羊文学/カネコアヤノ/SPiCYSOL/ドミコが出演【Spotify Early Noise Night vol.5】を振り返る 〈Billboard JAPAN〉|AERA dot. (アエラドット)

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羊文学/カネコアヤノ/SPiCYSOL/ドミコが出演【Spotify Early Noise Night vol.5】を振り返る

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羊文学/カネコアヤノ/SPiCYSOL/ドミコが出演【Spotify Early Noise Night vol.5】を振り返る

羊文学/カネコアヤノ/SPiCYSOL/ドミコが出演【Spotify Early Noise Night vol.5】を振り返る


 2018年5月16日、音楽ストリーミング・サービス『Spotify』が主催するイベント【Spotify Early Noise Night vol.5】が東京・代官山SPACE ODDにて開催された。毎回『Spotify』がプッシュする旬のアーティストが出演するこのイベントは過去4回の開催で、WONKや向井太一、CHAIやあいみょんなど、今まさに各方面から大きな話題を集めているライジング・スターたちを早くからフックアップしてきた。
イベント写真(全18枚)

 『Spotify』をはじめとする音楽ストリーミング・サービスの登場以降、いついかなる時でも、どこにいる時でも、誰もがあらゆる音楽にアクセスすることが可能となった今、その恩恵を受けているのはもちろんリスナーだけではない。アーティストの音楽性や活動の方針にも影響を与えているのは言うまでもないだろう。これまでの【Spotify Early Noise Night】出演者たちは、言うなれば“ストリーミング・サービス以降”を代表する新進気鋭のアーティストたちばかりだった。そして第5回目の開催となった今回も、世代や国境を越えて今後の躍進が期待できる4組がラインアップ。

 トップバッターは、塩塚モエカ(Gt/Vo)、ゆりか(Ba)、フクダヒロア(Dr)からなる3ピース、羊文学。360度オーディエンスに囲まれる形でフロア中央に設置されたステージに上がると、塩塚が「スカートの中、写真撮らないでくださいね」と一言つぶやき、ミドル・テンポなオープナー「ハイウェイ」でショーをスタート。緩やかにムードを形成していくと、続けて疾走感のある「ブレーメン」へとなだれ込む。ここまでは2月にリリースされた最新EP『オレンジチョコレートハウスまでの道のり』の冒頭の流れをなぞる形だ。ドメスティックな歌詞感とUSインディ的な浮遊感あるサウンド・プロダクション、そんな和洋折衷のコントラストを自然な形で融和させることができるのが羊文学の強みであり、彼らのような次世代型バンドを象徴する点だろう。ラストを「Step」で締めくくるまでのほとんどの曲で、静謐なクリーン・サウンドと美しく歪んだソロ・パートを嬉々として行き来する塩塚のギター・プレイにも魅せられた。

 海外オルタナ・ロックの空気を多分に吸い込んだ羊文学から、歌謡の哀愁を漂わせるカネコアヤノへの流れは面白かった。本村拓磨(Gateballers)、林宏敏(ex-踊ってばかりの国)、Bob(HAPPY)といった、最新作『祝祭』をともに作り上げていった3人のサポート・メンバーを連れて登場したのだが、これがまさに四身一体といった息の合いようで、各々が見せ場もしっかりと持つ、とても完成度の高いバンド・セットだった。ショーは、その『祝祭』からアグレッシブな歌謡ロック「ロマンス宣言」でキックオフ。この曲のパンチライン“誰かの力をかりなくちゃ”をメンバー一同でシングアロングするという、この編成ならではのアレンジもばっちり決まる。はっぴいえんどの系譜に連なる日本語ロックの現代決定版とも言える「とがる」も、軽やかなフォーク・ナンバー「春」も、バンド編成の力でアンサンブルの肉体性を強化している一方で、中性的な声質と独特なリズム・センスを持つカネコの歌の存在感も際立つ。そして「祝日」、「恋しい日々」、「アーケード」というラスト3曲は、特にライブ・オリエンテッドに仕上げられたパフォーマンスであり、4人のセンスとバックグラウンドを昇化させ、カネコアヤノ史上最もバラエティに富んだ1枚となった『祝祭』の最新モードを分かりやすく伝える3連打だった。

 続いて登場したのは、[ALEXANDROS]やBIGMAMAらを輩出したUK.PROJECT内レーベル<RX-RECORDS>から2015年デビューの4ピース、SPiCYSOL。“Surf Beat Music”を掲げる彼らは、音楽性から作品のアートワーク、本人たちの出で立ちまで西海岸カルチャーのフレーバーを一貫している。グルーヴィーなリズム・セクションをキラキラの上物が飾りつけする「Sex On Fire」のメロウな立ち上がりから、コール&レスポンスと軽快なビートでオーディエンスも巻き込むダンス・ナンバー「Cyanotype」へと繋げれば、前半2組のショーからまた雰囲気はガラッと一変。突如日の元へさらけ出されたような開放感を漂わせる。そこからチルな2曲の新曲パフォーマンスを挟んで、色気たっぷりのシティ・ポップ「Honey Flavor」でフィニッシュ。約30分という短いセットの中に、SPiCYSOLというバンドの豊かな色彩がふんだんに詰め込まれていた。この日披露された新曲「#goodday」も収録した2ndアルバム「Mellow Yellow」は、7月4日リリース。この夏を爽やかに、メロウに、ドラマティックに彩ってくれる1枚になるに違いない。

 記念すべき第5回目の開催となった【Spotify Early Noise Night】のトリを飾ったのは、ドミコ。今年3月に【SXSW】出演、そして自身初USツアーを完遂し、4月には東京・渋谷WWWにて凱旋ワンマンを開催している。なので、この時点でのドミコは怒涛のライブ・スケジュールをこなしたばかりの勢いそのまま、つまりロック・バンドとして油がめちゃくちゃ乗った状態だったのだ。初っ端から「マカロニグラタン」、「バニラクリームベリーサワー」と短尺の攻撃的なガレージ・ロックを畳みかけ、続けてキラー・チューン「こんなのおかしくない?」を投下。一種の凄みが宿った走り出しに、気づいたらもう4曲目、な状態だ。粗削りでローファイなプロダクション・センスが日本人離れしているだけに、その出音に注目が集まりがちなドミコだが、ループ・ステーションを駆使してダイナミズム溢れるギター・プレイを見せるさかしたひかる(Vo/Gt)も、地を揺るがすパワフルなドラミングでリズム・メイクを一手に引き受ける長谷川啓太も、ちゃんと確かなプレイヤビリティを持っているのだと、この濁流のようでありながら、しっかりとタイトにまとめてくる演奏を見れば気づくことができるはずだ。それ故に、オーディエンスもロックのカタルシスがもたらす没入感に浸ることができる。パーカッシブなバッキングのループを積み重ね、いつしか輪郭が滲み出したインタールードから「まどろまない」への絶妙すぎる転換には、客席からも大歓声。ラスト、アンコールに応えてドミコが披露した「ミッドナイトネオン」の爆音ギター・ソロが、帰路についた後も耳の中でこだまし続ける、余韻たっぷりのエンディングで【Spotify Early Noise Night vol.5】は幕を下ろした。

Text by Takuto Ueda



◎公演情報
【Spotify Early Noise Night vol.5】
2018年5月16日(水)
東京・代官山SPACE ODD
出演:羊文学 / カネコアヤノ(BAND SET) / SPiCYSOL / ドミコ
<セットリスト>
羊文学
1. ハイウェイ
2. ブレーメン
3. ドラマ
4. 涙の行方
5. Step

カネコアヤノ
1. ロマンス宣言
2. とがる
3. 春
4. ごあいさつ
5. 祝日
6. 恋しい日々
7. アーケード

SPiCYSOL
1. Sex On Fire
2. Cyanotype
3. Monsoon
4. #goodday
5. Honey Flavor

ドミコ
1. マカロニグラタン
2. バニラクリームベリーサワー
3. こんなのおかしくない?
4. まどろまない
5. united pancake
6. くじらの巣
-En-
7. ミッドナイトネオン


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