孤高のハイウェイを走り続ける漆黒のロックンロールバンド、ブラック・レベル・モーターサイクル・クラブのLA公演レポート
孤高のハイウェイを走り続ける漆黒のロックンロールバンド、ブラック・レベル・モーターサイクル・クラブのLA公演レポート

 ブラック・レベル・モーターサイクル・クラブが、2月に米ロサンゼルス、フォンダ・シアターにて行った公演のレポートが到着した。
BRMC ライブ写真(全14枚)

 2018年の初めに5年ぶりの新作『ロング・クリーチャーズ』をリリースした3ピースロックンロールバンド、ブラック・レベル・モーターサイクル・クラブ(BRMC)。制作に取り掛かったのは2015年の夏とのことだが、彼らはその間もツアーを続け、新作を披露していた。そんな彼らの新作を引っさげてのUSツアーはファンがまさに待ち望んでいたもの。メンバーのピーターが第2の地元だというロサンゼルス公演の会場は、ハリウッドにある老舗ライブハウスであるフォンダシアターだ。会場内にはライダースを着たバイカー達が多く見られ、客層はややアダルトな雰囲気。最前列にはツアーを追っかけているコアなファンがずらりと並び、彼らが中堅どころよりベテランの域に達しつつあるアーティストであるのが伺える。

 前座を務めたのはUSロックバンド、ナイト・ビーツ。2016年にリリースした「フー・ソルド・マイ・ジェネレーション」は、BRMCのロバートがギター及び共同作者として参加しており、また4月リリース予定の作品にも参加しているとこのことで、この夜のステージにロバートが飛び入り「ヴァルチャーズ」を共演し本番前の会場の熱をさらに沸かせた。

 BRMCのステージには大きなスピーカーが並べられ後方にはファッション撮影に使用するようなストロボライトが置かれている。彼らのステージを何度も見ているが間違いなく今夜も贅沢なショウになることは分かっていたし、ソールドアウトでしかもアメリカツアーラストということもあり満員のオーディエンスの熱気もハンパじゃないのが伝わってくる。1曲目の「スプーク」のピーターのギターフレーズが始まると割れんばかりの大歓声。ピーター、ロバート、リア3人の背後のライトがストロボの様に光ると会場のテンションをさらにヒートアップさせる。しょっぱなから最高でしかない。ショウは新曲を交え過去のヒットチューンをふんだんに盛り込み新旧のファンを退屈させない。

 ロバートのピアノソロから始まる「オール・ライズ」ではピアノの低音とロバートのディープなヴォイスが深い深海へと誘い、クラシックのシンフォニーからリアのドラムビートが加わるとプログレッシブな曲へ変化する。ピーターのギターリフに合わせロバートの音域が高音に達するとともにステージに置かれた3台のスタンドライトがストロボのように炊かれ、まばゆい光線の中に引き上げられた会場は一気にヒートアップしていく。その後、曲はまた静寂へと戻りロバートの美しいピアノの音色と歌声が深海へと連れ戻してくれるのだった。

 ショウもフィナーレに近づき、ツアーを共にしたスタッフに感謝の意を述べる一面も。アンコール1曲目の「レッド・アイズ・アンド・ティアーズ」では、ロバートが途中巨大スピーカー上に上がりプレイ。ラストソングはやはりこの曲「ホワットエバー・ハップンド・トゥ・マイ・ロックンロール (パンク・ソング)」。17年前ならこの曲の出だしのロバートのリフが始まると会場はモッシュとクラウドサーフが始まっていたが、今宵は皆拳を突き上げ体全体で彼らの音を吸収し一体となり歌う同士のような大人な光景が見られた。それでも曲がロックンロールの歌詞の部分に差し掛かるとピーターのギターがよりダイナミズムになり、リアのドラミングの気迫あるビートに連れて観客も縦ノリで応戦する。ロバートは観客のもとへおりギターをかなぐり弾くと、観客は一気にバーストし問答無用のアンセム”パンク・ソング”の大合唱。曲が終わっても観客の拍手喝采がいつまでも鳴り止まなかった。

 ステージを後にするリアとピーターは観客に幾度もお礼と拍手をしながらはけて行った。ロバートは彼が着ている愛用のライダースジャケットをいきなり脱ぎ出し、最前列にいた全ツアーを観に来ていた男性へプレゼントしステージを後にした。2時間近くのステージはあっという間に感じられた。彼らのステージは物語の起承転結のようであり観ている者の感情は彼らの物語によって高揚、落胆、絶望、快感などへ変化させられたのだった。

 このように感情を鷲掴みにされるメンバーの脱退、病気、家族の不幸を乗り越えた彼らだからこそ、彼らの曲がこんなにも多くの人の心の深淵へ染み入り感情を揺さぶり感動させるのだろう。そしてただのロックンロールだけでなくサイケ、ガレージ、ブルースなども盛り込み熟練の技術とパフォーマンス。BRMCは洗練された質の高いなロックンロール・バンドへと変化を遂げたのではないだろうか。
photo & text : ERINA UEMURA

◎セットリスト:
1.Spook
2.Little Thing Gone Wild
3.King of Bones
4.Beat the Devil’s Tattoo
5.Ain’t No Easy Way
6.Question of Faith
7.Circus Bazooko
8.666 Conducer
9.Berlin
10.Conscience Killer
11.Stop
12.Echo
13.Carried From the Start
14.Mercy
15.Fault Line
16.All Rise
17.Let the Day Begin (The Call cover)
18.White Palms
19.Six Barrel Shotgun
20.Spread Your Love

Encore
21.Red Eyes and Tears
22.Ninth Configuration
23.Whatever Happened to My Rock’n’Roll (Punk Song)

◎リリース情報
アルバム 『Wrong Creatures / ロング・クリーチャーズ』
レーベル : Abstract Dragon / Hostess Entertainment
HSE-6576 2,490円(tax out)