『ライオン・キング』ビヨンセ参加で、よりリアルで強力なメッセージを発信 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

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『ライオン・キング』ビヨンセ参加で、よりリアルで強力なメッセージを発信

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『ライオン・キング』ビヨンセ参加で、よりリアルで強力なメッセージを発信

『ライオン・キング』ビヨンセ参加で、よりリアルで強力なメッセージを発信


 超実写版『ライオン・キング』が大ヒット公開中だ。世界最高傑作を呼ばれる1994年のアニメーション版をはるかに超える圧倒的な映像美と、パワーアップした音楽、そして現代の世相を反映させた新たなシーンが盛り込まれたこの最新作は、オープニングから瞬時に観る者をその世界観に引き込ませる。

 主人公シンバ役にドナルド・グローヴァー、そしてその親友ナラ役にビヨンセという今の音楽シーンに欠かせないアーティストが参加しているが、アフリカン・アメリカンのルーツを誇りにし、米国のみならず全世界に向けて鋭いメッセージを放つ両者(特にビヨンセ)の参加により、この作品のテーマ=サークル・オブ・ライフ<誰もがこの世界に生きる誰かを支えている。だからこそ、この世に生きる意味がない人なんていない>というメッセージが、アニメーション版よりも色濃く出ているように思える。両者がキャスティングされた背景には、その歌唱力や演技力はもちろんのこと、銃乱射や人種差別、暴力を訴えてきた、二人の近年の音楽作品に対する評価の高さも関係しているのではないだろうか。リアルに、そして真摯に音楽に取り組んできた二人もまた親であるため、二人にとっても、この作品を通して、自身の子供たちや将来を担う若者に自分たちの口でメッセージを伝える絶好の場でもあったのかもしれない。

 さらに、シンバを中心に物事が進んでいたアニメーション版とは違い、本作にはナラをはじめとする雌ライオンたちが声を上げ、危険にも果敢に挑むシーンが加わっているのだが、まさにこれこそ、ビヨンセの起用が大きな意味を持つポイントだ。独立した女性の鏡であるビヨンセが参加していることで、自分の大切なものは自分の手で守るという信念の大きさは性別関係なく、みな同じであり、物事の決定的瞬間に女性が蚊帳の外にいるのは論外というメッセージが前面に打ち出された。老若男女から愛されるこの作品でこの風潮がきちんと描かれているところは評価すべきポイントだ。

 エルトン・ジョンが作曲家ティム・ライスと手掛けたアニメーション版のオリジナル・サウンドトラックは、ディズニー作品及び世界のアニメーション作品のサウンドトラックの中で最も多く売れたCDアルバムとして、音楽史にその名を残している。オープニングを飾る「サークル・オブ・ライフ」が流れた瞬間から、フルCGとは思えないその映像の美しさに感服することだろう。また、シンバとナラのデュエット「愛を感じて」では、過去を知られるのを恐れているシンバと、強い意志を持ったナラの個性がしっかりと歌声で表現されている。ビヨンセはエルトン・ジョンが手掛けたサウンドトラックとは別に、本作からインスパイアされたインスパイアード・アルバム『ライオン・キング:ザ・ギフト』を発表しており、すでに聴いた方も多いかと思うが、こちらにはビヨンセ、ドナルド・グローヴァー、ケンドリック・ラマー、ジェイ・Zなどが参加している。ビヨンセのアフリカン・ミュージックへの敬意と、アフリカへの愛が込められたこのアルバムを映画の鑑賞後に再度聴くと、よりそれらの楽曲を深く理解することが出来るので、ぜひその感動を味わってもらいたい。

 そしてこのアルバム・リリースに合わせて発表されたのが、本作にも登場するビヨンセの新曲「スピリット」だ。偉大な父ムファサから「己を思い出せ」という声を聞いて、自分の進むべき道を確信したシンバがサバンナを駆け抜けるシーンでこの曲が流れるのだが、そのシーンにリンクする<空が開いていく/祖先の声を聞け>という歌詞が胸にしみる。

 母となり、そして長年、第一線で歌い続けてきたことにより、歌声と表現力に深みと力強さが増大したビヨンセの「スピリット」と打って変わり、エンドクレジットで流れるエルトン・ジョンの新曲「ネバー・トゥー・レイト」は、アップテンポのポップで明るい曲調で、こちらもシンバの背中を押すポジティブな楽曲に仕上がっている。また、劇中歌の5曲(「王様になるのが待ちきれない」「ハクナ・マタタ」「ライオンは寝ている」「愛を感じて」「ムブーベ」)には、ファレル・ウィリアムスがプロデュース参加。ファレルが『怪盗グルーのミニオン大脱走』の主題歌「ハッピー」で証明したように、幸福感溢れるこれらの楽曲は、アニメーション版よりも奥行きや音のバリエーションが増えている。

 視界いっぱいに広がるサバンナの大地と、瞳孔や風になびく毛の一本一本までリアルに描いたその映像美、そして登場人物たちを通して伝わる命のつながりの大切さを、素晴らしいキャストによって生まれ変わった音楽とともに、ぜひ劇場で確認して欲しい。

Text by Mariko Ikitake


◎公開情報
『ライオン・キング』
全国公開中
監督:ジョン・ファヴロー
声の出演:ドナルド・グローヴァー、ビヨンセほか
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(C)2019 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.


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