スクールボーイ・Qの5thアルバム『Crash Talk』(Album Review)

Billboard JAPAN

 全米アルバム・チャート“Billboard200”で2位にデビューした前作『Blank Face LP』から、約3年も経過していたというのは驚きだ。というのもこの3年間、スクールボーイ・Qの名前自体は、何度となく目にしているからだ。例えば、同チャート2位を記録したグッチ・メインの『Mr. Davis』や、ケンドリック・ラマ―の『ブラックパンサー ザ・アルバム』に提供した「X」、今年初頭にNo,1デビューを果たした、21サヴェージの新作『I Am > I Was』など、など…

 話題性にも事欠かない、スクールボーイ・Q。その『I Am > I Was』に収録されている「A Lot」という曲を取り上げては、ゲスト・ラッパーでソングライターのJ・コールに「機械を使ってストリーミング数を増やせるんだろ?その機械、貸してくれよ」とSNSでつぶやき、ファンを沸かせた。スクールボーイ・Qは、そのストリーミングがポイント化する前の3rdアルバム『Oxymoron』(2014年)で、自身初の全米首位獲得を果たしているが、その機械とやらを使って(?)2作目の1位を狙いたいと話している。ギャグなのか、業界のリアルな闇なのか。そんなところも突っつく、なかなかユニークな人である。

 本作からは、3月に「Numb Numb Juice」、4月には、トラヴィス・スコットとタッグを組んだ「Chopstix」の2曲が先行シングルとしてリリースされている。前者は、『Blank Face LP』にも参加したシカゴのプロデューサー・デュオ=ネズ&リオが手掛けたナンバーで、アメリカン・ギャング満載のミュージック・ビデオに通ずる、ハードなヒップホップ・トラックに仕上がっている。この曲は、全米“HOT100”チャートでで55位まで上昇するスマッシュヒットを記録した。

 後者は、ここ最近の流行をうまく取り入れた、ケンドリック・ラマー作のトラップ・ソング。先行シングルの2曲はじめ、本作に収録された計6曲の制作に、ケンドリック・ラマーが携わっているが、ゲストのトラヴィス・スコットが昨年大ヒットさせた『アストロワールド』同様、フューチャリング・アーティストとしてのクレジットは“あえて”していない。ここ最近は、ラッパーの間でこういったスタイルをとることが、ちょっとしたブームになっている。

 そのケンドリック・ラマーの大ヒット作『DAMN』(2017年)で大活躍した、DJダーヒによるプロデュース曲「Tales」は、90年代フレイバー漂うヒップホップ・ソング。この曲には、メイヤー・ホーソーンとのファンク・ユニット=タキシードでも知られる音楽プロデューサー、ジェイク・ワンもクレジットされている。DJダーヒは、「Chopstix」と「Tales」の他、どこかレトロな雰囲気の「Black Folk」と、不安定なしたピアノ演奏が“ドランク状態”を見事表現している「Drunk」、そして「Dangerous」の計5曲をプロデュースしている。

 「Drunk」には、2018年の【第60回グラミー賞】で注目された新進ラッパー=6LACKが、「Dangerous」には、全米“HOT100”3位を記録したデビュー曲「Day 'n' Nite」でブレイクした、カニエ・ウェスト一派のキッド・カディが、フューチャリング・ゲストとして参加している。彼らの他には、エレクトロ・ポップ路線の「Lies」に、タイ・ダラー・サイン&YGの2大人気ラッパーが、ドレイクの「God's Plan」で昨年大注目された、カードーによるプロデュース曲「Floating」に前述の21サヴェージが、ミーゴス路線のトラップ「Water」には、ガンナとのコラボが大好評のリル・ベイビーが、それぞれゲストとしてクレジットされている。

 カナダ出身の売れっ子プロデューサー=ボーイ・ワンダが手掛けた「Crash」、ナズ、ドクター・ドレ―、ジェイ・Zといった大物の名前が登場する 「Attention」 、銃やドラッグなどの違法行為を全面肯定する「Gang Gang」~「Die Wit Em」、イルマインド(カリード、フューチャー、ドレイク等)がプロデュースした、吐き捨てるようなラップがカッコイイ 「5200」等、ゲスト不在のタイトルも、男子受け必須のクールなナンバーが目白押し。日本のお行儀良い男の子たちには、ちょっとムズかしいかな…(?)

 これまでの作品はファンのために提供したが、今作『Crash Talk』は「自分らしい作品」というコンセプトのもと制作したというスクールボーイ・Q。明確な違いはイマイチ分からないが、「売れ線」を狙った感じでないことは確か。アルバムは、本来2018年11月にリリースされる予定だったが、同年9月に友人のマック・ミラーが亡くなったことで、「今、リリースするべきではない」と判断し、延期となった。Text:本家一成

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