<コラム>プリンスも震えた芸達者たち ~モーリス・デイ率いるザ・タイムのショウマンシップとエンタテインメント性 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

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<コラム>プリンスも震えた芸達者たち ~モーリス・デイ率いるザ・タイムのショウマンシップとエンタテインメント性

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<コラム>プリンスも震えた芸達者たち ~モーリス・デイ率いるザ・タイムのショウマンシップとエンタテインメント性

<コラム>プリンスも震えた芸達者たち ~モーリス・デイ率いるザ・タイムのショウマンシップとエンタテインメント性


 「……髪型はモーリス・デイみたいだがな」

 上記のセリフは、1972年の伝説的黒人映画『スーパーフライ』の2018年リメイク版、タイトルはやはり同じく『スーパーフライ』からの引用。師匠スキャッターが、弟子にあたる主人公ヤングブラッド・プリーストの知性・克己心・労働倫理等を誉めた後に言うのだ。そのヘアスタイルが、彼の欠点であるかのように。

 コンク(ストレートパーマ)をかけた上でリーゼント気味にスタイリング。こんな髪型をした黒人男性が堅気の職業に就ける可能性は低いから、(アーティストでない限り)ドラッグディーラーやピンプといった非合法活動の従事者がイメージされる。その髪型に、露骨なアニマル柄meetsメタリックカラーのスーツ等、突き抜けて悪趣味(だがスタイリッシュ)な衣装各種を合わせていたのが、ザ・タイム。そこからプンプンと漂うのは、ライト級のイリーガル臭だ。

 メインストリームのブラック・ミュージックからストリートの香りが消えかけていた80年代前半。そんな時代の中で、ピンプでジゴロで、それでいてユーモラスな存在感を放ったザ・タイムは唯一無二のバンドなのだ、と思う。

 ジェシー・ジョンソンは、外見だけでザ・タイムのギタリストとして採用されたという。もちろん、採用したのはプリンスだ。

 そう。ザ・タイムは本来、プリンスがプリンス名義で発表するにはファンクすぎる曲を作っちゃった時の変名プロジェクトとしてスタートしたものであり、そこに重要なのは演奏力よりもコンセプトに沿った外見だった。違う種類のヴィレッジ・ピープルと言おうか。

 しかし、そんな子飼いグループであるはずのザ・タイムが師匠プリンスを凌駕してしまう瞬間があった。ステージの上にはマジックがあり、その魔法は往々にしてデュオやバンドやグループに味方する。集団には集団ゆえの華というものがあり、ソロ・アーティストが太刀打ちできないこともまま起こるから、だ。

 60年代、ヒットチャート上は勝っているはずのオーティス・レディングが、共に回るツアーでサム&デイヴに完敗し、楽屋で男泣きした(?)という伝説があるが、同様のことが80年代前半、プリンスとザ・タイムにも起こったらしい。

 プリンスとてステージではバンドを従えるが、それはあくまで「ソロ・アーティスト+バックバンド」。一丸となったザ・タイムの盛り上げぶりにはかなわず、それがプリンス(ヘッドライナー)とザ・タイム(前座)との緊張・対立・怨恨に繋がったとか。ああ、殿下……。

 この逸話からわかるのは、ザ・タイムのショウマンシップとエンタテインメント性。これこそファンク・バンドのあるべき姿だと思う。ファンクのライヴは、リサイタルでもコンサートでもなく「ショウ」なのだから。

 こういった長寿バンドの常としてメンバーチェンジを経てきた――先ほど言及したジェシーもいない――ザ・タイムだが、それでもドラムスのJellybean Johnson、キーボードのMonte Moirといったオリジナル・メンバーは、今でもモーリス・デイを支え続けている。

 気になるのはショウマンシップの中核たるモーリスの相方を務めてきたジェロームが不在であること。しかし! メンバー・ラインナップを見るとThomas Austin (Mirror guy)なる表記が! 鏡男!

 時代は変わっても、ザ・タイムのエンタテインメント性は変わらないようだ。そんなステージを見届けたい。

Text:丸屋九兵衛 QB Maruya


◎公演情報
【モーリス・デイ&ザ・タイム】
2019年6月21日(金)
ビルボードライブ東京
1st ステージ 開場17:30 開演18:30
2nd ステージ 開場20:30 開演21:30

2019年6月22日(土)- 23日(日)
ビルボードライブ東京
1st ステージ 開場15:30 開演16:30
2nd ステージ 開場18:30 開演19:30

2019日6月25日(火)
ビルボードライブ大阪
1st ステージ 開場17:30 開演18:30
2nd ステージ 開場20:30 開演21:30

<出演メンバー>
モーリス・デイ / Morris Day (Vocals)
トーマス・オースティン / Thomas Austin (Mirror guy)
ジェリービーン・ジョンソン/ Jellybean Johnson (Drums)
モンティ・モイア / Monte Moir (Keyboards)
ジェフ・マクニーリー / Jeff McNeely (Keyboards)
リッキー・スミス / Ricky "Freeze" Smith (Bass)
テレル・ラフィン / Terrell Ruffin (Guitar)
※その他メンバー未定


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