『Five Stars』ハイヤー・ブラザーズ(Album Review) 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

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『Five Stars』ハイヤー・ブラザーズ(Album Review)

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『Five Stars』ハイヤー・ブラザーズ(Album Review)

『Five Stars』ハイヤー・ブラザーズ(Album Review)


 メンバー全員が楽曲制作に携わり、全員がリードをとれるラップ・スキルをもつ、 MaSiWei、DZknow 、Psy.P、Meloの4人で結成された中国・四川省のヒップホップ・グループ=ハイヤー・ブラザーズ。アメリカでも高い人気を誇る<88rising>所属のアーティストでもあり、アジア圏のみならず、アメリカやヨーロッパ諸国でも多くのファンを獲得している。

 これまで20作近くのミックステープを発表し、2017年5月には念願のデビュー・アルバム『Black Cab』をリリース。ミーゴスやケンドリック・ラマーといった、昨今のラップ・シーンを担うアーティストたちにインスパイアされたとのことで、たしかに“アメリカ映え”する仕上がりになっている。フィーチャリング・ゲストには、彼らがリスペクトする韓国人ラッパーのキース・エイプや、元2PMのジェイ・パーク、米シカゴ出身の若手ラッパー=フェイマス・デックス等が参加した。

 本作『Five Stars』は、その話題作『Black Cab』に続く2年ぶり、2作目となるスタジオ・アルバム。前作『Black Cab』同様、中国語と英語を掛け合わせた、ハイヤー・ブラザーズ独自のリリックも聴きどころ。ゲストには、ソウルジャ・ボーイやスクールボーイQといった、アメリカを代表するラッパーから、米フロリダの新星=デンゼル・カリーとスキー・マスク・ザ・スランプ、米オークランド出身のグアップダッド・フォーサウザンド、J.コール所属の<Dreamville Records>から、米アトランタの新進ラッパー=J.I.Dも参加している。<88rising>からは、女性R&BシンガーのNIKIと、核となるリッチ・ブライアンがクレジットされている。ジョージ(Joji)は、メイン・プロデュースを担当。その他、スペインのプロデューサー・トリオ=クッキン・ソウルやK・スウィシャも参加した。

 日本人目線でいえば、本作のメインとなるのはKOHH(コー)が参加した「We Talkin Bout」だろう。KOHHは、宇多田ヒカルの「忘却」(2016年)や、マライア・キャリーの「Runway」(2018年)にフィーチャーされたことで、さらに知名度を高めた日本を代表するジャパニーズ・ラッパーの一人。自身も先月、2年半ぶりとなる新作『Untitled』をリリースしたばかりで、このアルバムも高い評価を得てている。 最新のトラップ・サウンドに乗せた、日本語を挟み入れたラップがインパクト絶大で、“女の子たちぃ……”が、やたら耳にこびりつく。

 ゲームのイントロっぽい音ではじまる「Flexing So Hard」や、ミーゴスをまんま映した「One Punch Man」あたりも、昨今の流行を意識したネオ・トラップ。どこかで聴いたことがあるような感じがしないでもないが、そこはご愛敬。このあたりの曲を聴くと、「アジアのミーゴス」と囃されているのも納得できる。

 一方、オープニングを飾る「16 Hours」や、70年代ソウルをネタ使いしたような「Open It Up」、90年代初期のイースト・コーストを彷彿させる「Sunshine」、ジャジー・ヒップホップのニュアンスも含んだメロウチューン「Need Me Now」など、“元祖”ヒップホップ的トラックにも挑戦している。このあたりは、彼らが“入り”のキッカケとなった、ジェイ・Zの影響が表れたのではないだろうか?スクラッチや“チェックイット”も登場する「Diamond」も、まんまナインティーズ。

 ラップの刻みがクセ強過ぎの「Do It Like Me」、強気の姿勢をみせたソウルジャ・ボーイとのコラボ曲「Top」、中国語の入り混じった高速ラップで言葉遊びする「Gong Xi Fa Cai」、男子臭プンプンの「Won't Believe」など、ハードコア寄りのナンバーも満載。“アジア人もここまでやれるんだぜ”ってイキった(?)感じも、それはそれでカッコいい。ラスト2曲は、NIKIが諭すように歌うスロウジャム「No More」~バックサウンドが心なしかアジアン・テイストの、どっぷり黒いリッチ・ブライアンとのコラボ曲「Zombie」と、<88rising>の面子で締めくくる。

 2018年は、K-POPグループのBTS (防弾少年団)が2作連続で米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”でNo.1を獲得するなど、ここ最近はアジア系アーティストの人気がアメリカでも上昇中。また、ドレイクやトラヴィス・スコットなどの人気ラッパーが、90年代“ネタ”を掘り起こしていたりと、ヒップホップ・シーンの流行もいろんな意味で変わりつつある。ハイヤー・ブラザーズのブレイクも、今が最高のタイミングといえるのかもしれない。

 彼らの出身であるチェンドゥ(成都市)でも、ヒップホップ人気が高まっているようで、クラブ遊びも盛んになりつつあるよう。日本でも、ストリート・ファッションの再燃など90年代モノが回帰していて、ヒップホップ文化もリバイバルしつつある。【SUMMER SONIC 2018】や<88rising>の来日公演の反響をみれば、日本でのブレイクも期待できなくはない……?


Text: 本家 一成


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