『7』デヴィッド・ゲッタ(Album Review)

2018/09/18 12:05

『7』デヴィッド・ゲッタ(Album Review)
『7』デヴィッド・ゲッタ(Album Review)


 日本でも、ゼッドやカルヴィン・ハリスと同等、それ以上の高い知名度を誇るフランス・パリ出身のDJ/音楽プロデューサー=デヴィッド・ゲッタ 。ミュージシャンとしてブレイクしたのは2000年代に入ってからだが、自身の作品をはじめてリリースしたのは、遡ること28年前の1990年。キャリアでいえば、前2者とは圧倒的な差があり、ベテランというか、もはやレジェンドの域に達している。
 1967年11月生まれ、再来月で51歳のバースデーを迎えるデヴィッド。ディスコの専属DJとして活動し始めたのが17歳の時、西暦でいうと1974年だというから驚かされる。ファンク~ディスコに移行した70年代、ニューウェイヴからニュージャック・スウィングが流行した80年代、ヒップホップとR&Bがフロアを揺るがせた90年代、そしてEDMの時代へ……。流行の移り変わりを目の当たりし、すべての時代を駆け抜けてきたからこそ、多様なジャンル・サウンドを生み出せるのも納得できる。
 そんな彼のルーツとなったのは、フレンチ・ハウス。「確実で凄い作品を作りたい」と意気込んだ本作『7 / セブン』は2枚組でのリリースで、ディスク2は“ジャック・バック”名義で制作された自身の原点=フレンチ・ハウス~ディープ・ハウスが満載の内容になっている。ヒット曲を輩出した近年の作品と比較すれば、このアルバムがデヴィッド・ゲッタのものだと気付かないリスナーも多いかもしれない。
 そのディスク2には、NYハウスの代表格=シーシー・ロジャースとコラボした「フリーダム」があるが、その他ゲスト・クレジットは一切なく、制作・プロデュースも全て自身が手掛けている。冒頭の「リーチ・フォー・ミー」から「ザット・2・セイ」まで、途切れることなく続くダンス・ミュージック。原点に回帰した音であっても古臭さを感じさせず、あっという間に11曲を聴き終えてしまう充実感。フレンチ・ハウスが擁する普遍的な魅力を、今一度証明してみせた堂々の傑作といえるだろう。
 ヒット狙いの作品に、お茶を濁された往年のファンを“ジャック・バック”として挽回し、自身の音楽を追及。そして、“デヴィッド・ゲッタ” としては、多くのリスナーを楽しませる作品を作る。凄いアーティストだ。逆転してしまうが、もう一方のディスク1は、世界45か国のiTunesチャートで1位を獲得した先行シングル「2U feat.ジャスティン・ビーバー」はじめ、今をトキめくゲスト陣、最先端のサウンドを取り入れた内容になっている。
 マシュメロとコラボした「フレンズ」が大ヒット中のイギリスの女性シンガー=アン・マリーをフィーチャーした「ドント・リーヴ・ミー・アローン」は、その「フレンズ」をよりポップにしたエレクトロ・ポップ。彼女のキャラクターが良い具合に活かされた、アルバムの1曲目に相応しいタイトルだ。その他にも、昨年~今年にかけてヒット曲を連発しているアーティストたちが、こぞって参加している。
 イギリス(7位)やスイス(2位)、スウェーデン(9位)など、ヨーロッパ各国でTOP10入りした先行シングル「フレイムス」には、「タイタニウム」を大ヒットさせたシーアが、前作『リッスン』からの大ヒット曲「ヘイ・ママ」で共演したニッキー・ミナージュは「グッバイ」で、再びタッグを組んでいる。その「グッバイ」には、R&Bシンガーのジェイソン・デルーロと、 J.バルヴィンとのコラボ・チューン「ミ・ヘンテfeat.ビヨンセ」の大ヒットで知名度を高めたウィリー・ウィリアムも参加。同曲は、不屈の名曲「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」のフックがサンプリングソースとして使われている。シーアは、 アルバムのエンディング曲「ライト・ヘデッド」でもボーカルを担当している。
 アメリカで再ブレイク中のダンスホールをベースにした「セイ・マイ・ネーム」には、カントリー・デュオ=フロリダ・ジョージア・ラインと「メント・トゥ・ビー」を大ヒットさせたビービー・レクサと、7月に全米1位を獲得したカーディ・Bのシングル「アイ・ライク・イット」に起用された前述の J.バルヴィンが参加。 J.バルヴィンが単独でボーカルを務めるもう1曲の「パラ・ケ・テ・ケデス」は、最近のダンスホールやレゲトンではなく、70年代あたりのルーツ・レゲエに近いシブい仕上がり。これも、今までのデヴィッド・ゲッタのアルバムでは聴けなかったタイプの曲だ。売れっ子ラッパーのリル・ウージー・ヴァートとGイージー、日系エレクトロ・ハウスDJのスティーヴ・アオキが参加したヒップホップ・ソング「モットー」も、良い意味でデヴィッド・ゲッタらしからぬ作品。
 誰もが知る人気ミュージシャンのみならず、ミディアム・ポップの「ブレイム・イット・オン・ラヴ」には、ジャスティン・ビーバーも絶賛した19歳の新星マディソン・ビアーが、哀愁系メロウ「バトル」にはカナダ出身の美女シンガー=フォージアが、米カリフォルニアの女性シンガーソングライター=スザンヌ・ヴェガの「トムズ・ダイナー」(1981年)をサンプリングした「レット・イット・ビー・ミー」には、米ウィスコンシン州出身のエレクトロ・ポップ・シンガー、エイバ・マックスがボーカルを担当するなど、注目の若手も積極的に起用している。
 流行のサウンド・アーティストが満載の本作だが、その中でも南アフリカ出身・ダーバン出身のハウスDJ=ブラック・コーヒーとコラボした「ドライヴ」と、米カリフォルニア州出身のフィーメール・ラッパー=サウィーティーが巧みなラップ・スキルを披露する「アイム・ザット・ビッチ」では、デヴィッド・ゲッタのハウス・ミュージシャンとしての根元を垣間見ることができる。
 本作は、タイトル通り通算7作目のスタジオ・アルバムで、前作『リッスン』(2014年)から約4年振りの新作。ポップ・フィールドに参戦し一時代を築き、一通り稼ぎ倒して(?)自身のやりたいことを遂に実現できたアルバム、ではないだろうか。最前線に居続けることは相当苦しいことだと思う。こういう活動の仕方が、アーティストとしては最高のカタチなのかもしれない。
 国内盤は10月10日に発売予定。ボーナス・トラックとして、ショーン・ポール&ベッキー・Gとのコラボ曲「マッド・ラヴ」や、チャーリーXCX&フレンチ・モンタナ をフィーチャーしたアフロジャックとの 話題曲「ダーティー・セクシー・マネー」も収録される。

Text: 本家 一成

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