<ライブレポート>KIRINJIが毎年恒例のビルボード公演を開催、もう一つの夏を届ける
<ライブレポート>KIRINJIが毎年恒例のビルボード公演を開催、もう一つの夏を届ける

 KIRINJIが、毎年恒例のプレミアム・ツアー【KIRINJI PREMIUM 2019】を6月6日からスタートした。
KIRINJI その他ライブ画像

 本ライブレポートは、6月7日にビルボードライブ東京で行われた公演の2ndステージのレポートである。当日、東京の天気は雨。これからやってくる夏の湿気を思い起こさせる蒸し暑さであった。そんな夜、ステージに登場したKIRINJIは、さっそく「ペーパープレーン」と「時間がない」を披露。堀込高樹(Gt/Vo)の張りのある声、そして細やかなギターと打ち込みが、今日の天気を忘れさせてくれるほどの爽やかさで会場に鳴り響いた。

 そして拍手の中、MCへ。「最後まで楽しんでいってください」と堀込が言った後に披露したのは「soft focus」。「燕が低く飛ぶよ 地下鉄に吹く風」という歌詞は、地下道のムワッとした湿度を感じさせたりするものだが、KIRINJIの楽曲に乗せれば、とても居心地の良い空間を演出する言葉となった。

 荒井由実「雨のステイション」のカバーなどもはさみつつ、6月5日にリリースされ、DJ/シンガーソングライターのYonYonがヴォーカル&ラップでフィーチャーされた「killer tune kills me」も披露。前日の6月6日の1stステージではYonYonがシークレットゲストとして登場し一緒に披露したが、この日6月7日はYonYonのパートを堀込が代わりに担当。原曲とはまた違う大人な歌唱を披露。それは心地よい低音と共に、オーディエンスを魅了した。

 本編も終了に近づいたころ、昨年リリースしたアルバム『愛をあるだけ、すべて』の収録曲「新緑の巨人」を披露。堀込の優しくも突き抜けた歌声が、ビルボードライブ東京の天井まで軽やかに伸びていった。そして本編ラストは「非ゼロ和ゲーム」。いままで心地よくメロウな曲に酔いしれていたオーディエンス達も、「非ゼロ和ゲーム」では手拍子と共に高揚しダンサンブルな空気を醸し出して終了した。

 アンコールでは、長年のパートナーの白髪を白いリボンと喩えた歌詞がロマンティックに誘うナンバー「silver girl」を披露。青空のもと、乾いた空気が心地よく感じるビーチに思いをはせながら、アンコールは未発表の新曲「雑務」へ。「雑務、めんどくさいなっていう歌」と堀込が紹介した本楽曲は、“雑務”というフレーズが繰り返し歌われるパートは少しコミカルにも感じる楽曲。めんどくさい雑務を決して悪と捉えず、雑務をこなすことをユーモラスに捉えた楽曲のように感じた。「雑務」が終わると大きな拍手の中、KIRINJIはステージを去っていった。

 今回の公演でKIRINJIが披露した楽曲には、「雨」や「夏」といったワードや雰囲気を持った楽曲が多く、これからやってくる梅雨や湿度の高い夏を見越したもののように感じた。そもそもKIRINJIの楽曲は「水」や「太陽」を感じさせる音色を奏でていると筆者は思っているのだが、それは決して日本特有のジメジメした湿度が纏わりつく夏の日ではない。KIRINJIの「水」は、例えば清流にくるぶしまで足を浸すような、丸みを帯びた水滴のやわらかい表面が肌をつたうようなものであり、「太陽」はあくまでカラッとした空気を作り出すような、柔らかな緑の葉や鮮やかな青い海を映しだすようなものである。手で顔を扇ぎ、汗をぬぐう人たちに、KIRINJIの音楽はもう一つの夏の季節を提供してくれるだろう。

Text by Akihiro Ota
Photo by 立脇卓

◎公演情報
【KIRINJI PREMIUM 2019】
2019年6月7日(金)
ビルボードライブ東京
1. ペーパープレーン
2. 時間がない
3. soft focus
4. ジュ・テーム・モア・ノン・ブリュ(Cover)
5. いつも可愛い
6. 雨のステイション(Cover)
7. after the party
8. killer tune kills me
9. タンデム・ラナウェイ
10. 新緑の巨人
11. 非ゼロ和ゲーム
-Encore-
12. silver girl
13 .雑務(仮題・新曲)