旧譜を活性化させる切り札?! Mr.Childrenがデジタル配信を全面解禁【Chart insight of insight】
旧譜を活性化させる切り札?! Mr.Childrenがデジタル配信を全面解禁【Chart insight of insight】

 去る5月10日にMr.Childrenがこれまでに発表したすべてのシングルとアルバムを、デジタル配信で全面解禁した。iTunesやレコチョクなどのダウンロードだけでなく、Apple MusicやSpotifyといったサブスクリプションサービスでも聴けるようになったことは、非常に画期的といえるだろう。日本ではいまだに多くの大物アーティストたちが配信サービスには慎重になっているが、昨年のドリカムや今回のミスチルの解禁が音楽シーンに与える影響は、非常に大きいと思われる。

 ただし、ミスチルのデジタル戦略は、実は今に始まったことではない。すでに10年前から配信限定シングルをリリースしてきたし、デビュー25周年を迎えた昨年には1年間限定で、『Mr.Children 1992-2002 Thanksgiving 25』と『Mr.Children 2003-2015 Thanksgiving 25』という2枚のベスト・アルバムを配信のみでリリースして話題を呼んだ。そして、その延長線上に、今回の全面解禁があるといってもいいだろう。

 この解禁の影響により、Hot100では「HANABI」が48位まで浮上している(【表1】)。この曲は10年前の2008年リリースであるが、当時のタイアップであったフジテレビ系テレビドラマ『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』が復活して第3シリーズが放映されたことにより、再び主題歌になったため、昨年の夏にも浮上している。そしてドラマが落ち着いたかと思った矢先の今回、何度めかのチャートインを果たしているのだ。実にユニークなチャートアクションを続けている楽曲といえるだろう。

 HotAlbumsに目を向けてみると、現時点での最新オリジナル・アルバム『REFLECTION』が30位まで上昇している。2015年にリリースされた本作は、発売当時ももちろん大ヒットしているが、半年ほどでチャート上位からは外れている。しかし、配信によって他のオリジナル・アルバムよりも上位にランクインしたということは、3年前のアルバムとはいえまだまだポテンシャルが高いことが証明されたのではないだろうか。

 デジタル配信、とくにサブスクリプションサービスを否定的に捉えるミュージシャンはまだまだ多いが、うまく活用すれば過去のカタログの再評価につながるし、さらにはファン層の拡大にも活用できるはずだ。今後もミスチルに次ぐ話題性の高いアーティストの参入を楽しみにしたい。Text:栗本斉