ジョン・コルトレーン、絶頂期の完全未発表スタジオ録音作が発売決定
ジョン・コルトレーン、絶頂期の完全未発表スタジオ録音作が発売決定

 ジャズ史上最高のカリスマと称されるサックス奏者、ジョン・コルトレーンの完全未発表スタジオ・アルバムが、録音から55年の時を経て6月29日に全世界同時発売されることが明らかになった(https://youtu.be/HB2X0-V302U)。

 今回発表されるアルバム『ザ・ロスト・アルバム』(原題:Both Directions at Once: The Lost Album)は、マッコイ・タイナー(ピアノ)、ジミー・ギャリソン(ベース)、エルヴィン・ジョーンズ(ドラムス)という通称“黄金のカルテット”と呼ばれる伝説のグループで、1963年3月6日にニュージャージーのヴァン・ゲルダー・スタジオで行った公式セッションを収録したもの。レコーディングは、マンハッタンのジャズクラブ「バードランド」での2週間公演期間中の昼間に行われたが、バンドはその翌日にも同スタジオに戻り、名盤『ジョン・コルトレーン・アンド・ジョニー・ハートマン』を録音している。数々の名作を残した絶頂期のコルトレーンの姿を余すところなく捉えた、アメリカ音楽史の歴史的遺産と言っても過言ではない音源である。

 今回発表されるのは、レコーディング・セッションの記録は残っていたものの海賊盤も含めこれまで一切に世に出たことがなかった幻の音源。マスターテープの所在も不明になっていたまさに「失われた」音源だった。だが、録音終了後にコルトレーンがスタジオから持ち帰り、当時の妻ナイーマに渡していたモノラル録音のリファレンステープが彼女の遺族によって発見され、このたび録音から55年のときを経て、コルトレーンが当時在籍していたインパルス・レーベルより発表されることとなった。

 肝心のアルバムの内容だが、マスターテイク全7曲のうち、「アンタイトルド・オリジナル11383」「アンタイトルド・オリジナル11386」はコルトレーンの未発表のオリジナル曲。また、代表曲「インプレッションズ」と初録音のジャズ・スタンダード「ネイチャー・ボーイ」の2曲は、ピアノのマッコイ・タイナー抜きのトリオ編成での貴重な録音。そして、これまで非公式録音のライヴ盤でしか世に出ていなかったコルトレーンのオリジナル曲「ワン・アップ、ワン・ダウン」のスタジオ録音と、話題性抜群の内容となっている。

 今回のアルバム発表について、コルトレーンの友人であり現役最高峰のサックス奏者であるソニー・ロリンズは、「これはまるで、巨大ピラミッドの中に新たな隠し部屋を発見したようなものだ」と喜びのコメントをしている。また、現在インパルス・レーベルを管轄するヴァーヴ・レーベル・グループの社長兼CEOのダニー・ベネットは、「現在ジャズは21世紀のオルタナティヴ・ミュージックになりつつありますが、誰もジョン・コルトレーン以上にジャズの境界を壊す表現を成しえたアーティストはいません。彼は音楽の流れを変えた先見の明があり、この“失われた”アルバムは一生に一度の発見と言えます」と語っている。

 アルバムは、マスターテイク7曲を収録した通常盤と、別テイク収録のボーナス・ディスク付2枚組のデラックス・エディションの2形態でリリースされる。わずか40年の生涯ながら、ジャズ史のみならず、アメリカ音楽史に偉大な功績を遺したジョン・コルトレーンの絶頂期の演奏が堪能できる、全音楽ファン必聴の作品と言える。

 iTunesでは予約が開始となり、予約すると1曲目に収録されている未発表音源「アンタイトルド・オリジナル11383 (テイク1)」が先行してダウンロードできる。

◎リリース情報
アルバム『ザ・ロスト・アルバム』
2018/6/29 RELEASE
<デラックス・エディション>
UCCI-9295/6 3,456円(tax in.)
<通常盤>
UCCI-1043 2,592円(tax in.)
<パーソネル>
ジョン・コルトレーン(ts, ss)
マッコイ・タイナー(p)
ジミー・ギャリソン(b)
エルヴィン・ジョーンズ(ds)
※1963年3月6日、ニュージャージー、ヴァン・ゲルダー・スタジオにて録音

(c)Chuck Stewart Photography, LLC