つんく♂~同い年の大切な友人~【世界音楽放浪記vol.37】

Billboard JAPAN

多種多様な人々が集う社会では、年齢という概念はあまり役に立たない。老若男女問わず、凄い人は凄いからだ。しかし、中には、全く立場などが異なっているにも関わらず、共鳴し、友情を築く方もいる。同い年のつんく♂さんも、そのうちの一人だ。

一緒に作った、モーニング娘。の2曲のナンバーワンヒット「What is Love?」(2014)、「One and Only」(2015)は、どちらも世界をターゲットにしたナンバーだ。

「What is Love?」は、世界中の視聴者の声を集めて、それを活かして新曲を作ろうというコンセプトだった。その過程で、つんく♂さんは、「問いに、『愛とは何か?』に加え『生きるとは何か?』を加えると、重いかな?」と尋ねてきた。「そんなことはない。是非やろう!」と、私は答えた。質問を加えたことが功を奏したのだろう、700を超える熱いメッセージが、世界中から届いた。

全編英語詞の「One and Only」は、モーニング娘。のNY公演(2014)で熱狂する観客を見た私が、「アメリカ人がドライブしながら、口ずさめるような曲を作る」と着想を得たことがアイディアの原点だ。つんく♂さんは、その意図を完全に理解してくれた。「どの曲名が良いかな?」と候補を幾つか提示され、「『One and Only』がベストだと思う」と答えたことが、強く記憶に残っている。

この2曲を作った頃は、ちょうど、彼が声を失った時期だった。NYでの公演を見届けた翌日、ご家族と一緒に緊急帰国された時のことは、忘れられない。番組10周年記念書籍「『J-MELO』が教えてくれた世界でウケる『日本音楽』」(ぴあ・2015)での小室哲哉さんとの対談は、タブレットに文字を打ち込む形で進められた。その時、この2人で、記念碑的な曲を作ることができないかと、私は考えた。小室さんはすぐに快諾してくださったが、つんく♂さんは「具体的にどう始めていくのがあり得るのかなぁ」という率直な思いを返してきた。私は、暫くの間、本人たちに任せることにして、あえて、この件は話さないようにした。数か月が経過したある日、彼のマネージャーから「やることになりました」と、唐突に連絡が入った。つんく♂さんが作詞、小室さんが作曲、May J.さんがボーカルを務める「Have Dreams!」(2017)は、こうして生まれた。

当初、「Have Dreams!」は、英語詞版のみ制作するという構想だった。だが、翻訳されることを前提でつんく♂さんが書いた原詞は、シンプルでありながら深い世界観が内包された、まるで宮沢賢治が詠んだような、美しい「詩」だった。私は、その「詩」を用いて、日本語詞版を制作するように掛け合った。かけがえのない作品が、この世に生を受けた。スタジオに3人が集い、この曲を収録した際には、つんく♂さんはギターを演奏した。

クラスメートのようなやり取りは、今でも続いている。2016年に、彼がプロデュースしている、母校の近畿大学の入学式に、誰をゲストに呼ぼうかという相談も受けた。ちょうどその前日、私は、番組司会のMay J.と大阪でロケをすることになっていた。阿吽の呼吸で演出を整え、シークレット・ゲストでMayが登場すると、新入生らは驚き、一斉にツイート。あっという間にトレンド入りした。

さまざまなことを、相談したり、意見を求めたりすることが、これからもあるかと思う。新しい「何か」を生み出せたら、こんなに嬉しいことはない。どうぞ、よろしくお願いいたします!Text:原田悦志


原田悦志:NHK放送総局ラジオセンター チーフ・ディレクター、明大・武蔵大講師、慶大アートセンター訪問研究員。2018年5月まで日本の音楽を世界に伝える『J-MELO』(NHKワールドJAPAN)のプロデューサーを務めるなど、多数の音楽番組の制作に携わるかたわら、国内外で行われているイベントやフェスを通じ、多種多様な音楽に触れる機会多数。

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