RYO the SKYWALKERと大阪の自由な空【世界音楽放浪記vol.27】 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

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RYO the SKYWALKERと大阪の自由な空【世界音楽放浪記vol.27】

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RYO the SKYWALKERと大阪の自由な空【世界音楽放浪記vol.27】

RYO the SKYWALKERと大阪の自由な空【世界音楽放浪記vol.27】


 2017年度秋学期、「メディア産業論」の講師を担当した。土曜日になると、自宅の近くのバス停から6時に羽田に向かい、伊丹を経て、講師控室に入るのがルーティーンだった。講義には、100人を超える学生が、土曜日午前というコマにも関わらず、高い出席率で詰めかけた。「データ、インフォメーション、インテリジェンス」の「情報の三様相」や、「コア、ペリフェリー」という空間経済学の理論などをメディアに援用した講義を続けた。私の世界中での体験や、国際放送の軌跡も話した。

 毎週、吹田キャンパスに通っているうちに、空が、広く、自由なことに気づいた。東京は、空にも、海にも、陸にも、「戦後」がいまだに色濃く残っている。戦後とは、旧枢軸国側だけに与えられた概念だ。何故なら、旧連合国側は1945年以降も戦争し続けているので、どの後かという統一的な概念がないからだ。大阪には、「横田空域」も「横須賀基地」も「新山王ホテル」も存在しない。東京の芸能界と米軍基地は切り離せない。大阪は、寄席文化を現代へと引き継いだ。

 課外授業の企画や参加も行い、兵庫県加西市での実習では、SNSの最新技術の実験も行った。インターネットは、誰がどこにいても発信源になれる「1人1メディア」というビジネス・モデルを創出した。地元にいながら世界規模でのヒット・コンテンツを創造する可能性は、地方の未来への希望でもある。そもそも、大阪や、奈良、京都をはじめとする「京」を歴史的に有する関西地方は、長い間、日本の中心地だった。「東京=現代の中央」に対するカウンター・カルチャーを生み出すには最適のエリアだ。

 どうしても講義のゲストに招きたいアーティストがいた。「ジャパレゲ」の中心的人物の一人であり、現在は大阪をベースに活動しているRYO the SKYWALKERさんだ。レゲエというと、気ままでレイドバックな音楽だと感じる人も多いだろう。しかし、ジャマイカでの出自は、祈りと抵抗、平和や自由の希求など、生きていくための「心」を表現した音楽だった。メロディーは明るくても、歌詞は辛辣や苦難を表現したものが少なくない。「形」だけを輸入することは容易だ。だが、違う国で展開する際に、元々、その音楽に込められた「心」を入れることは難しい。これは音楽に限ったことではない。食べ物でも、スポーツでも、他のあらゆる文化においても同様だろう。

 RYO the SKYWALKERさんは、学生たちに、「レゲエとは何か」を、自らの経験を交えながら語った。一つの時代を創った彼に、私は尋ねた。何故、大阪とレゲエが「赤い糸」で結ばれたのかと。RYOさんはこう答えた。「どちらの国も“島国”で、“一つの国民”という概念が強いのです。どこか保守的で、歴史的にアイデンティティをねじ曲げられた経験からそれを模索していて、コメが主食で、など共通するところがあるように思っていて。その中でも特に大阪は、地元愛の強さだとか、そこから来る(いまの)中央への反骨心、持ち前の陽気さ、あとは言葉(ジャマイカのパトワと大阪弁)の抑揚も似ていたりして、より自然にフィットしたのかな、と思います」

 先月、関大前の馴染みの店で、恒例となりつつある懇親会を開催した。関西大学の教え子や、RYOさんをはじめとする、友人・知人が集った。大阪は私にとって、重要な都市の一つになった。

 日本のポピュラー音楽研究は、関西地方の大学で盛んに行われている。アーティストらの力が加われば、日本の音楽文化の新たな潮流が生まれるような気がしている。まだ企画段階の、RYOさんのガイドによるアメ村ツアーも、いつか、実現したいと願っている。Text:原田悦志


原田悦志:NHK放送総局ラジオセンター チーフ・ディレクター、明大・武蔵大講師、慶大アートセンター訪問研究員。2018年5月まで日本の音楽を世界に伝える『J-MELO』(NHKワールドJAPAN)のプロデューサーを務めるなど、多数の音楽番組の制作に携わるかたわら、国内外で行われているイベントやフェスを通じ、多種多様な音楽に触れる機会多数。


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