【ビルボード年間HOT 100】米津玄師「Lemon」が首位、DA PUMP「U.S.A.」が2位に、スマホからヒットが生まれた2018年
【ビルボード年間HOT 100】米津玄師「Lemon」が首位、DA PUMP「U.S.A.」が2位に、スマホからヒットが生まれた2018年

 2018年の総合ソングチャート【Billboard JAPAN HOT100 of the Year2018】は、米津玄師「Lemon」がダウンロード、ルックアップ(PCでのCD読取回数)、Twtiter、動画再生で1位、合計4冠で総合首位を獲得した。

 米津玄師は、作詞、作曲、プロデュースを手掛けたDAOKO×米津玄師「打上花火」を含め、合計8曲を100位圏内に送り込み、今年のシーンを牽引したアーティストとなったことに反論の余地はない結果となった。

 実は、米津玄師「Lemon」が、ウィークリーのJAPAN HOT100で総合首位を獲得したのは2度しかない。前年度の覇者、星野源「恋」が通算11回獲得したことを考えると、大きな差があるように思える。だが、トップ10位以内には、「Lemon」は41週連続、「恋」は通算36週留まっていて、この点において「Lemon」のほうが長きにわたってヒットし続け、年間首位にふさわしい記録を今もさらに更新していることが分かる。ラジオ、ダウンロード、ルックアップ、Twitter、動画再生の5冠を獲得、まんべんなく高ポイントを積み上げた「恋」と異なり、「Lemon」は178万超のダウンロード数が大きく牽引している。このダウンロード数と、前年度の「恋」同様に2億回を超える動画再生数が、「スマホから生まれるヒット」を生みだしたと言えるだろう。

 一方、総合2位となったDA PUMP「U.S.A.」はどうか。荻野目洋子「ダンシング・ヒーロー」のリバイバル・ヒットの展開をなぞるかのように、SNSで話題→動画再生数急伸→ストリーミングとダウンロードでロング・ヒットのサイクルに至った。ダウンロード、ストリーミング、動画再生の3指標で2位を獲得し、なかでも本楽曲を使用した動画の再生数はのべ1億8千万回以上。2億回前後の再生数をマークする楽曲が2曲生まれたのは今年が初めてで、こちらも「スマホから生まれるヒット」の典型だと言えるだろう。

 もはや主流となった「スマホから生まれるヒット」は、スマホ画面の大きさからなのか、米津や星野など、様々な指標で高ポイントを挙げ得る楽曲を生みだすソロ・アーティストがシーンを牽引し、大人数のグループや、デジタル領域での展開に後れを取るアーティストにとっては不利な状況となったことが徐々に明確になってきている。

 アイドル勢として、トップ10には欅坂46「ガラスを割れ!」総合3位、乃木坂46「シンクロニシティ」総合6位、「ジコチューで行こう!」総合7位、AKB48「Teacher Teacher」総合10位がチャートイン。例年通りシングル・セールスで大きくポイントを積み上げる一方で、坂道グループは、ルックアップとダウンロード、ストリーミングでもポイントを積み重ねている点が躍進の原因だ。軸足をフィジカルに置きながらも、同時にデジタル領域でのパフォーマンスも求められるのが、今のアイドル・シーンと言えるのではないだろうか。

 そしてもうひとつ、坂道グループをルックアップとダウンロード、ストリーミングで上位に押し上げたのはその歌詞にも起因すると考えられる。

 年間ランキングを俯瞰すると、上位楽曲の歌詞における世界観に共通点が見えてくる。それは、「孤独」が前提であることだ。ランダムに歌詞をピックアップしてみよう。

「どこかであなたが今 わたしと同じ様な 涙にくれ 淋しさの中にいるなら わたしのことなどどうか 忘れてください」(米津玄師「Lemon」)

「リードで繋がれなくても どこへも走り出そうとしない 日和見主義のその群れに 紛れていいのか?」(欅坂46「ガラスを割れ!」)

「悲しい出来事があると 僕は一人で 夜の街をただひたすら歩くんだ」(乃木坂46「シンクロニシティ」)

「僕はいま 無口な空に 吐き出した孤独という名の雲」(菅田将暉「さよならエレジー」)

 「孤独」を前提とする世界観は、ニュース・メディアの政治や社会面で語られるべき「断絶」や「分断」と同じ目線に立っている。スマホが紡ぐ数々のヒット曲は、「共有」から「孤独」「断絶」「分断」が共通認識である局面へ既に移行していたことに気づかされる。一方、DA PUMPやTWICEの徹底的なまでの明るさはどう捉えるべきだろう。つまりは、「孤独」と「非・孤独」の両極に大きく揺れ動く現代がみえてくる。

 「今」を切り取る「ランキング」ではなく「過去」「未来」「今」を映し出すヒット「チャート」として、JAPAN HOT100は2018年12月にカラオケ指標を加え、合計8種類のデータから、より精度を上げてヒット曲を読み解いていくことが可能となった。ヒット曲が世相を反映するのは昔も今も変わらない。そしてチャートの精度が上がれば世相を読み取ることに繋がることは自然な帰結で、ここから見えてくる現代の姿も決して見過ごすことはできない。

 「孤独」の先には一体なにがあるだろう。徹底的な「孤独」か、一人じゃない「ふたり」か「みんな」一緒か、それとも新たな世界観なのか。シーンを牽引する先進的なアーティスト達が紡ぐであろう、次のヒット曲にこれからも注視していきたい。

◎【Billboard JAPAN HOT 100 of the Year 2018】トップ10
1位「Lemon」米津玄師
2位「U.S.A.」DA PUMP
3位「ガラスを割れ!」欅坂46
4位「打上花火」DAOKO × 米津玄師
5位「ドラえもん」星野源
6位「シンクロニシティ」乃木坂46
7位「ジコチューで行こう!」乃木坂46
8位「Candy Pop」TWICE
9位「さよならエレジー」菅田将暉
10位「Teacher Teacher」AKB48

集計期間:2017年11月27日(月)~2018年11月25日(日)