【深ヨミ】米津玄師/クイーン/あいみょんらロング・セールを続けるアーティストの販売動向を探る
【深ヨミ】米津玄師/クイーン/あいみょんらロング・セールを続けるアーティストの販売動向を探る

 3月25日付のBillboard JAPAN週間“Top Albums Sales”で、米津玄師『BOOTLEG』が2,366枚を売り上げ、26位を獲得した(集計期間2019年3月11日~2019年3月17日)。

 『BOOTLEG』は1年以上前の2017年11月01日に発売され、発売週に162,816枚を売り上げ“Top Albums Sales”で1位を獲得したが、2019年3月17日現在550,924枚の売り上げを記録している。また、本年(2019年)に入ってからも51,529枚の販売を記録しており、その勢いは衰える気配を見せない。

 ロング・セールを続けるタイトルは他にもあり、ここでは、それらロング・セールを続けるタイトルやアーティストについて、SoundScanJapanの販売データを元に調査してみる。まず、ロングセールを続けるタイトルを調査するため、発売後1年以上経過しているアルバムの、2019年に入ってからの販売数を調査してみる。まず、該当商品(発売日が2018年3月10日以前のアルバム)の市場における販売比率は38.5%となっている。新譜や初動が重視されているマーケットではあるが、シングルの6.7%に比べるとかなり大きな比率となっている。また、アルバムのタイトル別のランキングは下記の通りである。

◎発売日が2018年3月10日以前のタイトルの2018年12月31日~2019年3月17日の販売枚数
1位『BOOTLEG』米津玄師 51,529枚 2017年11月01日発売
2位『ジュエルズ ヴェリー・ベスト・オブ・クイーン』クイーン 35,311枚 2008年12月10日発売
3位『グレイテスト・ヒッツ』クイーン 25,776枚 1994年06月22日発売
4位『青春のエキサイトメント』あいみょん 18,718枚 2017年09月13日発売
5位『YANKEE』米津玄師 16,615枚 2014年04月23日発売
6位『All the BEST! 1999-2009』嵐 14,917枚 2009年08月19日発売
7位『Finally』安室奈美恵 14,149枚 2017年11月08日発売
8位『Bremen』米津玄師 12,756枚 2015年10月07日発売
9位『ラブとポップ ~好きだった人を思い出す歌がある~ mixed by DJ和』(V.A.) 11,636枚 2017年08月09日発売
10位『グレイテスト・ヒッツ VOL.2』クイーン 10,682枚 1994年07月06日発売
11位『diorama』米津玄師 9,918枚 2012年05月16日発売
12位『アンコール』back number 9,627枚 2016年12月28日発売
13位『「untitled」』嵐 9,435枚 2017年10月18日発売
14位『日本の恋と、ユーミンと。 The Best Of Yumi Matsutoya 40th Anniv』松任谷由実 9,308枚 2012年11月20日発売
15位『Tokyo Rendez-Vous』King Gnu 8,701枚 2017年10月25日発売
16位『オペラ座の夜』クイーン 8,148枚 1994年05月18日発売
17位『#TWICE』TWICE 7,664枚 2017年06月28日発売
18位『ジュエルズ? ヴェリー・ベスト・オブ・クイーン』クイーン 6,991枚 2005年01月26日発売
19位『倉木麻衣×名探偵コナン COLLABORATION BEST 21-真実はいつも歌にある!-』倉木麻衣 6,036枚 2017年10月25日発売
20位『Super Best Records -15th Celebration-』MISIA 5,681枚 2013年02月20日発売

 本ランキングをBillboard JAPAN Year Endの"Top Albums Sales"と比較すると、上記20タイトルが最も多く年間ランキングに入った年は2017年であるが、それでも20位以内で重複しているタイトルは『BOOTLEG』(16位)・『Finally』(1位)・『アンコール』(5位)・『#TWICE』(14位)の4タイトルしかなく、過去において年間ランキングに入るようなタイトルが全てロング・セールになっているとは言えないようだ。逆に、映画が大ヒットし、大ブームとなっているクイーンや、休止を発表した嵐等、話題となったアーティストの作品が上位となっている傾向が見える。また現在のBillboard JAPANランキングにおいて、ストリーミングやラジオで上位常連のあいみょんや、ダウンロードをはじめ全ての指標で強い米津玄師、全曲ストリーミング配信を開始し、ダウンロードでも3週連続首位となった『日本の恋と、ユーミンと。』がここでもランクインする等、フィジカル以外が話題となったり、他指標で強かったアーティストの作品がCD販売においてロング・セールに繋がる傾向もあるようだ。

 20位以内を見ると、クイーンを除くと、オリジナルアルバムをランクインさせている米津玄師・あいみょん・King Gnuといった比較的活動期間が短いアーティストと、ベストアルバムをランクインさせている比較的活動期間が長いアーティストに分かれる傾向が見て取れる。

 一方、米津玄師・クイーン・嵐等複数のアルバムをランクインさせているアーティストもおり、もうすこしランキングの幅を広げ、100位まで調査した結果、複数タイトルをベスト100にランクインさせているアーティストとそのアーティストの最高ランクのアルバム・タイトルは下記の通りである。

19タイトル クイーン 最高ランク2位 『ジュエルズ ヴェリー・ベスト・オブ・クイーン』
8タイトル 嵐 最高ランク6位 『All the BEST! 1999-2009』
6タイトル 米津玄師(ハチ名義含む) 最高ランク1位 『BOOTLEG』
5タイトル 中島みゆき 最高ランク24位 『大銀幕』
4タイトル 竹内まりや 最高ランク21位 『LOVE SONGS』
3タイトル あいみょん 最高ランク4位 『青春のエキサイトメント』
3タイトル YELLOW MAGIC ORCHESTRA 最高ランク28位 『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』
2タイトル ONE OK ROCK 最高ランク27位 『Ambitions』
2タイトル Aimer 最高ランク56位 『BEST SELECTION “blanc”』
2タイトル Sexy Zone 最高ランク61位 『XYZ=repainting』
2タイトル BTS (防弾少年団) 最高ランク62位 『THE BEST OF 防彈少年團-KOREA EDITION-』
2タイトル 乃木坂46 最高ランク67位 『生まれてから初めて見た夢』

 こちらはランクインしているタイトル数なので、長く活動しているアーティストが有利となるのだが、それにしてもクイーンの18タイトルは圧巻である。また活動中止を発表した嵐もクイーンに次ぐ8枚ランクインさせており、ファンに惜しまれている事がわかる結果となっている。またここに登場している12アーティストでベスト100のうち過半数である58タイトルを占有している。

 そして、同一条件(発売日が2018年3月10日以前のタイトルの2019年に入ってからのランキング)のアーティストのランキングは下記の通りで、更に、それぞれのアーティストの販売ルートである店舗販売とeコマースのうち、店舗での販売比率も調査した。

1位 クイーン 141,413枚 (55.9%)
2位 米津玄師 97,101枚 (62.3%)
3位 嵐 55,137枚 (51.4%)
4位 あいみょん 27,549枚 (62.%)
5位 安室奈美恵 20,617枚 (58.%)
6位 中島みゆき 19,635枚 (51.8%)
7位 松任谷由実 17,281枚 (46.9%)
8位 ONE OK ROCK 15,876枚 (50.4%)
9位 back number 12,154枚 (57.6%)
10位 サザンオールスターズ 11,120枚 (46.2%)

 これもトップ100に18タイトル入り、更にそれ以外のタイトルも販売しているクイーンが14万枚越えで、米津玄師・嵐と続くが、店舗販売の比率に注目すると、この中で店舗販売比率が60%台の高い値を示しているのはキャリアの短い米津玄師やあいみょんであり、逆にキャリアが長い松任谷由実やサザンオールスターズは店舗販売比率が40%台とeコマースの割合が高く出る結果となっている。

 現在はクイーンのブームによって市場も活性化しているが、音楽業界の発展には長く聞くことができる良い作品が不可欠であり、これらの実績のあるアーティストに今後も注目するとともに、新世代のアーティストが出てくる事にも期待したい。