ジャズ・ピアニスト/作・編曲家の前田憲男が死去、「レコード屋に行けばいい。ジャズの棚に並んでいればそれはジャズだ。」
ジャズ・ピアニスト/作・編曲家の前田憲男が死去、「レコード屋に行けばいい。ジャズの棚に並んでいればそれはジャズだ。」

ジャズ・ピアニスト、作・編曲家として長きにわたり日本の音楽界で活躍した前田憲男氏(83歳)が11月25日、肺炎のため死去した。通夜は12月4日午後6時、葬儀は5日午前11時、いずれも東京都港区南青山の青山葬儀所にておこなわれる。

 前田氏は1934年大阪府生まれ。独学でピアノを習得し、高校卒業後プロ入り。ピアニストとして高く評価されるとともに、アレンジャーとしても幅広い分野で活躍。70年代には『11PM』への出演や『ミュージックフェア』などの音楽監督を担当。80年にはウィンドブレイカーズを結成し、以降、自身のトリオやビッグ・バンド、オーケストラの客演指揮など、多彩な演奏活動を展開。1983年に「南里文雄賞」、レコード大賞「最優秀編曲賞」、2014年には「文化庁長官表彰」を受賞している。

 ビルボードジャパンでは前田氏に哀悼の意を表するとともに、昨年10月に神奈川県川崎市でおこなわれた同氏によるジャズ講座でのQ&Aをいくつか紹介したい。

Q. ジャズ演奏でやってはいけないことは?
A.「でしゃばらないこと。」
ジャズに限らず、音楽において人と違うことをやる=オリジナリティは必要だが、全体のバランスを崩してはいけない。目立ちたがり屋になってはダメなんだ。

Q. ピアノ(鍵盤)の並びは「ハ長調偏重」では?並びが変われば、新たな音楽が生まれるのではないか。
A.「楽器の構造は音楽に影響しない。音楽は人の頭の中から生まれるものだ。」
楽器は演奏をしやすいように、ある程度構造が統一されている必要がある。たとえ楽器の構造が変わったとしても、音楽そのものへの影響はないだろう。なぜなら、音楽というのは楽器からではなく、人の頭の中から生まれてくるものだから。

Q. 現在の音楽シーンをどう思う?ビジュアル重視で音楽が後回しになっているでは?
A.「嘆かわしいと見るか、時代の変化だと受け流すかは自分次第。」
「グループがダンスをしながら歌う」ことが主流となった今、たしかにメロディーが後回しにされている部分はあるだろう。ダンスも今や必修科目だ。変化を嘆かわしいと見るかどうかは自分次第だが、あまりこだわりを持ちすぎない方がいい。どうでもいい問題だ。

Q. 何をもって「ジャズ」と呼ぶ?その定義とは?
A. 「レコード屋に行けばいい。ジャズの棚に並んでいればそれはジャズだ。」
ジャンルなんてその程度のもので、気にする必要はないし、絶対に社会問題にならない。自分が好きなものを好きなように聴けばいいんだ。

Q. ジャズは小さな子供でも分かる?何歳から?
A.「子供でも分かる。」
私は物心ついたときからジャズ・スタンダードの「煙が目にしみる」を知っていた。5歳の頃だった。それ以前の記憶はないが、もっと前から聴いていたかもしれない。