くるり『その線は水平線』―変わらないということは、変わり続けるということ(Single Review)
くるり『その線は水平線』―変わらないということは、変わり続けるということ(Single Review)

 2018年、CDデビュー20周年を迎えるくるり。ここ20年間で目まぐるしく変化してきた日本のロックシーンにおいて、彼らは常に独自の存在感を放ってきた。エレクトロニカやヒップホップ、民族音楽やオーケストラに至るまで、様々なジャンルをポピュラー音楽に落とし込んできたくるりの作品達は、今もなおメジャー/インディー問わず、多くのアーティストに影響を与え続けている。

 そんなくるりの最新シングル『その線は水平線』が、2月21日にリリースとなった。CDシングルとしては1年7か月ぶりのリリースとなる今作は、11thシングル『How To Go』を彷彿とさせるミドルテンポなロックナンバー。曲中ではインドのオルガン・ハルモニウムや、イギリスの電動アコーディオン・ピアノルガンなど、ポップスではまず聞かないような楽器が随所に使用されている。

 そういった変化球なアプローチも、くるりの楽曲においては異質なものにならず、ごく自然に感じられるから不思議なものだ。異国の得体の知れぬ楽器が、過去の出来事や景色を思い出させ、なんともいえないノスタルジーを醸し出す――それは、世の中のありとあらゆる音楽をすべてフラットに受け入れてきたくるりだからこそなせる業なのだろう。

 また、Vo.Gt.岸田のセルフライナーノーツには、この楽曲が約8年前に制作されたもので、その後多くの人や土地を介して完成に至ったということが書かれている。一見シンプルな作りに思えるこの曲に、どこか奥行と郷愁を感じるのは、そういったエピソードを持つこの楽曲自身に、旅人のような風格を感じるからなのかもしれない。

 1998年に発売されたデビューシングル『東京』も『その線は水平線』も、大雑把に言ってしまえばギターロックだ。そう考えると、この20年間くるりは何も変わっていないとも言える。ただ、“何も変わっていない”と思えるということは、この20年間変化することをやめなかった結果だと思う。絶えず新たな表現に挑戦するだけでなく、人や街との出会いも、その時々の時代の空気も、全部作品に取り込んできたことが、くるりの音楽を現在進行形にしてきたのだ。

Text:渕井実香

◎リリース情報
『その線は水平線』
2018/2/21 RELEASE
VICL-37359 1,700円(tax out)
<収録曲>
1.その線は水平線
2.ジュビリー from 京都音楽博覧会2017
3.everybody feels the same from 京都音楽博覧会2017
4.特別な日 from 京都音楽博覧会2017
5.京都の大学生 from 京都音楽博覧会2017
6.WORLD’S END SUPERNOVA from 京都音楽博覧会2017
7.奇跡 from 京都音楽博覧会2017