『スキンズ』XXXTentacion(エクスエクスエクステンタシオン)(Album Review) 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

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『スキンズ』XXXTentacion(エクスエクスエクステンタシオン)(Album Review)

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『スキンズ』XXXTentacion(エクスエクスエクステンタシオン)(Album Review)

『スキンズ』XXXTentacion(エクスエクスエクステンタシオン)(Album Review)


 2018年6月18日に米フロリダ州で銃に打たれ、わずか20歳の若さで死去したラッパー/シンガーのXXXTentacion(エクスエクスエクステンタシオン)。その衝撃は世界中に広がり、多くのファンやアーティストたちが絶えまなく追悼メッセージを寄せたのも記憶に新しい。

 訃報を受け、2017年にリリースしたデビュー・アルバム『17』と、3月に米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”でNo.1を獲得した2ndアルバム『?』が再びTOP10入りし、先日発表された2018年間チャートでは、『17』が19位、『?』は9位にランクインする大ヒットを記録。『?』からのシングル「SAD!」も、米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”で自身初の首位獲得を果たした。

 本作『スキンズ』は、その『?』に続く自身3作目のスタジオ・アルバムで、生前に制作されていた全10曲で構成された、トータル19分強のほぼミニ・アルバムのような内容になっている。全曲をエクスエクスエクステンタシオンが制作、プロデューサーには、トラヴィス・スコットの「シッコ・モード」や、ミーゴスの「モータースポーツ」などを大ヒットさせたドイツのプロダクション・デュオ=キュービーツ、前作『?』の大半を手掛けたジョン・カニンガム&ロバート・スキアシアン、そして新作でもコラボを予定しているカニエ・ウェスト等がクレジットされている。

 アルバムからの先行シングルは、そのジョン・カニンガムとロバート・スキアシアンが制作した「Bad!」。彼がお得意とする物憂げな雰囲気のマンブル・ラップで、1分34秒とインスト並みの短さながらも、“悪い娘”の比喩的表現をうまく詰め込んでいる。ストリーミングも好調で、発売翌週にはソング・チャート16位にデビューするスマッシュ・ヒットを記録した。アルバムの初登場週には、TOP10入りも期待できるかもしれない。

 前述にもあるように、本作は「Bad!」以外のタイトルも平均2分弱と短く、どこか物足りなさがある一方、見方によってはムダのない、聴きやすいアルバムに仕上がっている。『17』や『?』もそうだったが、エクスエクスエクステンタシオンのアルバムは内容が若干重い分、(短いから)サラっと聴き流せるのがいい。

 唯一のゲストであるカニエ・ウェストとのコラボ・ソング「One Minute」には、両者に加え、ブリンク182のドラマーで音楽プロデューサーのトラヴィス・バーカーが、ソングライターとしてクレジットされている。トラヴィスも参加もあってか、ヒップホップというよりはミクスチャー・ロックのようなスタイルで、ボーカルも「SAG!」や「Bad!」のように呟くタイプの歌い回しではなく、ロッカーのようにシャウトしまくっている。カニエっぽさを(あえて)完全に排除したような仕上がりが、逆に斬新。

 むしろ、こっちの方が(初期の)カニエっぽいサウンドの「Guardian Angel」では、心が癌に侵される……と、精神状態の不安定さについて淡々と歌っていたり、音階のない不気味なバックサウンドに、何かを訴えるように叫ぶ「Train Food」では、客観的にみた自身の虚無的状況を端的にまとめてみたり……と、エモ・ラッパーとしてのアプローチも忘れない。

 マリンバやスチーム・ドラムといった楽器を起用したトロピカルな雰囲気の「Whoa (Mind in Awe)」、 ローファイやエモといったロック・サウンドを取り入れた 「Staring at the Sky」、ボーカルとラップ・パートをうまく使い分けたオルタナティブR&B「I Don't Let Go」、自問自答(なのか?)をフォークギター1本で弾き語る「What Are You So Afraid Of」と、本作も楽曲のセンスとエクスエクスエクステンタシオンの余裕あるシンギング、各プロデューサーとのプロダクションが見事に噛み合った、短いながらも充実度の高い1枚に仕上がっている。

 こうして、何事もなかったかのように新作がリリースされ、間もなく発売予定のカニエの新作や、No.1デビューを果たしたリル・ウェインの復帰作『カーターV』にフィーチャリング・アーティストとしてクレジットされるなど、亡くなった後も目覚ましい活躍を遂げるエクスエクスエクステンタシオン。その活躍が表立っているからか、今もどこかで新作をレコーディングしているような気がしてしまうのは、筆者だけではないはず……。


Text: 本家 一成


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