『ヤングブラッド』ファイヴ・セカンズ・オブ・サマー(5SOS)(Album Review)

Billboard JAPAN

 2018年2月、およそ1年半ぶりのカムバック・シングル「ウォント・ユー・バック」をリリースしたファイヴ・セカンズ・オブ・サマーが、同曲含む通算3作目のスタジオ・アルバム『ヤングブラッド』を6月15日にリリースした。2014年のデビュー・アルバム『ファイヴ・セカンズ・オブ・サマー』、翌2015年の2ndアルバム『サウンズ・グッド・フィールズ・グッド』は、いずれも全米アルバム・チャート、そして本国オーストラリアでNo.1を獲得している。

 3作連続の快挙が期待される本作は、前2作の“ハジける若さ”が良い意味で緩和された、アーティスト志向の意欲作。エド・シーランや1Dのリアム・ペインなどを手掛ける英イングランドの音楽プロデューサー=スティーブ・マックに、カーディ・Bからセレーナ・ゴメスまで幅広く手掛ける超売れっ子のアンドリュー・ワット、アンドリュー・ワットとカミラ・カベロの「ハヴァナ」を大ヒットさせたルイス・ベル、ワンオクやリンキン・パークの作品にクレジットされたアンドリュー・ゴールドスタインなど、プロデュース陣も超強力。もちろん、メンバー4人も全楽曲の制作に携わっている。

 タイトルを高らかに叫ぶサビが耳に残る、オープニングにふさわしい「ヤングブラッド」で始まり、哀愁漂うメロディー・ラインと、ファルセットを交えた色気たっぷりのボーカル・ワークで魅了する先行シングル「ウォント・ユー・バック」、ノスタルジックな美メロのミディアム「ライ・トゥ・ミー」、トゥエンティ・ワン・パイロッツの手法をまんま引用したオルタナティヴ・ロック 「ヴァレンタイン」…と、冒頭4曲からバラエティ豊かな傑作が続き、あっという間に時が過ぎる。

 亜流っぽさは否めないが、「ヴァレンタイン」は彼らのスタイルに見事にハマった、新境地を切り開いた1曲。「エンプティ・ウォレッツ」も、映画『スーサイド・スクワッド』のサントラ盤に提供した、彼らのヒット曲「ヒーサンズ」(2016年)に酷似しているが、その戦略が吉と出た素晴らしい出来。アイドルを完全に脱皮したミディアム「バビロン」や、アシュットン・アーウィンのドラム・パートがフューチャーされた、ロック色の強い「ムーヴィング・アロング」もカッコいい。

 ザ・ウォンテッドの「グラッド・ユー・ケイム」 (2011年)や、ニッキー・ミナージュの「スターシップ」(2012年)を手掛けた、英ロンドンの音楽プロデューサー=ウェイン・ヘクター作による「ベター・マン」と攻撃的なデジ・ロック「モア」、UKロック直結の「ゴースト・オブ・ユー」も、つい最近までアイドルっぽい活動をしていたとは思えない、優れたロック・ポップ。もう「アイドルバンドの…」なんて言えないね。

 80年代風の「トーク・ファスト」や、触りの柔らかいスタンダードなロック・ポップ「イフ・ウォールズ・クッド・トーク」、彼らの代表曲「シー・ルックス・ソー・パーフェクト」(2014年)を手掛けた、ジェイク・シンクレアのプロデュースによるシンセ・ポップ「ホワイ・ウォント・ユー・ラヴ・ミー」など、これまでの5SOSらしいタイトルも無論、悪くはない。両者がバランス良く配置されているから、重すぎず、軽すぎず、聴きやすいアルバムに仕上がっている。そのジェイクとテディ・ガイガーによる共作「ウォーク・アップ・イン・ジャパン」は、日本について触れた曲。8月の来日公演では、間違いなく歌われそう。

 日本盤ボーナストラックには、「ベスト・フレンド」と 「ミッドナイト」の2曲が収録される。なお、映画『ゴーストバスターズ』のタイアップ曲として2016年7月にリリースした「ガールズ・トーク・ボーイズ」は、収録を見送られた。アルバムのコンセプトとはたしかに違うが、愉快でいい曲だったのに…

Text:本家一成

◎リリース情報
『ヤングブラッド』
ファイヴ・セカンズ・オブ・サマー(5SOS)
2018/06/15 RELEASE

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