<コラム>コリーヌ・ベイリー・レイ来日記念特集~「心の歌」で多くの人を魅了し続ける理由-彼女の「痛み」と「喪失」 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

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<コラム>コリーヌ・ベイリー・レイ来日記念特集~「心の歌」で多くの人を魅了し続ける理由-彼女の「痛み」と「喪失」

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<コラム>コリーヌ・ベイリー・レイ来日記念特集~「心の歌」で多くの人を魅了し続ける理由-彼女の「痛み」と「喪失」

<コラム>コリーヌ・ベイリー・レイ来日記念特集~「心の歌」で多くの人を魅了し続ける理由-彼女の「痛み」と「喪失」

 筆者が彼女のライブを初めて観たのは、2011年3月8日の渋谷AXでの公演だ。2008年に死去した夫、ジェイソン・レイに捧げた2ndアルバム『The Sea』と、自身の音楽的なルーツに立ち返り「愛」をテーマに選曲したEP『The Love EP』の楽曲群を中心に、フル・バンドでセットを披露したライブは、音楽の純粋な喜びに満ち溢れた素晴らしいものだった。このライブの三日後に、日本は東日本大震災に見舞われた。コリーヌも当時、SNSなどを通じてサポートを表明していたが、個人的には何よりもあの日のライブのアンコールで彼女が披露したドリス・デイの「Que Sera, Sera」のカバーの記憶が、なすすべもなくじっと事の成り行きを見守っていた一人のちっぽけな日本人としての自分の気持ちを支えてくれたような気がしている。〈Que sera, sera. Whatever will be, will be. (ケ・セラ・セラ なるようになれ)〉、と。

 『The Sea』が喪失と、生と死の多様な在り方をテーマにした作品だったのに対し、2016年にリリースした3rdアルバム『The Heart Speaks In Whispers』は、伐採され地面に横たわった木々から新芽が芽吹くような、「再生」を感じさせるセンシュアルなものだった。2017年4月10日に行われた大阪・IMPホールでの公演で、コリーヌはその細い身体をゆっくり小刻みに動かしたり、時にしならせたりしながら、音楽を通じて生のエネルギーを全身から発信し、かつ享受していた。時にステージから客席にまで下りて来て、オーディエンスを巻き込み、踊り、歌い、大合唱を巻き起こしたそのライブは、使い古された言葉ではあるが、まさに「祝祭的な」ものであり、コリーヌはまさに音楽の巫女のようであった。

 コリーヌはキャリアの初期にジャズ・バーなどでよく歌っていたそうだが、昨年行われた[ビルボードライブ]での一連のライブは、そんな彼女の原点に立ち返りつつ、コリーヌ自身がMCで言っていた言葉を借りれば「スペシャルで、これまでやった事のない試み」であった。ドラムレスの三人編成で、アコースティックな聴かせるセットというと、バラード曲が多めだったのかなと想像する方もいるかもしれないが、そんなことはまったくなく。これまでハービー・ハンコックやウェイン・ショーターら、ジャズ界の大物とコラボしてきた彼女のジャジーな一面や、レッド・ツェッペリンのコピー・バンドをやっていたロック・キッズとしてのルーツ、そして、ソウルやディスコ、R&Bなどのブラック・ミュージックに対する敬愛の念も感じさせる、広義の意味でのグルーヴィーな演奏を披露してくれた(筆者はチャカ・カーンの「Sweet Thing」のカバーで踊りまくりました)。

 センチメンタルな書き口になってしまって恐縮だが、やはり、自分がコリーヌのライブ(そして、作品)に否応なく、心を動かされてしまうのは、彼女が想像を絶する「痛み」や「喪失」を経験していながらも、その記憶を抱きしめた上で、また、歩き出そうとする姿を見せてくれるからである。彼女の人生のリアリティを脇においておいたとしても、コリーヌの楽曲に込められた喜びや哀しみ、切なさなどの感情の深度はどこまでも深く、聴く人の心に染み入ってくる。6月の東京と大阪の[ビルボードライブ]での公演は、ドラムスを加えつつも、前回と同じくアコースティック編成でのライブになるそうだ。親密な空間で、シンプルだが過不足ないタイトな演奏で、コリーヌの生の歌と向き合うという体験は、もはや、ヒーリングやカウンセリングにも近い経験である。今からその日を楽しみに毎日を生き抜こうと思えるのも、またコリーヌ・ベイリー・レイの音楽の力なのだな、と思う次第だ。

TEXT: 小田部仁


◎公演概要
【コリーヌ・ベイリー・レイ】

ビルボードライブ東京
2019年5月23日(木)~5月24日(金)
1st ステージ 開場17:30 開演18:30
2nd ステージ 開場20:30 開演21:30

ビルボードライブ大阪
2019年5月27日(月)
1st ステージ 開場17:30 開演18:30
2nd ステージ 開場20:30 開演21:30


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