を携えたメンバーが一人ずつステージへ。ウエスタンなオープニングで観る者のハートを撃ち抜くことを予告すると、マントを脱ぎ捨てスモークが噴き上がると同時に「日比谷盛り上がっていこうぜ!」と田中洸希が気勢を上げて、ライブ人気の高いヘヴィロック「Mada’ Mada’」でライブの幕は開いた。ジャン海渡、田中洸希、松村和哉が放つパワフルかつ鋭利なラップと、古川毅、池田彪馬によるしなやかなボーカルワーク、さらに志村玲於が宙を飛ぶ豪快なフォーメーションダンスで、場内のテンションば瞬く間に頂点に。“まだまだイケるぜ”と池田が歌いかければ客席が“SUPER★DRAGON!”と返すコール&レスポンスで狼煙をあげ、初期曲「hide-and-seek」に半年前に発表された前作アルバムのリード曲「WARNING」と時代を跨ぎながら、成長の軌跡を描いてゆく。

そして“自分が自分であるという確固たるもの=アイデンティティ”を証明する9つの物語が始まる――というジャンの英語アナウンスからは、アルバム『3rd Identity』のナンバー10曲をノンストップでお披露目。その火蓋を切ったのは松村和哉プロデュースの「La Vida Loca」だ。ピンク色のライトに染まるステージで、MVと同じジャケットを羽織り檀上に一人飛び出した彼のラップから、エキゾチックなビートに乗せて“己との闘い”という曲の主題を全身全霊で表現。松村の持ち味そのままにアングラな男らしさを漂わせるパフォーマンスに加え、古川、池田の両ボーカリストによるハイトーンが天を貫いてトドメを刺す。

全身白の衣装に身を包んだメンバーのなか、各曲ともにプロデュース主が異なる装いで檀上に現れ、楽曲をリードしていくことで各自のアイデンティティをより明確に訴える仕掛けも見事。飯島颯は壇上にジャンプアップして「Dragonfly」を投下し、仲間との絆を大事にする彼らしく、全英詞のナンバーでタオルを振りたくって、会場との熱い一体感を繰り広げていく。続いて意味ありげな足音からは、古川毅作詞の「My Playlist」へ。彼でなければ着こなせないような派手なシャツとグラサン姿でキメて、レコード盤を手に恋人との関係をプレイリストで再確認しようとする男の心情を、志村と飯島によるダイナミックなアクロバットの合体技も交えながらオシャレな音使いで描き出していった。

また、あえてメンバー全員が登場しないことで楽曲の世界を引き立たせる演出を取れるのも、9人組である彼らの強み。オレンジ色のジャケットを羽織った田中洸希のエモーショナルな歌声から始まった「Jacket」では、ボーカル&ラッパーの5人がジャケットの襟を掴んで裾をはためかせ、それぞれの“Jacket”を着せたトルソーに絡む悩ましいアクションで客席に悲鳴を湧かせる。自己の弱さを出発点に妖艶な世界を創れるのも田中ならではの個性だろう。また、半月が浮かぶ空の下で近づく夜の足音のなか、ゴシックファッションを纏って薔薇の花束を持った柴崎楽が檀上を進み、MVの世界を忠実に再現したのが「Remedy For Love」だ。古川と池田が切ない歌声を響かせ、白いドレスの女性ダンサーが狂おしく舞うステージをただ歩き、ただ座り、ただ宙に視線を投げるだけでサマになってしまうのは、持って生まれた彼のカリスマ性ゆえ。彼が薔薇を差し出した先で女性ダンサーが消えるエンディングも実にドラマティックで、愛を失った彼の美神のごときオーラに会場中が息を呑み、この日初めての拍手が湧いた。

そして雨が上がれば、「雨ノチ晴レ」が場内の空気を一変。“聴く人をハッピーにしたい”という伊藤壮吾の明朗なキャラそのままの明るいサウンドに、9人全員が壇上に並んで腰掛け、志村、飯島、柴崎に肩車された伊藤にボーカル陣からは「カッコいい!」の声があがる。そこから電車ごっこの隊形へと入り、ラップパートでは9人が重なって龍の顔を象る場面も。これまた電車オタクの彼にしかできないパフォーマンス……かと思えば、今度は男性ダンサーの中に自称“中二病”のジャン海渡がポップアップ。田中&松村と共にラッパー3人だけで贈った「New Game」で、ダンサー陣とシンクロしてのアニメーションダンスを披露し、三次元から二次元への絶望的な逃避を踊り表すのだから、改めてメンバーのキャラクターの濃さに感嘆させられる。さらにアラビアンなBGMからメンバーがステージに散らばるなか、豪奢な椅子に腰掛けたまま池田彪馬が壇上にせり上がると、場内には大歓声が!
「PANDORA」の歌い出しを担当するジャンと田中を従え、得意のハイトーンやファルセットを駆使して、恋の駆け引きをセクシーに謳い上げる様は、まさにキング。開けてはならないパンドラの箱を開けても、欲したものを奪うと決めた男の色気を振りまいて、ファンの期待に見事に応えた。

大トリを飾ったのは、最年長のダンスリーダーである志村玲於。檀上にポップアップして大きなドラを打ち鳴らして「Strike Up The Band」をスタートさせ、彼らしいタフなリズムとスモークが弾けるなかでオーディエンスと大合唱を繰り広げる。ワイルドなビートで音に乗り、音に溺れ、再び彼がドラを鳴らして9つの物語の幕を閉じると、「9つの世界が一つに交わるとき、新しい力が生まれる」というジャンの英語アナウンスから、アルバムリード曲の「Don’t Let Me Down」へ。白から鮮やかなピンクの衣装に着替え、色づいた9人が贈る抑揚おさえたエレクトロなナンバーは、若さの勢いで突っ走ってきたこれまでとは違う、まさしく“新しい力”だ。抽象的な表現ながら、自分の存在意義を問いかける9人の真摯なパフォーマンスに客席はジッと見入り、曲が終わると満場の拍手が。「皆さん心は熱くなってますか?」という古川の問いかけは、実に的を射たものだったろう。

セミの声に野外ワンマンを実感しつつ、客席を「右! 左!」と二分して煽り雪崩れ込んだ「LRL -Left Right Left-」では、爪を立てる振りで野性味を露わにし、赤いライトが目を焼く「Untouchable MAX」では田中のヒューマンビートボックス、古川の渾身のボーカルにスモークが噴出してテンションもMAXに。そして15歳から20歳というメンバーの年齢上、日々さまざまな出来事に直面する中で、日常やグループ活動の切り替えの難しさを語りながらも、古川は「それでも結成してから変わらず本当に楽しくやってこれているのは、間違いなくここに来てくれてるみんなのおかげ。どこに行ってもSUPER★DRAGONは僕たちにとって譲れないものなんです」とキッパリ宣言してくれた。本編を締めくくった「BROTHERHOOD」は、その言葉をそのまま落とし込んだかのようなナンバーで、古川は客席に向かって“この場所に今いれるのは……お前らがいたからだよ!”と歌い替え。仲間との絆を歌った楽曲だけに、田中とラップをかけ合いながらジャンが彼の肩を抱き寄せる場面もあった。そんな二人のビートボックスバトルに乗せ、メンバーが次々に左右対称で踊り出すフォーメーションも実に息の合ったもので、文字通り絆の強さをうかがわせる。そして去り際には「最高の景色をありがとう! これからも良い夢一緒に見ていきましょう」(古川)と約束して、感動のうちにスペシャルなワンマンの幕を閉じた。

アンコールでは初期からの鉄板曲ながら、実は歌詞に“Don’t Let Me Down”のワードを持つ予言めいた「PAYAPAYA」に、年齢相応の少年らしさが弾ける「SHOPPING TIME」で、作り込まれた本編とはまるで違う等身大の姿を披露。MCではステージに乱入したカマキリに大騒ぎしたりと、このギャップが今の彼らにとっては、たまらない魅力でもある。また、CDデビュー3周年となる11月16日に、記念イベント『DRA FES 2019』を豊洲PITで行うこともこの場で発表。毎回、通常のライブでは絶対に観られない企画がテンコ盛りの『DRA FES』だけに、場内にはドッと喜びの声が湧いた。さらに年上メンバー4人によるファイヤードラゴン、年下5人によるサンダードラゴン、そしてSUPER★DRAGONの3ユニットが10月より全国5大都市を回るライブハウスツアー『TRIANGLE』を経て、ファイヤードラゴン&サンダードラゴンが2週連続でミニアルバムを発売することも告知。つまり『TRIANGLE』ツアーでは新曲もたっぷり堪能できるということで、本体のSUPER★DRAGONのみならず、グループ内ユニットとしての成長も期待できそうだ。

組み合わせを変え、スタイルを変え、ジャンルを変え、多彩な角度からオーディエンスを魅了する彼らのポテンシャルは、これからも天井知らずの勢いで発揮されてゆくことだろう。

◎セットリスト
01.Mada’ Mada’
02.hide-and-seek
03.WARNING
04.La Vida Loca
05.Dragonfly
06.My Playlist 07.Jacket
08.Remedy For Love
09.雨ノチ晴レ
10.New Game
11.PANDORA
12.Strike Up The Band
13.Don’t Let Me Down
14.LRL-Left Right Left-
15.Untochable MAX
16.BROTHERHOOD
アンコール
01.PAYAPAYA
02.SHOPPING TIME

TEXT BY 清水素子
PHOTO BY 笹森健一、小坂茂雄