a flood of circle、結成12年目にして到達したひとつの集大成 ツアーファイナルのレポートが到着
a flood of circle、結成12年目にして到達したひとつの集大成 ツアーファイナルのレポートが到着

 a flood of circleのツアー【a flood of circle TOUR -Here Is My Freedom-】が、7月8日マイナビBLITZ赤坂でファイナルを迎えた。
a flood of circle ライブ写真(全11枚)

 新ギタリスト・アオキテツが正式加入後、初のアルバムと初のツアー。結成12年目にして「初」を迎えるバンドも珍しいが、まさしく日々生まれ変わるような新鮮さで旅を続けてきた彼らが到達した、ひとつの集大成と言える記念すべきライブとなった。

 開演予定時刻を少し回った頃、ツアータイトルが描かれたロゴに不穏なノイズが走り、徐々にフロアが暗転。ビビッドな照明とともに“Where Is My Freedom”のスリリングなイントロが響き渡り、そこに黒を基調とした衣装の4人が登場、おのおの楽器を携えて放つその一音の音圧にまず圧倒される。“Blood&Bones”“Lightning”とニューアルバム曲が続き、さっそくステージ前方に飛び出してギターを弾き倒すアオキテツは、もはや「新メンバー」という肩書も不要な存在感だ。

 そんな彼を切り込み隊長に、佐々木亮介が攻撃的なボーカルと研ぎ澄まされたリリックで煽り、さらに火を点けるようにHISAYOと渡邊一丘の強靭なリズム隊が加速していく。跳ねるビートにギターリフが絡む生々しい躍動感に、新曲たちがこのツアーでどれだけ磨きあげられてきたかが直に伝わってきた。

 ヒートアップする会場が手拍子でひとつになった“Dancing Zombiez”では、佐々木がアオキの胸をギターのヘッドで撃ち抜く仕草も。そうして一体感を増していくステージとフロアを一面明るい照明が照らした“Leo”の威風堂々たるロックンロールが、全員の心も繋げていく。

 中盤、「みなさんの憂鬱を俺たちに預けて、楽しんでいてください。……愛を込めて」と披露されたのは“Summer Soda”。弾ける炭酸に重ねた夏の夜の儚さが、切ないメロディとともに沁み渡る。そして続く“再生”で歌われる、過去をも包み込む深い愛情。まっすぐ突き進む熱さだけではない、その裏側にあるどうしようもない哀しみや叙情性が、a flood of circleのもうひとつの顔だ。ふとした感情に寄り添う、この平熱の表現があるからこそ、灼熱のロックンロールが生きる。ソロパートをピンスポットの照明でひとり歌う佐々木の姿も印象的な、ハイライトシーンのひとつだった。

 アットホームに笑いも起きた4人でのMCタイムを挟み、佐々木が改めて「テツが最後のメンバーなんですよ。これが最終形態」「俺たちにとっては始まりなんで、よろしくどうぞ!」と宣言し、ライヴは後半戦へ。文字通りの宣戦布告曲“Rising”から、“The Beautiful Monkeys”“ミッドナイト・サンシャイン”と、ノンストップで攻勢に一転。ギターを置き、タンバリンを打ちながら自由に動いて歌う佐々木を、アオキの鋭いカッティングギターが支える。4人編成ならではのアレンジに、過去の曲がまた新しい威力を持って生まれ変わっていくのを感じると、これから全曲に彼の血が巡ってくのが楽しみでならない。

 そんなアオキもマイクを握ってリリックに加勢した“One Way Blues”では、佐々木がオーディエンスの上に立ち絶唱。そのパフォーマンスのみならず、バンド一体となって渦巻くグルーヴの中で、彼の声が、言葉が、自由に暴れるさまは圧巻だ。さらに“プシケ”での「最終形態」のメンバー紹介を讃えるように会場の熱気はあがり続け、赤いテープの特効が輝いた“ミッドナイト・クローラー”で、熱狂は最高潮に達した。

 そして本編ラストを飾ったのは、再び優しく愛を歌う“Wink Song”。ロックンロールが繋ぐ、今この場にいる全員が感じている絆を肯定するような明るい光の中、メンバーは誇らしげな顔でステージをあとにした。

 アンコールの合間には、11月にUNISON SQUARE GARDEN・田淵智也とタッグを組んだシングルが発売されること、さらに11月の東名阪ワンマンツアー、来春のフルアルバムまでが告知された。止まらないa flood of circleの未来に一際大きな歓声があがる中、4人が再び登場。佐々木は「(シングルは)まだ録ってないけど(笑)」と前置きしつつ、未来に向けてぶっ飛ばし続けていきます」と不敵に言い、もう一度オーディエンスを煽って“見るまえに跳べ”、そして会場全体を力強いシンガロングが揺らした“ベストライド”へ。バンドとオーディエンスが高めあい、ともに「ベスト」な瞬間をその手で更新していく光景があまりに眩しい。

 ダブルアンコールに応え、その相思相愛っぷりをさらに昇華した“I LOVE YOU”では、かつてないほど笑顔が溢れる、ピースフルな空間が生まれていた。バンドが歩んできた歴史の先に辿り着いた「今」、そしてそこから見る未来の夢――すべての瞬間を全員が祝福するようなエンディング。新しいアーティスト写真の笑顔が、この瞬間を予測していたようにぴったり重なった。しかし、このエンディングはそのまま、新たな旅の始まり。ここからまたがむしゃらに転がり続けていく道の先で、彼らはまだまだベストを更新し、新しい光景を見せてくれるに違いない。

Text by 後藤寛子
Photo by 新保勇樹

◎リリース情報
シングル『タイトル未定』
2018/11/7 RELEASE
TECI-1599 2,000円(tax out)

◎ツアー情報
【a flood of circleの3日間の悪夢】
2018年11月14日(水)愛知・名古屋RAD HALL
2018年11月15日(木)大阪・Banana Hall
2018年11月17日(土)東京・渋谷CLUB QUATTRO