イルミネーション煌めく摩天楼を彩るボビー・コールドウェルの甘美な歌声。時代を引き寄せたAORサウンドを楽しむミッド・サマー・ナイト

Billboard JAPAN

 親密な人と楽しむ、真夏の夜の“ファースト・コール・ステージ”――。今年の1月にもゴージャスなライブを堪能させてくれたボビー・コールドウェルが、約半年のインターヴァルを経て、再びステージに戻ってきてくれた。
ライブ写真(全12枚)

 『ビルボードライブ東京』にとっては、スタイリスティックスと並び、もはやレギュラー・アーティストのボビー。彼のロマンティックで洗練された世界観は、1980年代にAORをリアルに体験した世代にはもちろん、タキシードやジャック・ムーヴス、ロス・ステラリアンス、さらには今月半ばにライブが予定されているヤング・ガン・シルヴァー・フォックスといった近年のヴィンテージ・ソウル・リヴァイバルの“原点”として、若い世代からも注目を集めている。

 マンハッタン生まれながら、マイアミで育ったボビーならではの、トロピカル・フレイヴァー漂うAOR/ブルー・アイド・ソウル。心地好いリラックス感と都会的なテイストが絶妙なバランスで混じり合ったユニークな音楽性は、楽曲の質の高さだけでなく、洒脱なアレンジが抗しがたい魅力を放っている。時代に合わせたマイナー・チェンジを施しながらも、ブルー・アイド・ソウルとしての本質を微塵も変えることなく、AORの王道を突き進んできたボビー・コールドウェル。その頑固とも言えるスタンスが再び時代を引き寄せ、ヴィンテージ・ソウル・リヴァイバルの波に乗って自身も2015年にはジャック・スプラッシュと2人でクール・アンクル(イカしたおじさん!)という茶目っ気満点の名前を冠したプロジェクトまで実現させてしまった。アウトプットは変えながらも、新しい世代にとっての“cool”な音楽として存在感を増している彼の楽曲は、もはや時代を超えて輝きを放つ“スタンダード”と言って差し支えないだろう。

 意外にも今回はレゲエ調のリズムで幕を開けたステージ。初っ端からエモーショナルに歌い上げるボビー。その喉はまったく衰えを知らず、時折、スティーヴィー・ワンダーを想起させる艶やかでコクのある声が会場の隅々まで響いていく。

 カフスを外したシャツの袖を上着の外に折り返して細身のスーツを洒脱に着崩し、さながら“トロピカル・ダンディ”のように振る舞うボビー。その背後では歌心溢れる5人が繰り出す丸みを帯びた音が織り重なり、エレガントな響きとなって会場を包んでいく。

 前半から初期のヒット曲を惜しげなく披露するだけでなく、クール・アンクルのナンバーも――。回るミラーボールが反射する煌びやかな明かりも違和感がない。以前のステージよりもリズムが強化された印象があるものの、波音だけが聞こえる夜のビーチから吹いてくるやわらかい風をイメージさせる音の揺らぎや旋律が、僕たちの身体を心地好く緩めていく。そこに漂う追憶感覚。どの曲にも耳の奥で鳴り続けているようなメロディラインとメロウな歌詞があり、ステージの上のボビーを見つめながら、気が付くと自然と口ずさんでいる。彼の歌は身体の芯まで染み込み、記憶や想い出と深く結びついていくのだ。

 また、ボビーの音楽は大切な人との距離を縮めてくれる。その“効果”を理解しているファンが多いからだろう、DUOシートも予約で埋まっている。なぜなら、音楽を楽しむ2人の関係を親密にし、甘く寛いだ雰囲気を満喫させてくれるからだ。ボビーが歌う“大人のラヴ・ソング”が、きっと2人の気分を心地好く高揚させてくれるのだろう。そんな、成熟した音楽ファンには堪らない魅力を備えているボビーズ・ミュージック。今宵も会場にはラグジュアリーなムードを漂わせたカップルが目立った。

 78年にリリースされた『イヴニング・スキャンダル』にまつわるエピソードや日本との関わりを思い出深く語りながら進行していった、僕たちに向けたスペシャルなライブ。今回のステージは、4日の今日と5日に東京で、7日には大阪で予定されている。今年の夏、親密なパートナーとロマンティックな想い出を刻む、またとない機会に違いないボビーのパフォーマンスを、リラックスした気分で楽しんでみては?


◎公演情報
【ボビー・コールドウェル】

<ビルボードライブ東京>
8月3日(金)※終了
1st Stage 開場 17:30/開演 18:30
2nd Stage 開場 20:30/開演 21:30
8月4日(土)・5日(日)
1st Stage 開場 15:30/開演 16:30
2nd Stage 開場 18:30/開演 19:30

<ビルボードライブ大阪>
8月7日(火)
開場 17:30/開演 18:30
開場 20:30/開演 21:30

詳細:http://www.billboard-live.com/


Photo:Ayaka Matsui

Text:安斎明定(あんざい・あきさだ) 編集者/ライター
東京生まれ、東京育ちの音楽フリーク。今夜のような“大人のラヴ・ソング”を楽しむときにうってつけなワインとしてお勧めしたいのは、やはりフランチャコルタ。イタリアで造られる瓶内二次発酵の高級スパークリング・ワインは、シャンパーニュにも劣らぬクリーミーな泡と、爽やかなアロマが熱帯夜を快適にしてくれる。ステージの後ろに広がる摩天楼のイルミネーションを眺めながら、親しい人と肩を寄せ合って口に運べば最高の味わいを堪能できるはず。少し膨らみのあるグラスに注いで、香りを意識しながら楽しんでみて。

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