<ライブレポート>Saucy Dog、一歩前に進むためのツーマンツアーが終焉 SUPER BEAVERを迎えた東京公演の模様をレポート
<ライブレポート>Saucy Dog、一歩前に進むためのツーマンツアーが終焉 SUPER BEAVERを迎えた東京公演の模様をレポート

 Saucy Dogのツーマンツアー【One-Step Tour】東京公演が、7月25日Zepp DiverCityにて開催された。

 『一歩も二歩も先を行く先輩バンドを呼び、必死に食らいつくことで自分達もワンステップ成長したい』という気持ちが込められた今回のツーマンツアー。大阪公演に04 Limited Sazabys、名古屋公演にクリープハイプを迎え、ファイナルとなる東京公演には、SUPER BEAVERが出演した。バンドのスタイルこそ異なるSaucy DogとSUPER BEAVERだが、フロアにいる一人一人に思いを伝えようとする真摯な姿勢は同じ。先輩後輩というよりも同志のような、互いにリスペクトし合い、高め合える関係であることが伝わってくる一夜だった。

 先攻はSUPER BEAVER。オープニング・ナンバー「27」「歓びの明日に」から、切れ味の鋭い演奏でオーディエンスの体をぶち抜いていく。渋谷龍太(Vo.)が「持ってるものすべてさらけ出して!」「これはあなたの歌です!」「後ろまで見えてるからな!」と、まくし立てるように言葉を投げかけると、それに応えるようにオーディエンスも声を張り上げ、手を伸ばし、フロアは瞬く間に拳でいっぱいになった。

 MCでは、Saucy Dogの石原慎也(Vo./Gt.)とせとゆいか(Dr./Cho.)と食事に行った時のエピソードを明かしながら、「その時、慎也君が『俺ね、バチバチにやりたいんですよ』って言ったんです。受けて立つ!」と宣戦布告。「(Saucy Dogは)俺達のこと踏み台にして、二段階三段階いいライブしてくれると思う。俺達のステージが最高なら、超最高なもん見せてくれると思うんで、一緒に最高のステージ作ろうぜ!」とさらにフロアを焚きつけ、「青い春」「閃光」を続けて投下。柳沢亮太(Gt.)と上杉研太(Ba.)がステージのギリギリまで身を乗り出しフロアを煽ると、地鳴りが巻き起こるほどの盛り上がりを見せた。

 「アイツらの曲には力があります。グッとくるよね。それは嘘がないからだと思います」とSaucy Dogを称賛し、エモーショナルに「シアワセ」を歌い上げると、ライブはいよいよ佳境を迎える。ラストソング「予感」では、大きなバウンスとシンガロングを巻き起こし、大盛況のなかフィナーレを飾った。その光景はまるで、ステージとフロアが一丸となって、Saucy Dogを鼓舞しているようだった。

 軽いインタールードを挟み、後攻のSaucy Dogが登場。1曲目「真昼の月」から、「バチバチにやりたい」という宣言通り、3人とも全身を大きく使いながらオーディエンスの高揚を煽っていく。その気合は音楽にも現れており、石原は要所要所で強く声を張り、リズム隊の秋澤和貴(Ba./Cho.)とせとも、いつにも増したドライブ感で攻めていく。しかし、力んだ様子は一切なく、リラックスした表情の3人。より自由に逞しくなったアンサンブルが、このツアーで彼らが手に入れたものの大きさを物語っていた。

 「今日ここにきてくれてるみんなと私たちが最高に楽しい時間を一緒に過ごすのが一番だと思いますので、最後まで楽しんでくれたらと思ってます!」せとの挨拶が終わると、印象的な歌入りから始まる「煙」がスタート。続けて、石原の伸びやかなハイトーンが映える「メトロノウム」など4曲をノンストップで駆け抜ける。<徒然なるトリビュート>のために書き下ろした最新曲「雀ノ欠伸」では、ラップ風のヴァースも披露。次々に入れ替わる曲調や入り組んだコーラスワークが、バンドの力量を感じさせた。

 終盤に差し掛かり、ここでSaucy Dogの真骨頂とも言えるバラード「コンタクトケース」「いつか」を連投。情景がありありと目に浮かぶような歌詞と、歌を抜群に引き立てる各楽器のフレーズが、オーディエンスをみるみる内に曲の世界へと引きずり込んでいく。「コンタクトケース」と「いつか」が続けて演奏されることは珍しくないが、この日は他の曲がパワフルに演奏されたおかげか、この2曲の持ち味が特に際立っていたように思う。このふり幅の大きさは、共通点も相違点も多い先輩バンド達との対バンを経て得た“サウシー流の戦い方”を象徴しているようなワンシーンだった。

 「今日はバチバチにやりたいと思ってここに来たけど、今ここでライブしてみんなの表情見たりしてると、改めてここにいる一人一人に伝えるような歌を歌いたいなと思いました。今までも一人一人に伝えようと思っていたけど、ちょっと独りよがりになってたり、焦ってしまったり、自分の本心を出せてなかったのかもしれないなと思っていて。でも今、こうやって僕らを観に2、3000人集まってくれて、応援してくれて、ついてきてくれて、夢みたいです。音楽できて幸せだなと思ってます」とオーディエンスへ感謝を告げる石原。その思いは、ラストソング「グッバイ」のラスサビ直前、いつもは上に挙げていた手を、この日は客席に向けて伸ばしていたことにも表れていた。今回のツーマンツアーを通し、バンドがワンステップもツーステップも前に進んだことは間違いない。胸を張ってそう言えるステージだった。

 Saucy Dogは今後、夏フェスシーズンを挟み、10月には新ミニアルバム『ブルーピリオド』をリリース。同作を提げたワンマンツアー【いつだって今日がはじまりツアー】をスタートする。

Photo:青木カズロー(SUPER BEAVER)/白石達也(Saucy Dog)
Text:Mika Fuchii

◎公演情報
【One-Step Tour】
2019年7月25日(木)
東京・Zepp DiverCity
<Saucy Dogセットリスト>
01.真昼の月
02.ナイトクロージング
03.ゴーストバスター
04.煙
05.Wake
06.メトロノウム
07.マザーロード
08.雀ノ欠伸
09.バンドワゴンに乗って
10.コンタクトケース
11.いつか
12.グッバイ

◎リリース情報
ミニアルバム『ブルーピリオド』
2019/10/2 RELEASE
AZCS-1085 1,800円(tax out.)

◎ツアー情報
【いつだって今日がはじまりツアー】
2019年10月18日(金) 北海道・札幌ペニーレーン24
2019年10月19日(土) 北海道・札幌ペニーレーン24
2019年10月25日(金) 宮城・仙台Rensa
2019年11月07日(金) 福島・郡山#9
2019年11月09日(土) 新潟・NEXS NIIGATA
2019年11月10日(日) 長野・長野CLUB JUNK BOX
2019年11月14日(木) 福岡・福岡イムズホール
2019年11月16日(土) 香川・高松MONSTER
2019年11月17日(日) 広島・広島CLUB QUATTRO
2019年11月22日(金) 大阪・なんばHatch
2019年11月23日(土) 愛知・名古屋ダイアモンドホール
2019年11月28日(木) 東京・Zepp TOKYO<TOUR FINAL>