【agehasprings】決して流行りでは終わらせない「BTS」が世界を虜にする魅力とは
【agehasprings】決して流行りでは終わらせない「BTS」が世界を虜にする魅力とは

 SE SO NEONやHYUKOHといった韓国インディーシーンが盛り上がっている中、韓国アイドル勢も息を吹き返してきたように見える2018年の上半期。2017年にリリースされた『LOVE Yourself 承“Her”』のリード曲「DNA」が【Billboard HOT 100】 の67位にランクインし、当時のK-POPグループの最高記録を樹立。また2018年5月にリリースされた『LOVE YOURSELF 轉 'Tear'』が韓国歌手として初めて【Billboard 200】の1位を記録。更には先日発表されたビルボードジャパン 2018年上半期チャート【TOP ARTISTS】では3位に選ばれるなど勢いが止まりそうにないBTS(防弾少年団)。今回は4月にリリースされた日本オリジナルのアルバム『FACE YOURSELF』に収録されていて、先日発表されたビルボードジャパン 2018年上半期チャートの【Japan Hot 100】で10位にランクインしている「MIC Drop」について考えていこうと思う。

 チャートアクションとしては、同楽曲のJapanese ver.が収録された(オリジナルver.は昨年の9月18日リリースのアルバム『LOVE Yourself 承“Her”』に収録)トリプルA面シングル『MIC Drop/DNA/Crystal Snow』が2017年12月6日にリリースされ、2017年12月18日付けのHot100では見事1位を獲得、CDの売り上げも初週で37万枚を記録し、ここ日本での人気の高さをあらためて可視化したようなチャートアクションが見られた。

 また同楽曲は本格的なHip Hopのサウンドと共に、高難易度かつクールなダンスパフォーマンスも魅力の一つとなっていて、リリース後、緩やかな下降を見せるHot100のランキングに対して、YouTubeの再生回数だけはTOP50以上に長期間ランクインし続けているのも、楽曲だけではなくダンスパフォーマンスも併せてファンから愛されている事の証明であると言える。2018年5月20日に開催された【2018 Billboard Music Awards】で<トップ・ソーシャル・アーティスト賞>を受賞した際にも、当日会場で披露されたのは最新曲「FAKE LOVE」であるにも関わらず「MIC Drop」のYouTubeでの再生回数も急上昇している事から、この楽曲の人気の高さがうかがえる。またオリジナルVer.に加え、世界的な知名度を誇るDJスティーヴ・アオキをリミキサーに、世界的な人気を誇るラッパー・デザイナーを客演に迎えた「MIC Drop (feat. Desiigner) [Steve Aoki Remix]」のリリースも、K-POPの枠を越えた現在の世界的な人気に繋がっていると言える。

 では楽曲を解説していこう。
楽曲を作っているのは、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのプロデューサーPdoggを筆頭に、BTSの楽曲では常連のSupreme Boi、"Hitman" Bangといったヒットメーカーが携わっている。近年、日本のアイドルシーンでも自分たちのグループの楽曲をセルフプロデュースできるメンバーがグループの中にいる事が多くなってきているが、BTSのメンバーも同じようにJ-HOPE、RMが中心になって楽曲作りに参加している。それが説得力に繋がり表現がより伝わってくるのは言うまでもないだろう。

 サウンド面で言うとPdoggを中心にアメリカ、イギリス音楽の流行を先取りして、ヒップホップをベースにトラップやウェーブを韓国の大衆音楽に落としこんでいる。尖りすぎてないメロディーのセンスや玄人受けになりすぎない音色のクオリティーなどが上手く作られていて、K-POPとして非常にバランスのとれた作品になっている。それを表現する本人たちの歌や、シンクロダンスの技術の高さ、ビジュアル面からグループのコンセプトまでを徹底して追求しエンターテインメントにしているのが、彼らが世界中のリスナーに愛される理由だろう。

 Japanese ver.では日本語の訳詞で関わっているKM-MARKITの存在も忘れてはならない。
オリジナルの楽曲は韓国語と英語が混ざった歌詞だが、KM-MARKITが参加したJapanese ver.は、内容、言葉の韻、どれを取っても素晴らしい日本語のチョイスになっていると思う。少し言葉のニュアンスを崩して歌われているところはあるが、日本語と比べて少し響きが強い韓国語を比較的優しめな響きの日本語に置き換えられていて、違和感なくBTSのグループコンセプトである「10代、20代に向けられる抑圧や偏見を止め、自分たちの音楽を守り抜く」という意味を込めた若者へのメッセージが代弁されている。世界レベルの楽曲とダンスパフォーマンス、そしてSNSを主軸に強固なメディア戦略で人気を獲得し、躍進し続けるBTS。下半期も彼らの活躍から目が離せない。

追記
最後に、個人的な上半期ベストワンの楽曲を。
ジョン・ホプキンス「Singularity」
2008年にブライアン・イーノと共作でコールドプレイの「Viva La Vida」に楽曲提供をしたり、2013年にリリースした「Immunity」が英国最高峰音楽賞にノミネートされ話題を集めたアーティスト。彼の作る唯一無二な有機的なビートや何層にもレイヤーされて構築されたアンビエントな音像、メロディーをぜひ体感してもらいたい。Text:横山裕章(agehasprings)