藤倉大【ボンクリ・フェス2018】世界からとっておきの新しい“音”を集めて開催

Billboard JAPAN

 藤倉大をアーティスティック・ディレクターに迎えた音楽フェスティバル【“Born Creative” Festival 2018】(略称:ボンクリ・フェス2018)が、9月のはシルバーウィークの最終日、9月24日(月・祝)に開催、大人の本気の音遊びに、子供から大人まで多くの参加者が集まって楽しんだ。
イベント写真(全13枚)
 世界的に活躍する作曲家である藤倉大が、その融通無碍な感性で選んだ“世界中の新しい音”を、赤ちゃんからシニアまであらゆる人々に楽しんでもらおうとする企画だ。こども連れに配慮されたプログラムも多かった為か、日中の芸術劇場にはたくさんの親子が姿を見せていた。
 【ワークショップ・コンサート】には、『合唱の部屋』『パーカッションの部屋』『ノルウェーの部屋』など、少人数の予約制による体験型プログラムがひらかれ、すべて0才より入場できた。『ルシエの部屋』にはアーティスティック・ディレクターである藤倉大自身も参加。音楽という枠を超え、音を用いたインスタレーション作品を数多く発表したアルヴィン・ルシエの作品を、参加者の朗読と音響スタッフの協同でその場で“つくり”、参加者たちは音のが生み出す減衰や反射、ゆがみを体験するという、ボンクリならではのワークショップを体験することができた。
 また夜の【スペシャル・コンサート】には、滅多に聴けない“ボンクリ”音楽が集まった。コンサートの冒頭では舞台の上で東京混声合唱団が円陣を組み、作者不詳の「ハナクパチャプ」、メシアンの「おお、聖なる饗宴」を歌う。その響きが、コンサートホールの中で祈りに昇華して天に立ち上っていくようであった。ペーテル・エトヴェシュのバス・ティンパーノのための「雷鳴」は、演奏者であるイサオ・ナカムラの為に書かれた無伴奏ソロ曲。たった一台のティンパニを縦横無尽に操り、耳をすまさなければならいほどささやかな音から猛り狂う雷鳴まで変わるのは、まるで雷神の化身のようだ。
 ここで藤倉大が登場、実験音楽を代表する音楽家アルヴィン・ルシエによる「Sizzles」について説明があった。ティンパニの上にマメを置いておき、パイプオルガンの重低音の波動に反応してカタカタと鳴る。そのマメの鳴る音を聴くという実験音楽だ。今回は広いコンサートホールゆえにマメが見えないということで、マメが動き出すとそばにたった人が合図で手を挙げることにしたという。作曲家は意図していないのだろうそのジェスチャーがシュールさが、視覚的にも面白さを際立たせていた。
 さらに、アンサンブル・ノマドによるクロード・ヴィヴィエ「神々の島」、大友良英による新曲、坂本龍一の合唱曲「Cantus Omnibus Unus」と、その音素材を即興音楽祭【プンクト・フェスティバル】を開催している音楽家、ヤン・バングとエリック・オノレに、藤倉大が加わるライブ・リミックス。そしてコンサートの最後には藤倉大のチェロ協奏曲(アンサンブル・ヴァージョン)が日本初演されるなど、盛りだくさんの内容だった。
 コンサート直後、藤倉大は「今日1日、全てが問題なく進んで、本当にうれしかったです。昨日まで何が起こるのか全然わからなかったので。豆が動くか、とか(笑)。会場に人が入って、1度温度が上がるだけで、マメが動く音程が変わるらしいんですよ。ルシエ自身もこんなに大きなところでやるとは思っていなかったでしょうね。実験音楽ですから。普段ひっそりやっているものを、こういう大きなところでできて、個人的にはうれしかったです。個人的に聴きたいものだけを集めたんですよね。聴いたことがないものばっかりでした。フェスティバルを通じてのテーマというようなことは特になくて、ただ、“新しい音”ということだけを意識して決めていきました」とコメントしていた。
 東京芸術劇場が昨年度(2017年度)から開催している本フェスティバルは、“今の時代の音楽をより多くの人々に楽しんでいただきたい”という思いから始まり、よくある音楽フェスティバルとは全く違う、“音”の祭典とも言える天衣無縫な発想でつくられたプログラムが満載だ。新しい音の渦に巻き込まれるこのフェスティバル、アーティスティック・ディレクターの藤倉大はスタニスワフ・レムの名作『ソラリスの陽のもとに』をもとに作曲した自身初のオペラ《ソラリス》の日本初演を間近に控え、日本での活躍の場を目にする機会も増えている。来年以降の継続が、ますます待たれるフェスティバルとなっていると言えるだろう。今後も続報を待ちたい。Text:yokano

◎イベント情報
【“Born Creative” Festival 2018】
2018年9月24日(月・祝)
東京芸術劇場

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