間近で目撃する“1つの終焉” 日本では最後になったソフト・マシーンの超絶パフォーマンスを記憶に刻み込む真夏の宵 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

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間近で目撃する“1つの終焉” 日本では最後になったソフト・マシーンの超絶パフォーマンスを記憶に刻み込む真夏の宵

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間近で目撃する“1つの終焉” 日本では最後になったソフト・マシーンの超絶パフォーマンスを記憶に刻み込む真夏の宵

間近で目撃する“1つの終焉” 日本では最後になったソフト・マシーンの超絶パフォーマンスを記憶に刻み込む真夏の宵


 至近距離で目撃する、1つの“終わり”。
ライブ写真(全16枚)

 まさに至高のアンサンブル。張り詰めた空気がステージに漂い、鉄壁のスキルに裏打ちされた各メンバーの音が崇高なレベルで絡み合う。ダイナミックに表出されていく心地好い緊張感。まるで欧州発の批評主義をサウンドで表現しているかのようなビターな音楽性は、他方で深い官能も湛えている。このアンヴィバレンスな空気感と肌ざわりは、ヨーロッパのプログレッシヴ・ロックならではと言って差し支えないだろう。

 精緻でありながらも革新的な演奏でミュージック・シーンに大きな影響を与え続けてきた英国のプログレッシヴ・ロック・バンド=ソフト・マシーンが、半世紀に及ぶキャリアの区切りとして最後の日本ツアーを敢行した。

 ウィリアム・バロウズの著作から名前を採用したソフト・マシーン。1966年に始まるバンドのキャリアは、激しいメンバーの入れ替えに呼応するように、サイケデリック~プログレッシヴ/コンテンポラリー~ジャズ~フュージョンと、その表現手法を目まぐるしく変えてきた。時代の空気を敏感に読み取り、自らの音楽スタイルに反映させてきた彼らは、解散状態の時期やソフト・ウェア、ソフト・ワークス、ソフト・マシン・レガシーなどの“変名時代”を経て、2015年から現在の名義に復帰しているが、どの時代にも一貫しているのは、バンド・サウンドによる音楽表現の領域を広げていこうとする野心的な姿勢だろう。英国独自の牧歌的なニュアンスを感じさせるカンタベリー・ミュージックを基礎としながらも、常に進化することを自らに課し、決して現状に安穏としない。そのスタンスこそが彼らを真にプログレッシヴな存在にしているのは間違いない。

 ロバート・ワイアット、デイヴィッド・アレン、ケヴィン・エアーズ、ヒュー・ホッパーといったミュージシャンを輩出したソフト・マシーンの現在のメンバーは、ドラムスのジョン・マーシャルを筆頭とする4人。さすがに結成時のメンバーこそいないが、バンドとしてのスピリッツは確実に受け継がれ、むしろ磨きがかけられている。

 だが、このツアーを最後に、現在のリズム隊であるロイ・バビントンとジョンの引退が決まっている。そんな彼らのフェアウェル・ツアー。驚くことに最新作を携えてステージに上がったソフツの、語り草になるに違いない今回のパフォーマンスを決して見逃すことはできないだろう。

 「この曲は世界中で初めて、日本で演るんだ」――演奏のあとにそう紹介した新作のタイトル曲による幕開け。ソリッドなドラムスのビートにアグレッシヴなギターのリズムが鋭く切り込んでいく。さらには、途中から演奏に加わったゲストのゲイリー・ハズバンドが奏でるシュールでありながらもロマンティックな旋律が会場に美しく響きわたっていく。その佇まい、サウンド、存在感。ベテランらしい、まさに職人的な楽器へのアプローチも見事だ。

 時折、アイ・コンタクトを交えた真のミュージシャンシップが漂うステージに、ファンは固唾を飲んで見入り、メンバーのヴォルテージは急速に上昇していく。クリエイティヴな空気に満たされたフロアには、上気したムードが漂い始める。鳥肌が立つような臨場感。演奏による表現が、こんなにも心地好い緊張感を湛えた広がりを持つのか……。ブログレッシヴ・ロックの面目躍如たるサウンドに気分は否応なく高揚していく。

 流れる水や吹き抜ける風を連想させる、スケール感のあるテクスチャーと抒情的なメロディの紡ぎ合いが僕らを懐深く包み込んでいく。まるで青白く揺らめく炎のように、クールでありながらも“熱い”サウンドに飲み込まれていく快楽。秘められた深い官能性と抒情性に浸りきった時間が瞬く間に過ぎていく。斬新なアレンジで蘇った初期の楽曲や、今回だからこそ聴きたい名刺代わりの1曲といったバンドのレガシーをアップデートさせながら、その一方では積極的に新しいナンバーを繰り出してくる。常に前に進もうとする意志には強い精神性が宿り、微塵も錆び付いてはいない。“フェアウェル”の文字を超えた、演奏者のメッセージと聴き手の要望が重なり合ったステージ展開。僕は彼らの勇姿をしっかり記憶に刻み込むことができた。

 図らずも台風接近の最中に敢行された、90分に及ぶ“怒涛のプログレッシヴ・ロック”。まさに一期一会のフェアウェル・ツアーは、東京で29日の今日、大阪では31日に、それぞれ2ステージずつ演奏される。毎回、ステージ展開も異なるに違いないソフト・マシーンのライブを記憶に刻み込む最後のチャンス。後悔せぬよう、万事繰り合わせて参加を!


◎公演情報
【ソフト・マシーン
~Farewell JAPAN Tour~】
ビルボードライブ東京
2018年7月28日(土)- 29日(日)
1st 開場15:30 開演16:30
2nd 開場18:30 開演19:30

ビルボードライブ大阪
2018年7月31日(火)
1st 開場17:30 開演18:30
2nd 開場20:30 開演21:30

詳細:www.billboard-live.com


Photo:Yuma Totsuka

Text:安斎明定(あんざい・あきさだ) 編集者/ライター
東京生まれ、東京育ちの音楽フリーク。これまでにない異常な暑さを経験している今夏。暑気払いの工夫をワインにも……と考え、今年はドライ・サングリアを炭酸で割ってペティアン風にしてみたり、はたまたモヒートのレシピに倣ってミントの葉を潰して入れたり、ライムを搾ってみたり。あまり堅苦しく考えず、暑さ凌ぎの飲み方をいろいろ試している日々。プロセッコやランブルスコなどをヒントに、好みのスティル・ワインに氷やソーダを混ぜてみるのも一興。カジュアルに楽しみながら、ヒートアイランドの酷暑を乗り切りましょう!


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