JOY-POPS(村越弘明+土屋公平)ビルボードライブ公演レポート ひとりの音楽ライターが、18年ぶりの“ふたり”のステージに見たもの 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

JOY-POPS(村越弘明+土屋公平)ビルボードライブ公演レポート ひとりの音楽ライターが、18年ぶりの“ふたり”のステージに見たもの

このエントリーをはてなブックマークに追加
Billboard JAPAN

JOY-POPS(村越弘明+土屋公平)ビルボードライブ公演レポート ひとりの音楽ライターが、18年ぶりの“ふたり”のステージに見たもの

JOY-POPS(村越弘明+土屋公平)ビルボードライブ公演レポート ひとりの音楽ライターが、18年ぶりの“ふたり”のステージに見たもの


 「懐かしい友達と久々の再会」。いや、それが「懐かしい友達」だったか「古い友達」だったか、「再会」という言葉を使ってたか「会ってくる」だったか「会ってきた」だったか、正しい文言は覚えてない。だが、あれは一昨年だったか、自分がフォローしている土屋公平のツイッターで彼はそのようなことを確かにつぶやいていて、その“友達”がHARRYこと村越弘明のことだとすぐにピンときた自分は思わず声が出そうになるほど興奮したものだった。
ライブ写真(全3枚)

 かつて同じバンドでプレイしていたギター&ヴォーカルとギタリスト。言うまでもなくそのバンドとはThe Street Slidersのことだが、そこでのふたりの関係性というかあり方は、例えるならミックとキース、清志郎とチャボのように切っても切り離せないもの。言葉がなくとも相手が何を考えているかわかる、そんな魂の結びつきを感じさせる濃密なものだったのだ。がしかし、ふたりが同じステージに立ったのは2000年10月29日の武道館、スライダーズの解散公演が最後。以来、ただの一度も混ざり合うことがなく、再びふたりが同じステージに立つ日がいつか来るのか来ないか、それは神のみぞ知るといったところだった。

 時は過ぎて2018年。今年はスライダーズのデビュー35周年だったわけだが、それを記念してということなのか、果たしてふたりは再び互いのギターと歌と目を合わせることとなった。奇跡なんて言葉さえ使いたくなる、JOY-POPSとしての全国ツアー。バンドではなく、ふたり。「そうきたかぁ」という驚き、喜び、それにある種の感慨を、自分を含めた大勢のロック好きが抱いたことだろう。

 4月に浜松からスタートしたツアーは全25箇所。チケットは大半の場所が一瞬で完売となり、観ることのできなかったファンが全国にたくさんいた(かくいう自分も涙をのんだひとりだった)。各所でふたりが熱狂的に迎えられ、リラックスした雰囲気を醸し出しながらも大きな感動を生んでいる様子はSNSで伝わってきた。ふたりがとても嬉しそうにプレイしていたことも。実際、彼らにとっても手応えは思っていた以上のものだったのだろう。だからか全国ツアーが終わると、JOY-POPSは続いていくつかの夏フェスにも出演した。

 自分は7月28日の【フジロック(フィールド・オブ・ヘブン)】で遂に観ることができた。「HARRYとあちこち回ってフジロックに辿り着きました。HARRYと同じステージに立つのは18年ぶりらしいよ。たまにのことなので、ふたりだけどメンバー紹介を。ヴォーカル&ギター、村越弘明! HARRY!」(土屋)。「じゃあオレからも。歌とギター、ルーツにこだわり続ける男、ファンキー・土屋公平!」(村越)。そんな和やかな言葉のやりとりと笑顔にも相当グッときたが、リズム隊がなくともふたりの音と声が合わされば極上のグルーヴが生まれるというその事実を目の当たりにして震えながら感動した。

 夏フェスが終わってもふたりの旅は嬉しいことに終わりじゃなかった。ビルボードライブ東京(2日間・4ショー)とビルボードライブ大阪(2ショー)。自分は9月23日の2ndステージを観ることができた。

 土屋は麗蘭を始め、これまでもビルボードライブ出演は度々あるが、村越が同会場に出るのはこれが初めてのこと。開演時間となって照明が落ちると、ふたりは3階からゆっくりゆっくり階段を下りてきてステージに上がった。向かって左手に土屋、右手に村越。オープナーは「BUN BUN」で、間奏でそれぞれが前に一歩踏み出すと、そこでまた大きな歓声が。続く「マスターベイション」(オリジナルはサビでその言葉を数回繰り返すが、JOY-POPSではそこを削ぎ落とし、強調はしない)を演奏し終えると村越は笑顔で歓声に応えながら「どーもこんばんは。JOY-POPSです」と一言。そこから「Angel Duster」「GET OUT OF MY MIND」と続け、ふたりの声が重なる「かえりみちのBlue」は、そのツインヴォーカルのあり方含めて昔のそれより遥かに味わい深さが増していた。次の「すれちがい」もまたしかり。ダークなトーンのジャパニーズ・ブルース。その途中、ワウペダルを踏みながら音を鳴らす土屋を赤のライトが照らし、曲が終わると村越が改めて「ギター、土屋公平!」と紹介した。

 「CDができまして」。村越がそう言うと、土屋がその言葉を引き取り、「JOY-POPSをやることになって、始めは地元の立川あたりでちょこっとやろうと思ったんだけど、全国ツアーを組んでもらいまして。それでBlu-rayもDVDも作って、Tシャツも作って、結局全部やることになりました。みなさんのおかげです。ありがとう」。かつてはライブ中にまったくMCをしなかったふたりだったが、こうして観客たちへの感謝の言葉が今はとても自然に出ることに気持ちが和む。違和感などまったくない。心からそう思っているからこそ、村越は何度も人差し指を観客たちに向けてふったり声援に笑顔で応えたりするし、土屋も何度も「サンキュー」と繰り返すのだ。因みに、ふたりが話したBlu-rayとDVDは『Wrecking Ball』のタイトルで9月26日に発売されたもので、それはツアーの追加公演となった有楽町ヒューリックホールの模様を収録したもの。同タイトルで同時発売されたCDはツアーのベストテイクを集めたものだ。

 話をライブに戻すと、中盤ではツアーでずっとやってきた2曲の新曲を披露。村越が書いた(表題通り以前の彼とは違う風が吹いているような歌詞の)「新しい風」と土屋が書いた3コード・ブルーズ「デルタのスー」だ。そして村越の「OK! ロックンロール!」という一声から「No More Trouble」へ。たちまちそこにドライブ感が生まれる。途中、村越の掛け声と共に土屋がステージ前方に踏み出て、同時に村越も同じように踏み出し、それぞれが「これぞロックンロール」といったフレーズをゴキゲンに弾き鳴らす。さらに間奏部分になると、ふたりはジャンプするような軽やかさで交差し、村越がステージ向かって左側へ、土屋が右側へ移動。この交差する瞬間のかっこよさといったら! そして「最後の曲です。Special Woman!」という村越の声を合図にステージ後方の幕があき、1階フロアの観客は総立ちに。リズム隊がいなくとも、そこで鳴っている音というかグルーヴのあり方は、まるでバンドのそれのようだった。

 当然、鳴りやまない拍手。アンコールに応えてステージにあがるふたり。すると土屋は、この回の登場シーンを振り返って、「“せっかくだから上から出てみませんか?”って言われてね。HARRYが階段から転がっちゃわないかと心配したんだけど。まあ、転がり続ける男ってことで」。それを聞きながら村越はニヤリ。そしてふたりのギターリフがひとつのカタマリのようになって耳に飛び込んでくる「カメレオン」を。やはりこの曲の始まりのかっこよさは、イントロのかっこいい曲がいくつもあるスライダーズ・ナンバーのなかでも最上と言いたくなるものだ。

 「それじゃもう1曲やります」。村越がそう言って演奏を始めた最後の曲は「Boys Jump The Midnight」だったが、恐らくこのツアーで演奏された数々のスライダーズ・ナンバーのなかで最もアレンジを大きく変えていたのが、この曲だったんじゃないだろうか。元は勢いよくドライブするアッパーな曲だが、JOY-POPSが演奏するその曲は泥臭いブギ。イントロを聴いただけではわからないほどテンポもムードも変わっているが、そこからある種の成熟が感じられ、また道は続いていくのだというような感覚が音に表れてもいて最高なのだ。最後のその曲を終えると、ふたりはまた何度も観客の拍手と声援に腕をあげて応え、そしてステージ中央で手を取り合って高くあげたのだった。

 個人的な感覚を書くと、7月にフジロックで初めて観たときは、ふたりが登場した瞬間から観ている間、ずっとさまざまな思いが頭の中を巡っていた。これまでふたりが別々に歩んできた道を思い出したりもした。そして最後は涙した。が、今回はもっと自然に、ふたりが今ここで演奏しているということを受け止めていた。18年間、別々の場所にいたことが嘘のようにすら思えた。それぞれのソロバンドや別ユニットはどれもいいが、でも土屋は村越の横で弾いている姿が一番自然で生き生きしているように感じられたし、同じく村越も土屋の横で歌って弾いている姿が一番自然で生き生きしているように感じられたし……。自然で、馴染んでいて、だからリラックスした雰囲気も醸し出しつつ、音を合わせれば極上のグルーヴが生まれる。しかも、何より今の彼らは気持ちが外に開かれている。素晴らしい観客たちがそこにいるからいいライブができることを実感しながら演奏している。この日、終演後には驚いたことにサイン会も開かれたのだが、それもまたそういう実感の表れでもあるのだろう、きっと。
 
 さて、次にふたりはどのような形で音と歌とを絡ませるのか。わからないが、どんな形にせよ“続き”は必ずある。絶対、ある。そういう希望を感じさせるライブだった。

文:内本順一
写真:三浦麻旅子


◎公演概要
【JOY-POPS(村越弘明+土屋公平)】
ビルボードライブ東京 2018年9月23日(日)・26日(水)
ビルボードライブ大阪 2018年9月29日(土)
※いずれも終了

◎リリース概要
〈ライブ映像作品〉
『JOY-POPS 35th Anniversary Tour“Wrecking Ball”@ HULIC HALL TOKYO』
2018/9/26 RELEASE
LIVE Blu-ray(1Disc+ポストカード5枚セット):LNXM-1263 7,407円(tax out.)
LIVE DVD(1Disc+ポストカード3枚セット):LNBM-1264 4,630円(tax out.)

〈ライブCD〉
『Wrecking Ball JOY-POPS 35th Anniversary Tour』
2018/9/26 RELEASE
2Disc+12Pブックレト
URC-03,04 3,704円(tax out.)

オフィシャルストア:https://joy-pops.com/


トップにもどる billboard記事一覧

続きを読む


関連記事関連記事
このエントリーをはてなブックマークに追加
あわせて読みたい あわせて読みたい