『ダミー・ボーイ』6ix9ine(シックスナイン)(Album Review) 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

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『ダミー・ボーイ』6ix9ine(シックスナイン)(Album Review)

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『ダミー・ボーイ』6ix9ine(シックスナイン)(Album Review)

『ダミー・ボーイ』6ix9ine(シックスナイン)(Album Review)


 米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”(2018年12月8日付)で2位にデビューした、米ブルックリン出身の新人ラッパー=6ix9ine(シックスナイン)のデビュー・スタジオ・アルバム『ダミー・ボーイ』。本作のリリースにあたり、直前の11月18日にアルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局(ATF)と国土安全保障省によって逮捕されるという、前代未聞のハプニング(というのか?)を起こし、ある意味では我々の期待を裏切らない展開をみせてくれたのも、シックスナイン“らしい”というか、なんというか……。

 アメリカのみならず、カナダ(4位)、ノルウェー(3位)、ニュージーランド(2位)など、ヨーロッパ方面でもヒットしている本作。エグい犯罪歴があろうと、売上には一切影響しない……どころか、むしろプロモーションに繋げてしまっているワケで。そんな“ブっとんだ”彼の人気が、世界で拡大していることは否定できないのだ。色々と問題を起こす若手ラッパーはいるが、目がくらむようなビジュアルに耳が痛くなるほどのシャウト、“卑猥”では済まないほど汚い言葉を連発するリリックなど、ここまで「典型的な問題児」はある意味珍しく、軽~く歌い流すようなラッパーが増えつつある、軟弱になったヒップホップ・シーンにとっては重要な存在といえる。

 本作は、同チャート最高4位をマークしたミックステープ『Day69』に続く自身初のスタジオ・アルバムで、7月にリリースした1stシングル「FEFE」が、米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”で最高3位をマークする大ヒットを記録したばかり。この曲は、ニッキー・ミナージュとマーダ・ビーツの2人をフィーチャーしたダーティ・ラップで、プロデュースはそのマーダ・ビーツと、ドレイクやミーゴスなどのヒットを手掛けるドイツのプロダクション・デュオ=キュービーツが担当している。ど派手で下品極まりないミュージック・ビデオ、銃やレイプを連想させるリリック。まさに、シックスナインにしか歌えないナンバーだ。

 ニッキーとの相性は抜群(ある意味同類?)で、「FEFE」の他にもカニエ・ウェストをフィーチャーした「MAMA」という曲でもコラボしている。この曲も、プロデュースをマーダ・ビーツが手掛け、ソングライターにはカニエのレーベル<G.O.O.D>所属のコンシクエンスがクレジットされている。シングル・カットされる予定で、ミュージック・ビデオも制作されていたそうだが、シックスナインの逮捕騒動によりお蔵入りしたとのウワサもちらほら。この曲、“ヤバイ”ことを歌っているはいるでも、お尻にシリコンを入れたり、インスタの中毒になっている“ヤバイ女子”について歌っているのが、面白いというか、いまっぽくてイイ。ニッキーのこと(じゃないよね?)。

 そのカニエも、「KANGA」の2曲に参加している。こちらもまた、マーダ・ビーツによるプロデュースで、2000年代初期を彷彿させるアップ・ビートと、攻撃的なラップに思わず酔いそうになる。その他にも、ボーイワンダ(ドレイク、リアーナ等)のプロデュース、DJスピンキングがフィーチャリング・アーティストとして参加した「TATI」や、次曲「WONDO」など、耳を塞ぎたくなるようなシャウトをカマすハードコアが満載。年配層には若干(かなり?)キツいが、ヒップホップでブっ飛びたいという若層にはたまらない内容になっている。最新のソング・チャート(2018年12月8日付)で1位に輝いた、トラヴィス・スコットの「シッコ・モード」を手掛けるテイ・キースによるプロデュース曲「STOOPID」や、ア・ブギー・ウィット・ダ・フーディをフューチャーした「WAKA」も、パンチが効いている。

 プエルトリコ出身のレゲトン・シンガー=アヌエルAAをフューチャーした「BEBE」は、彼の持ち味を存分に生かしたダンスホール。プロデュースは、リル・パンプやエクスエクステンタシオンといった人気ラッパー等を手掛けるロニー・Jが担当している。アヌエルは、この曲に続いて次曲「MALA」にもフィーチャーされていて、2曲連続でカリビアンな雰囲気が続くのも、息抜き(というべきか?)になっていい。スコット・ストーチが制作・プロデュースを手掛け、トリー・レーンズの主張強めなボーカルを起用した「KIKA」も、フロア向けのアップ・チューン。

 一方、 ガンナとのコラボ・アルバム『ドリップ・ハーダー』が大ヒット中の、リル・ベイビーをゲストに招いた「TIC TOC」や、そのガンナをフィーチャーした「FEEFA」、シックスナインの映像作品から曲のプロデュースを手掛ける、トライフドゥルーがゲスト・ラッパーとしてフィーチャーされた「DUMMY」など、トラップをベースとしたメロウ・チューンも充実。テカシ君、意外と歌モノもちゃんとこなすんだよね……(けっこう上手いし)。

 逮捕直後にもかかわらず、配信サービスの視聴回数も絶好調で、まだまだヒットが期待できそうなシックスナインのデビュー・アルバム『ダミー・ボーイ』。一方、一連の容疑に有罪判決が下った場合は、終身刑が言い渡される可能性もあるという危機的状況におかれていることは変わりないわけで、今後の展開が気がかりなところではあるが、果たして「無罪」を主張した裁判の結果はどうなるのか?公判は2019年9月に行われる予定。それまでに、もう1枚くらいアルバムをリリースしてくれる気がする……。


Text: 本家 一成


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